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読書のきろく

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おもに読了後の感想や解釈。すてきな表現は引用します。
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記事一覧

しゃぼん玉(乃南アサ)

犯罪を繰り返す不良少年が更生する物語、と言ってしまえばそれまでだけど、ラストは何度読んでも涙が止まらない。超おすすめです。

主人公が通り魔をする場面から始まって、酷い奴だなあと共感できないまま読み進めていくと、主人公は田舎のおばあちゃんに出会う。このおばあちゃんをはじめ、椎葉村に住む人たちの方言がとても良かった。すごくいいことを言ってるけど、方言によって堅苦しさが緩和されて、心に染みていく感じ。

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A2Z(山田詠美)

山田詠美を読むのは初めてで、「僕は勉強ができない」と迷った結果、こちらを選んでみた。

共に文芸編集者である夫婦が、お互いに恋人を作ってしまう話。ストーリー的にはあんまり印象に残らなかった。26個の単語で物語が進んでいく形式が特徴的。発想は新しかったけど、そうする意味があったのかどうかは微妙…。

恋すると年齢とか関係なくなるんですね(笑)こんな自由すぎる夫婦のカタチもあるんだ〜と思った。結局はお

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こころ(夏目漱石)



人間のこころのように不安定でゆらゆら揺れ動くものを信用することは、怖い。

読み終えて、まず、感じたこと。

だからこそ、“自分”の存在が、少なくとも自分にとって信頼できるものであり続けなくちゃいけない。揺るがない自己の実現過程の中で、自信や強さを獲得するための「自分に正直」な姿勢が肝心だということは言うまでもないけれど、「自分に正直」でいるには、欲望や社会的な居場所の確立

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カンガルー日和(村上春樹)

18個のおはなしの詰まった短編集。初めての村上春樹でしたが、この独特な世界観にハマって、「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」をいっきに読み切ってしまった…。それらの感想はまた後日。

この短編は星新一っぽい要素もあって、メルヘンチックな感じ。「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に会うことについて」「あしか祭り」「スパゲティーの年に」あたりがお気に入りでした。

○4月のある晴れた朝

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少女は卒業しない(朝井リョウ)

卒業式の1日を、7人の女の子たちの視点から描いた連作短編集。人の数だけドラマがあって、感情の揺れ動きがあって、成長がある。人物関係が漸く見えてきたというときに読了してしまった…。

同世代の話だからか、青春がテーマの小説って、みずみずし過ぎて、読みやすいけれどものすごく疲れる。今時の高校生はこんなに青春してないわ…、と思いながら(わたしができてないだけかも)さらっと読み進めていたら、最後の2話はよ

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