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長期経営計画のすすめ column_長期経営計画は企業戦略でつくる



1. 4つの戦略

企業経営においては「戦略」という言葉がたびたび使われます。長期経営計画に関わる言葉としては、「経営戦略」「企業戦略」「事業戦略」「機能戦略」があり、体系的には下記のようになります。

経営戦略の体系

企業戦略とは「企業としての未来の方向性を決定し、その実現に向けて経営資源を配分すること」です。つまり「将来、こんな社会を実現したい」「社会の中でわが社はこうありたい」という思いが未来の方向性を決定し、それを実現できている時にわが社の事業構成はどのようになっているかを描き、それぞれの事業に対して、資金や人材などの経営資源を配分する計画をたて、実行することです。

事業戦略とは「特定の事業において、顧客ニーズを満たし、競争優位を築き、利益を上げること」です。つまり事業を取り巻く環境を分析し、企業戦略によって配分された経営資源を活用し、マーケティングを行い、競合事業との競争に勝ちながら利益を上げることです。

機能戦略とは「企業戦略や事業戦略の推進を支援すること」です。つまり、それぞれの戦略を推進する上で必要となる機能、つまり、営業 / マーケティング /生産 / 調達・購買 / 物流 / 研究開発 / 人事 / 財務 / 情報システムなどの戦略を立て、実行することです。これらの機能は全社統一で戦略を立てるケースと、事業戦略として組み込まれるケースがあります。企業や業種特性により異なりますが、研究開発 / 人事 / 財務 / 情報システムの機能は全社統一、営業 / マーケティング /生産 / 調達・購買 / 物流の機能は事業戦略として組み込まれることが多いです。

そして、企業戦略・事業戦略・機能戦略の3つをまとめて経営戦略と表現します。それぞれの戦略がバラバラにならないように、企業戦略を各事業戦略に展開し、それぞれの戦略を支援する形で機能戦略を連携させていく必要があります。


2. 長期経営計画は企業戦略でつくる

企業戦略策定の要素となっていく主な項目はこちらになります。企業戦略の各要素はある程度、長い期間をかけて計画し取り組むテーマになります。

1. ビジョン(実現したい未来)・ミッション
2.ビジョンを叶える事業構成
3. 事業構成を実現する成長戦略
4. 新規事業・M&A戦略
5.業績・投資計画
6. 長期要員計画
7. ロードマップ・KPI

また、事業戦略の主な項目はこちらになります。既存事業の場合は、これまで事業運営してきた経緯があり、そこから企業戦略を踏まえて、更に成長するための計画を立てることになります。よって3年間程度の計画を立てて取り組むことが有効だと思います。

1. 事業ミッション
2. 事業ドメイン
3. 目指す製品・顧客ポートフォリオ
4. ポートフォリオを実現する成長戦略
5. 損益・投資計画
6. 短期要員計画
7. ロードマップ・KPI

よって、企業戦略は10年程度の先を見据えて長期経営計画を立て、事業戦略は3年間程度の中期経営計画を立てることをおすすめします。また機能戦略においては、主に全社統一で取り組むことが多い研究開発 / 人事 / 財務 / 情報システムの機能は企業戦略と同じく長期経営計画として策定することをおすすめします。


3. 重要度が増す長期要員計画

長期経営計画の要素の中で、長期要員計画の重要性が増しています。生産年齢人口の減少の影響がいよいよ現実味を帯び、有効求人倍率は高止まりし、人材の流動化が促進しています。さらに長期間のデフレからインフレ局面に移行しつつある中で、年収を上げるための転職は一般化していくでしょう。ビジョンを描き、それを叶えるそれぞれの事業を成長させていきたいにも関わらず、推進する人材が確保できずに企業全体が停滞していくリスクがどんどん高まっています。

企業全体として「一人当たり限界利益額」を増加させながら、「一人当たり人件費」を段階的に、着実に増加させていく必要があります。そのためには、5年後、10年後に従業員は何人必要になるのか、その要員を確保するために毎年、新入社員や中途社員を何人採用するのか、離職率や休職率の基準をどの程度で設定するのか、管理職の割合や専門職の確保や育成をどうするのかなど、これまで大手企業を含め、あまり精緻に計画されてこなかった要員計画を、長期計画として策定し実行していくことの重要性が高まっています。


今回は以上となります。次回は「Ⅱ 事業戦略_ 現状分析 1. 過去の事業業績を分析する」について書くつもりです。


【目次(案)】
Ⅰ 方針
1. 目的を決める
2. 期間・更新を決める
3. アウトラインを決める
4. スケジュールを決める
5. 体制を決める 
Column 事例を調査する

Ⅱ 企業戦略 _ 現状分析
1. MVVを振り返る 
2. 事業構成を分析する
3. コア能力を再認識する
4. メガトレンドを調査する
5. 成長市場を調査する
6. 企業会計を分析する
7. 現状分析のまとめ
Column 長期経営計画は企業戦略でつくる ←今回

Ⅲ 事業戦略_ 現状分析
1. 事業業績を分析する ←次回
2. 製品ポートフォリオを分析する
3. 外部環境を分析する
4. 現状分析のまとめ

Ⅳ 企業戦略 _ 一次長期計画
1. 長期ビジョンを決める
2. 企業ドメインを決める
3. 目指す事業ポートフォリオを決める
4. 成長戦略を決める
5. 新規事業・M&A戦略を決める
6. 一次業績計画を策定する
7. 一次投資枠を設定する
8. 全社一次要員計画を策定する
9. TOPマネジメントを決定する
10. 企業戦略を事業戦略に展開する
11. 一次長期計画のまとめ
Column 事業承継に向けた長期経営計画

Ⅴ 事業戦略 _ 中期計画
1. 企業戦略を理解する
2. ミッション・バリューの見直しを検討する
3. 事業ドメインを決める
4. 目指す製品ポートフォリオを決める
5. 成長戦略を決める
6. 売上計画を精緻化する
7. 要員計画を精緻化する
8. 投資計画を精緻化する
9. 損益計画を精緻化する
10. ロードマップ・KPIを決める
11. 事業戦略を企業戦略へフィードバックする
12. 中期計画のまとめ
Column 経営計画の先行研究

Ⅵ 企業戦略 _ 長期経営計画
1. 売上計画を確定させる
2. 投資計画を確定させる
3. 要員計画を確定させる
4. 採用計画を確定させる
5. 組織計画を確定させる
6. 人材育成計画を決める
7. 新規事業・M&A計画を決める
8. リスク管理計画を決める
9. IT投資計画を決める
10. 財務三表計画を決める
11. ロードマップ・KPIを決める
12. モニタリング計画を決める
13. コミュニケーションを開始する
14. 長期経営計画のまとめ
Column 社員がワクワクする長期経営計画

最後に私の著書と副業で経営している会社の紹介をさせてください。


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