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長期経営計画のすすめ Ⅲ.事業戦略_現状分析 4. 現状分析のまとめ


「Ⅲ.事業戦略_現状分析」では3つのテーマについて記述してきました。

1. 事業業績を分析する
2. 内部環境を分析する
3.外部環境を分析する

事業戦略の現状分析を実務的に進めるとき、私はこの順番が一番しっくりきます。既存事業で関係者の関心が高い業績(損益)分析からスタートし、業績に連動する内部環境分析を進め、さらに連動する外部環境分析へと進めるのがスムーズだと思います。業績分析は内部環境分析の一つではありますが、あえて先に切り出して記述しました。


【STEP1】
複数ある既存事業を収益性の観点から3つのパターンに分け、方向性を見定めながら、注力する分析観点を決めていきます。

<パターンA>
現状  :貢献利益で黒字であり、利益額も利益率も高い事業
方向性 :注力(さらに伸ばす)検討
分析観点:事業固定費における投資科目を優先的に分析
<パターンB>
現状  :貢献利益の利益額や利益率が低い、あるいは貢献利益での赤字事業
方向性 :改善(テコ入れ)検討
分析観点:過去3年間の月次損益での経年変化から売上・変動費・事業固定費を細かく分析
<パターンC>
現状  :限界利益での赤字事業
方向性 :撤退検討
分析観点:過去3年間の月次損益での経年変化から売上・変動費の抜本的な改善可能性を分析


次に労働生産性の観点でも、現状を基準に3つのパターンに分け、方向性を決めていきます。

<パターンA>
現状:「限界利益額/人」と「人件費/人」は増加しながら「労働分配率」横ばい
方向性:事業は順調に成長しており、この現状を維持すること
<パターンB>
現状:「限界利益額/人」が減少、「人件費/人」は増加により「労働分配率」上昇
方向性:限界利益額の上昇と同時に、業務効率化による人員を減少させること
<パターンC>
現状:「限界利益額/人」と「人件費/人」も減少しながら「労働分配率」横ばい
方向性:限界利益額の上昇と同時に、全社視点での配置転換


一般的には収益性の良い事業は労働生産性も高く、収益性の低い事業は労働生産性も低い場合が多いです。1つの事業において2つの観点から分析を進めていきます。

(ここまでの詳細を、『1. 事業業績を分析する』で記述しました。)


【STEP2】
業績が順調な事業も、そうではない事業も、なぜそのような結果になったのか、顧客分析と製品・サービス分析にてその理由を探っていきます。

顧客分析では、主に下記の分析を進めます。
①売上全体の80%を占める顧客群の分析
②既存顧客と新規顧客に関する分析
③その他、収益性やグルーピングでの分析方法

製品分析では、主に下記の分析を進めます。
①売上全体の80%を占める製品群の分析
②既存製品と新規製品に関する分析
③その他、収益性や製品ライフサイクル分析

主要顧客ごとに製品分析を行うことで、より深く原因を解明することが可能になります。

(ここまでの詳細を、『2. 内部環境を分析する』で記述しました。)


【STEP3】
ここまでは売上を顧客と製品に分解して定量的に分析してきました。この後は、顧客が自社の製品を購入してくれた理由は?(顧客ニーズ)、その顧客はたくさんいるのか?(市場規模)、その顧客数や購入金額は今後伸びていくのか?(市場成長率)、顧客が比較する他社の動向は?(競合分析)を行なっていきます。

(ここまでの詳細を、『3.外部環境を分析する』で記述しました。)


自社にある各事業ごとに【STEP1】から【STEP3】の分析を進めることで、各事業の現状が明らかになります。事業が複数あれば、比較しながら分析を進めることが可能になります。

事業戦略が中心の短期的な経営計画の策定の場合は、この後はそれぞれの事業における成長や改善の方向性を示し、戦略やアクションプランを立てていくことになります。

しかしながら、今回のテーマである長期経営計画においては、企業戦略における長期計画を踏まえた上で、事業戦略を立てていくことになります。長期経営計画次第では成長している事業にも関わらず経営資源の分配が小さくなる、もしくは事業売却する判断になる可能性もあります。この辺りの詳細については、これからの『Ⅳ 企業戦略 _ 一次長期計画』にて記述していきます。


今回は以上となります。次回は「Column 経営計画の先行研究」について書くつもりです。


【目次(案)】
Ⅰ 方針
1. 目的を決める
2. 期間・更新を決める
3. アウトラインを決める
4. スケジュールを決める
5. 体制を決める 
Column 事例を調査する

Ⅱ 企業戦略 _ 現状分析
1. MVVを振り返る 
2. 事業構成を分析する
3. コア能力を再認識する
4. メガトレンドを調査する
5. 成長市場を調査する
6. 企業会計を分析する
7. 現状分析のまとめ
Column 長期経営計画は企業戦略でつくる

Ⅲ 事業戦略_ 現状分析
1. 事業業績を分析する
2. 内部環境を分析する
3. 外部環境を分析する
4. 現状分析のまとめ          ←今回
Column 経営計画の先行研究   ←次回


Ⅳ 企業戦略 _ 一次長期計画
1. 長期ビジョンを決める
2. 企業ドメインを決める
3. 目指す事業ポートフォリオを決める
4. 成長戦略を決める
5. 新規事業・M&A戦略を決める
6. 一次業績計画を策定する
7. 一次投資枠を設定する
8. 全社一次要員計画を策定する
9. TOPマネジメントを決定する
10. 企業戦略を事業戦略に展開する
11. 一次長期計画のまとめ
Column 事業承継に向けた長期経営計画

Ⅴ 事業戦略 _ 中期計画
1. 企業戦略を理解する
2. ミッション・バリューの見直しを検討する
3. 事業ドメインを決める
4. 目指す製品ポートフォリオを決める
5. 成長戦略を決める
6. 売上計画を精緻化する
7. 要員計画を精緻化する
8. 投資計画を精緻化する
9. 損益計画を精緻化する
10. ロードマップ・KPIを決める
11. 事業戦略を企業戦略へフィードバックする
12. 中期計画のまとめ

Ⅵ 企業戦略 _ 長期経営計画
1. 売上計画を確定させる
2. 投資計画を確定させる
3. 要員計画を確定させる
4. 採用計画を確定させる
5. 組織計画を確定させる
6. 人材育成計画を決める
7. 新規事業・M&A計画を決める
8. リスク管理計画を決める
9. IT投資計画を決める
10. 財務三表計画を決める
11. ロードマップ・KPIを決める
12. モニタリング計画を決める
13. コミュニケーションを開始する
14. 長期経営計画のまとめ
Column 社員がワクワクする長期経営計画

最後に私の著書と副業で経営している会社の紹介をさせてください。


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