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長期経営計画のすすめ Ⅱ.企業戦略_1.MVVを振り返る



①どんなタイトルを使っているのか?

長期経営計画の策定にあたり方針を定めた後は、企業戦略パートに入っていきます。私は『長期経営計画とは、わが社が長期的に実現したい未来、およびその時の事業構成を明らかにし、それを実現するための計画である』と定義しています。ここで記載している「実現したい未来」をミッション(Mission)やビジョン(Vision)にて表現していきます。

皆さんが所属する企業では、MVVと略される、ミッション、ビジョン、バリュー(Value)として表現されている言葉がありますか? MVV以外でもパーパス(purpose)や経営理念、経営方針や行動指針など、各企業で様々なタイトルが使われています。

これらのタイトルを使って表現することの目的は、企業の方向性や基準を示し、それに社員が共感し意識した行動を取ることや、その他のステークホルダーの協力を仰ぎ、企業を推進していくことです。

私はどんなタイトルを用いても構わないと思っていますが、そのタイトルの定義とタイトル間の構造を明確にした上で、それを社員をはじめとするステークホルダーに伝えることが重要だと思っています。


②どのパターンを採用しているか?

多くの企業が様々なタイトルと構造を選択しておりますが、私は大きく3つに分類されると思っており、簡潔にまとめました。

タイトルと定義と構造

Aパターンは3つの中では最もシンプルです。ビジョンを「社会に対して実現したい未来」と定義し、社会にある不満や問題を解決し、このように社会を創り変えたいという内容になります。ミッションはそのビジョンを実現するための方法であり、ロードマップになります。Aパターンを選択している企業の特徴は、直接消費者に製品やサービスを届けていることであり、だからこそ社会を変えられるという強い思いが言葉に現れます。

BパターンはAパターンと比較し、まずビジョンの定義が異なり「自社のあるべき姿」としています。こんな社会を創りたいと表現するAと、自社がこうありたいと表現するBになります。またミッションの定義もAと少し異なり、「社会に対する自社の使命感」を表現します。Bパターンを選択している企業の特徴は、明確な自社の強みや強みとなる技術を保有していることです。それを用いることを、社会に対する使命とすれば、わかりすく表現できます。

Cは3つの中では最も新しいパターンです。パーパスというタイトルを用いて、自社の存在意義を表現します。Bパターンのミッションに意味合いは近しいです。そのパーパスを踏まえて、ビジョンを「社会に対して実現したい未来」と定義し、このように社会に作り変えたいと表現します。ビジョン・ミッションの構造はAパターンと同様です。

そしてバリューは概ね、3パターン共に価値観を表現します。


③『実現したい未来』が描かれているか?

企業戦略パートの最初として、現在の皆さんの会社で「実現したい未来」が描かれているかを確認してください。先ほどの3つのパターンのうち、AやCならビジョンで、Bならミッションやビジョンの中で表現されているでしょうか? 他のタイトルの中に社会の課題解決や社会を豊かにする表現があるかもしれません。

その表現が確認できれば、3つの視点から評価してみてください。

一つ目は、それは長期間(4~10年程度)かけて取り組むべき内容であることです。すでに課題解決が進んでおり短期間で解決しそうなテーマやそもそも課題解決に長期間を要さないテーマであれば、長期経営計画としては見直した方がいいでしょう。

二つ目は、社会への影響が大きくビジネスとして成り立つことです。どんな内容であれ、困っている人を助けることや社会を豊かにすることには意義があります。しかしながら、対象となる人や地域が少ないと課題解決の対価として受け取るお金も少なくなる傾向があり、利益を生み出して社員に還元することができなくなります。

三つ目は、社員がそれに取り組みたいという意欲が沸く内容であることです。経営者や一部の役員だけの偏った思いであったり、課題を解決したとしても社会全体がそれほど良くならないような内容です。ただ一方で、その内容に共感する社員だけが集まればいい、その方が結束力が高まる、という考え方もあります。

次に、社会の課題解決や社会を豊かにする表現が無い会社の場合です。「無いならこの機会に創りましょう!」ということで、候補が出てくる会社はそのまま進めてください。しかし中にはイメージが沸かない、候補が出てこないという会社があります。例えば、原材料や部品を製造しているなど、完成品メーカーに納入しており、直接エンドユーザーに接点を持っていないような企業です。そうなると自社が直接、消費者つまり社会に働きかけて、変化を起こすことが難しいからです。そのような企業には、ぜひ納入している完成品メーカーの経営者の立場で考えてみてください。その上で、その課題解決や社会を豊かにする内容に対して、自社の立場から仕掛けていくアプローチができると思います。

方針を決め、長期経営計画の第一歩目となるMVVの振り返りは、とても重要な取り組みです。「実現したい未来」として表現されている内容や、表現されてない理由について深い検討や議論することをお勧めします。

今回は以上となります。次回は「2. 事業ポートフォリオを可視化する」について書くつもりです。


【目次(案)】
Ⅰ 方針
1. 目的を決める
2. 期間・更新を決める
3. アウトラインを決める
4. スケジュールを決める
5. 体制を決める 
Column 事例を調査する

Ⅱ 企業戦略
1. MVVを振り返る         ←今回
2. 事業ポートフォリオを可視化する ←次回

3.経営資源を可視化する
4. 全社業績を分析する
5. メガトレンドを調査する
6. 今後のビジョン・ミッション・バリューを決める
7. 企業ドメインを決める
8. 目指す事業ポートフォリオを決める
9. 成長戦略を決める
10. 新規事業・M&A戦略を決める
11. 一次業績計画を策定する
12. 一次投資枠を設定する
13. 全社一次要員計画を策定する
14. TOPマネジメントを決定する
15. 企業戦略を事業戦略に展開する
Column 事業承継に向けた長期経営計画

Ⅲ 事業戦略
1. 過去の事業業績を分析する
2. 現在の製品ポートフォリオを可視化する
3. 外部環境を分析する
4. 企業戦略を理解する
5. ミッション・バリューの見直しを検討する
6. 事業ドメインを決める
7. 目指す製品ポートフォリオを決める
8. 成長戦略を決める
9. 売上計画を精緻化する
10. 要員計画を精緻化する
11. 投資計画を精緻化する
12. 損益計画を精緻化する
13. ロードマップ・KPIを決める
14. 事業戦略を企業戦略へフィードバックする
Column 経営計画の先行研究

Ⅳ 計画完成
1. 売上計画を確定させる
2. 投資計画を確定させる
3. 要員計画を確定させる
4. 採用計画を確定させる
5. 組織計画を確定させる
6. 人材育成計画を決める
7. 新規事業・M&A計画を決める
8. リスク管理計画を決める
9. IT投資計画を決める
10. 財務三表計画を決める
11. ロードマップ・KPIを決める
12. モニタリング計画を決める
13. コミュニケーションを開始する
Column 社員がワクワクする長期経営計画

最後に私の著書と副業で経営している会社の紹介をさせてください。


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