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長期経営計画のすすめ Ⅰ.方針_5.体制を決める



①どんな体制をつくるのか?

長期経営計画の策定は企業規模や策定経験等によりますが、おおよそ9ヶ月間に渡る長期のプロジェクトになると「 Ⅰ.方針_4.スケジュールを決める 」にて記述しました。

よってテーマに応じて、必要なタイミングで適宜メンバーを参画させるのではなく、取り組みのはじめに方針として体制を構築しておくことをお勧めします。

企業特性に左右されるのですが4つの事業がある会社の場合における体制図の例を紹介します。

プロジェクト体制(例)


「 Ⅰ.方針_3.アウトラインを決める 」で紹介しました長期経営計画策定のフレームワークに連動させて体制を構築します。

長期経営計画策定フレームワーク


企業戦略チームは社長を中心に各役員で構成されます。ここで役割として難しいのは事業部門を管掌している役員です。私は『長期経営計画とは、わが社が長期的に実現したい未来、およびその時の事業構成を明らかにし、それを実現するための計画である』と定義しています。よって実現したい未来に向かって事業構成を変化することが求められています。

事業部門を管掌している役員は「自らが管掌している事業をどう成長させるか」という事業戦略の観点は企業戦略チームの中では考えずに、企業戦略の観点で参加する必要があります。時には自らが管掌している事業を撤退や売却する判断をする可能性があります。

事業戦略チームは事業部門管掌役員を中心に各事業部門の責任者で構成されます。事業部門を管掌している役員は、ここでは自らが管掌している事業をどう成長させるかに専念します。また管理部門も管掌役員を中心に計画を策定していきます。管理部門、特に経理財務部門や人事部門には事業部門と連携し計画を立てる必要があります。


②プロジェクトの要となるポジションは?

長期経営計画策定のフレームワークには様々な項目が記載されていますが、全ての項目が単体で成り立つものではなく、連動させながら計画を策定していきます。そこを強く意識しなければ、各事業部や部門の計画は達成しているが、企業として実現したい未来に近づいていないことになります。

ストーリーのある長期経営計画を策定するためには、全ての情報を把握・管理し、企業戦略と事業戦略という縦の連携と、各部門を横断する横の連携を取る " 要 " となるポジションが必要となり、ここを経営戦略(企画)部門が担います。

社長をはじめとする自社のハイレイヤーの方々と円滑なコミュニケーションを取りながら、フレームワークに沿ってスケジュール通りプロジェクト管理するのは至難の業です。私自身も経験してきましたが、言われたことだけに対応するようになったり、軌道を外れているのに修正しなかったりと、受け身になればなるほど、自社の未来を描いているプロジェクトなのに全く楽しくなく、ストレスだけが溜まっていき、結果、とりあえず作った感じの計画が完成してしまいます。

全体フレームやスケジュールを常に意識し、先手先手でアクションを起こし、議論を活発化させ、プロジェクトをリードしていくことが重要であり、そうすることでやりがいも高まり、納得できる長期経営計画が出来上がります。


③どのメンバーを巻き込むのか?

長期経営計画の策定は企業全体を把握し、将来に向けて自社の進む道の決定に関与できる素晴らしい機会です。よってプロジェクト体制図(例)に記載されているポジション以外のメンバーでも、意図的に参画させることは良いと思います。

まず企業戦略チームには「次、もしくは次の次の社長候補」を参画させることは良い方法です。ちょうど先日、野村総合研究所の社長交代が発表されましたが、日本経済新聞の記事の中で、新社長は「23年度から25年度までの中期経営計画や2030年度までの長期経営ビジョン「NRI Group Vision 2030」の策定にも携わった」と書かれていました。


オーナー企業で同族経営を進める場合、若くても社長の親族を参画させることも良い方法
と思います。


次に事業戦略チームには、次世代の役員や部門長候補を参画させることは良い方法です。1〜3名を目安に、事業部長や部門長と一緒に事業戦略を策定することは必ず能力向上につながります。ただし注意したいのは、目的は良い事業戦略を策定することであって人材育成は副次的な要素です。「若手に作らせよう!」と計画策定を進め、責任者としての意志の入ってない計画を作ることは本末転倒です。


私はプロジェクトが始まる最初の段階で、方針として体制を明確に構築することが、より良い長期経営計画を策定する重要な要素の一つだと考えています。

今回は以上となります。次回はcolumnとして、他社の長期経営計画事例を参考にする方法について書くつもりです。


【目次(案)】
Ⅰ 方針
1. 目的を決める
2. 期間・更新を決める
3. アウトラインを決める 
4. スケジュールを決める
5. 体制を決める          ←今回 
Column  事例を調査する ←次回


Ⅱ 企業戦略
1. 現状のビジョン・ミッション・バリューを確認する
2. 過去の全社業績を分析する
3. 現在の事業ポートフォリオを可視化する
4. 経営資源を可視化する
5. メガトレンドを調査する
6. 今後のビジョン・ミッション・バリューを決める
7. 企業ドメインを決める
8. 目指す事業ポートフォリオを決める
9. 成長戦略を決める
10. 新規事業・M&A戦略を決める
11. 一次業績計画を策定する
12. 一次投資枠を設定する
13. 全社一次要員計画を策定する
14. TOPマネジメントを決定する
15. 企業戦略を事業戦略に展開する
Column  事業承継に向けた長期経営計画

Ⅲ 事業戦略
1. 過去の事業業績を分析する
2. 現在の製品ポートフォリオを可視化する
3. 外部環境を分析する
4. 企業戦略を理解する
5. ミッション・バリューの見直しを検討する
6. 事業ドメインを決める
7. 目指す製品ポートフォリオを決める
8. 成長戦略を決める
9. 売上計画を精緻化する
10. 要員計画を精緻化する
11. 投資計画を精緻化する
12. 損益計画を精緻化する
13. ロードマップ・KPIを決める
14. 事業戦略を企業戦略へフィードバックする
Column  経営計画の先行研究

Ⅳ 計画完成
1. 売上計画を確定させる
2. 投資計画を確定させる
3. 要員計画を確定させる
4. 採用計画を確定させる
5. 組織計画を確定させる
6. 人材育成計画を決める
7. 新規事業・M&A計画を決める
8. リスク管理計画を決める
9. IT投資計画を決める
10. 財務三表計画を決める
11. ロードマップ・KPIを決める
12. モニタリング計画を決める
13. コミュニケーションを開始する
Column  社員がワクワクする長期経営計画

最後に私の著書と副業で経営している会社の紹介をさせてください。



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