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雑記やエッセイ

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日々暮らしの中で感じたことを書いています。完全に個人的な日記だったりメモだったり。個人の感想に近いです。
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記事一覧

日記 愛してる、レイモンド・カーヴァー

日記 愛してる、レイモンド・カーヴァー

時に「これは自分のための物語だ」と思える小説に出会うことがある。
学生時代には村上春樹、時を経てポールオースターやレイモンドチャンドラー、そしてカーヴァーが私にとってその1人だと言える。

共同起業するも仲違いして人生もビジネスも泥沼になったちょうど5年前の自分をどん底からすくい上げたのもカーヴァーの短編小説だったと記憶している。

そして今またこの作家の文章に私は夢中になっているのだ。

なぜこ

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日記: 日々と娘と映画と

日記: 日々と娘と映画と

桜がヒラヒラと散る様をみたら、2000年代の岩井俊二映画を思い出した。

松たか子主演で北海道から上京した大学生一年生の瑞々しい姿を捉えた『四月物語』。制服似合ってないね、などといいながら桜並木を駆けながら高校に進学する2人の可笑しくも美しい映画『花とアリス』。どちらも何度観たか数えきれない程に偏愛している作品である。

昨日、初めて生後5ヶ月になった娘を連れて地域の子育て支援センターという場所に

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或る春の日の日記

或る春の日の日記

春の香りが目の前を通り過ぎた時、西池袋のマンションのベランダで1人缶ビールを飲んだ記憶が蘇った。今から約20年も前のことで、私が大学生だった頃のことだ。

学生の頃は新学期が好きだった。

たとえその前の年をダラダラと過ごして成績も恋愛もパッとしない一年を過ごしたとしても4月にはリセットされる気がしていた。

大学生で上京し最初に住んだのは池袋だった。ただ大学が近かったから選んだだけだった。静かで

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新しいテーブル と向田邦子の名エッセイ

新しいテーブル と向田邦子の名エッセイ

夫と結婚して良かったと思うことの一つに、ものを選ぶ価値基準がほとんどにおいて似ているというのがある。好きなものが似通っていると言うよりも、よほど気に入ったものでない限り不便でも買わない、買う時には金額は気にせず20年先も使いたいきちんとしたものを選択するところだ。つい最近結婚5年目にしてようやく納得のいくダイニングテーブルを見つけて注文をした。今は建築士でもある夫が大掛かりなDIYで仕上げた無垢材

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永福町で過ごした日々の記憶

永福町で過ごした日々の記憶

今から約10年前、東急井の頭線の永福町駅から徒歩数分の場所で一人暮らしをしていたことがある。

渋谷にある広告代理店に勤務していた二十代後半の頃のことだ。その前は池袋に住んでいたが、通勤の利便性となんとなく縁起のいい名前の駅名に惹かれてその地を引っ越し先に選んだ。

駅前の商店街を抜けた先には「東京のへそ」という別名を持つらしい大宮八幡宮、その奥には和田堀公園があり時々健康のためにランニングをした

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10/18の日記 失って手に入るもの

10/18の日記 失って手に入るもの

今日は朝から野暮用で車で1人病院に行く。本当は写真の成城石井のピザトーストが食べたいのだけれど、最近はグラノーラにヨーグルトをかけるのにはまっていて(手軽だから)今日もそれを食べてから家を出る。
麻酔科医に3年前の手術のときはどうでした?と聞かれて初めて「そうかそんなこともあったっけ」と気がついた。当時も身内にしかそのことは言っていなかったけれど、コロナ禍に突入したばかりの2020年の冬に婦人科系

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秋の晴れの日に、1年前の日記を読む

秋の晴れの日に、1年前の日記を読む

久しぶりに一年前の日記を読み返してみると、久しぶりの社会復帰(その頃しばらく仕事をすることから離れていたのだ)に期待と不安を感じている自分の言葉があってとても驚いた。

仕事はうまく行くのだろうかだとか新しい環境で周囲に馴染めるかだとかこれまでのように映画鑑賞や読書ができなくなってまた自分を見失うのではだとかそんなようなことである。

一年が経ち、今の私が当時の自分に言葉をかけるのならば、今はあの

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日々と少女映画 | オン・ザ・ロックとバービーと

日々と少女映画 | オン・ザ・ロックとバービーと

時々訪れる実家の父親の不用意な発言に苛立ちと悲しさを感じることが増えている事に最近になって気がついた。父の明るく陽気で優しくて面白い側面が今の私には見えなくなってしまい、反対に亭主関白で家父長制の権化的な父にもやもやとすることが増えてそのことに悲しさを感じてもいた。

でも、最近になりその事に少しだけ自分の中で良い方向に折り合いがついてきたようなきがしているので書いておこうと思う。

思えば賢明な

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春の涙とホットコーヒー

春の涙とホットコーヒー

コーヒーの香りは穏やかで、外の空気は甘いのに、私の気分は苦かった。

適応能力だけはあった若き頃の私はそれなりに反抗心を燃やしながらも、この窮屈な社会には溶け込む事ができた。
それでも30歳を迎える頃にはあらゆることに疲れ切ってしまっていた。知らないうちに自分自身も見失ってしまい体調を壊してしまったこともある。

そんなことだって私にとってはもう遠い昔のことである。過去の自分はいつも外国の旅で捨て

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『ボーンズ・アンド・オール』最も気高い究極の愛の話

『ボーンズ・アンド・オール』最も気高い究極の愛の話

観終わって2日以上経っているのに未だにこの2人を思い出す。きっと私が何も手につかなくなっているのは紛れもなくこのせいだ。

観たのは間違いなく“カニバリズム”を題材にしているR18の作品であるのに、ここまで心を動かされるとはどういうわけなのだろう。

「もしかしたら自分だけなのではないか」

思春期の頃は自分自身の気持ちや身体の変化に戸惑い、誰にも相談することなくうまくやり過ごしていた。生まれて初

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『ノーマル・ピープル』 サリー・ルーニー著 私の孤独を埋める唯一の存在

『ノーマル・ピープル』 サリー・ルーニー著 私の孤独を埋める唯一の存在

早く読み終わりたくてページを捲る手が止まらなくなる小説と、ずっと読み終わりたくなくて何度も同じページを咀嚼してしまうタイプの小説があると思う。どちらも傑作には違いないだろうが、サリールーニーの「ノーマル・ピープル」は、間違いなく後者だ。

この物語に、できることならばずっと浸っていたい。明日また最初から読み直してもう一度自分の感覚を確認したいと思うのだ。

私には10代の頃からの腐れ縁的な男性がい

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日々と恋愛映画

日々と恋愛映画

変わる時は一瞬だ。後で振り返ればなかなか大変だったとか長かったとか思うのだろうが、その瞬間に見える景色はあっという間に変わっていく。

新しい場所で働きはじめて10日が経った。
数ヶ月ぐらいが経っているような気分だけれど、間違いなくまだ10日だ。人間の時間の感覚なんて、全く当てにならないものだ。

10月の退職の当日、その日出勤ではなかった人達まで私のために会社に来てくれていた。

ある人からは小

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よく晴れた秋の日の朝に、アイスコーヒーと共に

よく晴れた秋の日の朝に、アイスコーヒーと共に

長かった夏が過ぎていつのまにか秋に突入していた。これを書いている今は秋晴れの10月の土曜日の朝の9時。

とてもよく晴れていて、窓からは太陽が燦々と部屋に降り注いでくるし、空気はさほど冷たくもなく半袖で過ごせそうな陽気だ。

いい加減温かいニットなども着たい気分であるが、そうなったらなったで夏が恋しくなりそうだ。

だって、私は大好きなアイスコーヒーが1番美味しい夏が、季節の中で1番好きだから。今

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9/29の日記

9/29の日記

誰かが別のステージに行こうとしていたり、転居などで状況が変わったりするときなどに、真の意味で心から祝福できる人が自分にはどれぐらいいるだろうかとふと思った。もしそれができなくなっていたら自分はきっと余裕がないのかもしれないし、もしかしたらその相手のことを大して考えていなかったのかもしれない。あるいは、ただほとんど多くの人間というのは、そんなふうに思ってしまうものだ、というだけなのかもしれない。

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