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『いのちの車窓から』を読んで、星野源のファンになったこと 【読書感想文】

 星野源という人を、私が初めて知ったのは小学生の頃だった。NHKの『LIFE!〜人生に捧げるコント〜』という番組で、初めて彼を見た。

 初めて彼の曲を聴いたのは、「SUN」がヒットしたときだった。おそらく中高生の頃だ。

 そして今年、大学生になって、初めて彼の書く文章を読んだ。今年の6月のことだった。星野源と初対面するのは、これで3回目のような気がしている。

 彼の書く文章は、面白くて、読みやすくて、まるでラジオを聴いているような感覚があった。内容がするすると滑らかに頭に入ってきた。
 一気に読むというよりも、毎日2〜3個ずつ読み進めていた。それでもあっという間に読み終わってしまった。

 まるで源さんが「この前こんなことがあったんだけどね…」と、面白かった話や何気ない日常の出来事を話してくれるみたいな気がして、楽しかった。
 ニヤニヤしながら話す源さんが思い浮かんできて、読んでいるこちらもニヤニヤしながら読んでしまった。ふわふわっとしたニコニコした表情の中に、「ニヤニヤ感」が滲み出てくる。そんな独特な星野源の笑顔がめちゃくちゃ好きで、癒されるのだ。


 エッセイを読むまで、私は星野源さんは「マルチに活躍している多才な人」という、割と世間一般的なイメージに近い印象を抱いていた。しかし、エッセイを読んで、初めに思ったのは「この人はなんて不思議な人なんだろう」ということだった。

 その「不思議さ」は、次第に「気づいたらクセになっちゃう」に変わり、最後には「なんかすっごい好き」になっている。
 気づいたら、星野源という人のファンになっていた。そこにいたのは、作家でも、音楽家でもなかった。ただそこに、星野源という人間が存在しているだけだった。



 源さんの楽曲は割と「ポップな明るさ」を持つ楽曲が多い印象である。源さんの作る、踊り出したくなったり、歌いたくなったりするような曲が好きだ。聴くだけで、今日が明るくなる。

 でもその明るさが心地よいのは、きっと彼が光ばかりでなく、影の方も知っているからではないだろうか。光だけじゃなくて、影も併せ持つ明るさ。だからこそ、その光はまぶしくなくて、嫌に感じないのかもしれない。優しくて、あたたかくて、心地の良い光のような音楽を作る人なんだなと思う。


 暗さを知っているけれど、ただの愚痴じゃなくて、削ぎ落とされて、シンプルに並ぶ歌詞の奥に、彼の日常がある。そんな彼の生きている世界を、エッセイを読みんながら、どこか覗き見しているような感覚になった。

 面白くて、愉快な人で、でも繊細さとか孤独感を持っている。そういう影の部分に共感したり、そこから出てくる言葉に、心が軽くなったりした。


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