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小さなおしゃべり

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思ったことを、ぽろぽろとおしゃべりします。見るラジオのようなイメージです。
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198 小さな空とたい焼き

198 小さな空とたい焼き

新幹線のひとり分の窓から、小さな空を見ていた。

雨が上がったばかりで空は穏やかな青に戻りつつあったが、まだたくさんの雲が浮かんでいる。

それらの景色は、家や川や木と一緒にあっという間に流れていく。
田んぼや山は、少しだけゆっくり流れていく。
一つひとつの場所をすぐに通り過ぎてしまうので人を見つけられず、やや寂しい。

東京に行くのは約3年ぶりだ。
普段お世話になっている会社に挨拶へ行く。

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191 朝の小さな楽しみ

191 朝の小さな楽しみ

私の父は早起きが得意で、家族のだれも起きていないような時間に起きては絵を描いたり、本を読んだりしていた。

それに気づいたのは小学生くらいのころで、まだ外がそれほど明るくない時間にデスクライトだけつけて机に向かう父の背中は今でも忘れられない。

「すっごく早起きさんなのね」
朝食の席で父に尋ねたことがある。
「朝はゴールデンタイムだよ。寝ているなんてもったいないじゃないか」
父が描く絵は飛行機やヨ

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181 足もとを見れば

181 足もとを見れば

01 草
新しい一年が始まることを「年が明ける」というのは、まぶしい希望を感じる美しい表現だと思う。
そう思いながらも、元旦の朝に目覚めたのは通常より少々遅い時間で、すっかり明けきった空が街中をすがすがしく見守っていた。

新しく購入したスニーカーを履いて初詣に行く。
初めて足を入れたので少しかたいけれど、クッション性があり軽く歩ける。
元旦に新しいものをおろすのは想像以上にうれしくて、足もとばか

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180 静かで小さいけれど幸せな時間

180 静かで小さいけれど幸せな時間

はっとするような緑色の葉の下で暑さをやわらげて過ごした季節から、いつの間にか一枚の葉もなくなった枝から淡いブルーの空が見える季節になった。

花をつけていた木はさっぱりとした姿に、草はかさかさと音をたてながら褪せた優しい色合いで揺れている。

毎年この時期になると、「あっという間だったな」と思う。
「あっという間」と感じることは、さみしくもあるけれどありがたいことなのかもしれない。
それだけ一所懸

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176 チョコレート・ナイト

176 チョコレート・ナイト

すっかり空気が冬色になってきた。
空気は目に見えるわけではないけれど、どうしても季節によって「色」がある気がする。
それは人それぞれ、過ごしてきた時間や見てきた景色、感じてきたことによって変わるものだ。

例えば、夏は海や空のブルーをイメージする人もいるだろうし、日差しのイエローが頭に浮かぶ人も、いきいきとした植物のグリーンを想像する人もいるだろう。どれも尊い感性だと思う。

冬はどうだろう。雪の

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175 小さなおしゃべり

175 小さなおしゃべり

1.散策について

誰だったか、散策を「視覚的な喜び」と表現した人がいた。
どの本にそう書かれていたのかどうしても思い出せないのだが、表現はずっと心に染み込んでいる。
読書は、こんな風にあっけなく私を納得させてくれる言葉に出会えるからやめられない。

私は一年中散策をしている。
春はやわらかい空気が嬉しいし、夏は木陰の模様を見る。
秋は雲を眺めるのがおもしろいし、冬は建物の色がグレーがかって見える

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