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お酒のこと エッセイっぽいもの

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BARとか居酒屋とか楽しみ方とか失敗とか、お酒に関する幸福論的な色々
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冷えただろう。あたっておいきよ。

冷えただろう。あたっておいきよ。

過去は雄弁すぎて

未来は言葉足らずで

時間は旅人に不親切な存在だ。

僕の居場所は過去にも未来にもなかった。

今日もややうなだれて

いつもの寂れた小屋へと戻る

時を置かずに扉を開けて入ってきたのは

紛れもなく、少しだけ疲れた僕だった。

「何か飲むかい」

温めたウィスキーに角砂糖をひとつ

自分に優しくできた自分を

今日も誇らしく想うとしよう。

(354日)

#エッセイ #コ

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鍋がきらいなわけ

鍋がきらいなわけ

鍋の具材が多かったかな

コンロの炎を細め

足りない酒を買い足しに行ってくるよと

ひとり薄着でコンビニへ向かう

呼吸する地球の力強さも

乾いた空気の優しさも

ざわめく世界と乖離している。

テールランプの帯と

遠く聞こえるサイレンが

いつもの師走を編んでいる。

巻きなおしたマフラーも

ポケットのスマホも

素足に履いたサンダルも

去年と同じ

袋の中のアイスの数だけが

去年と

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桶屋が儲かる

桶屋が儲かる

この国は、人の居られる場所が随分少なくなったもんだな。

閑静な住宅地の公園。このあたりの地主さんが亡くなったあとに、相続税の物納というかたちで土地を手放したと思われる。

昔の子どもたちは公園で野球やサッカーに興じ、遊具で創作遊びをしていた。現在では事故があってはいけないという理由から遊具は撤去され、道路へ飛び出し防止のためにボールで遊ぶことを禁止されているようだ。
その上、

公園で遊ぶ子ども

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結果とプロセスと代償

結果とプロセスと代償

吉野家で1時間待たせられたら怒り心頭だろう。
高級フレンチで全部盛りされたら暴れるだろう。

管理職は結果重視
コンサルと若い者はプロセス重視の日本企業

たまたま出た良い結果かもよ。

それを成功法則にしてしまうと不幸になる

かもよ。

プロセスと結果が結びついた

長時間労働というプロセスを経ての

過労死とか

美味い果実を実らせるのに土壌や環境を考えない人はいないだろう。

欲している相

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汝の敵を愛せよ

汝の敵を愛せよ

風邪で病院を受診しなくなった。
残念ながら…という想定外の医者の診断結果が怖いわけではない。

待ち時間がしんどいし「風邪ですね」と言われたときの安堵感と「ただの…」的虚無感のないまぜになった感情がなんともビミョーで。

「じゃ、お薬出しときます」って、出された薬の効果の無さは死ぬほど知っているし。めでたく死んではいないけれど。

風邪ですけど、治療しますかどうしますか?
見積りぐらいは無料でやっ

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地球の恵みで育てられた僕らもまた地球の一部

地球の恵みで育てられた僕らもまた地球の一部

最近の葬儀では、故人の大切にしていた物の展示なども演出のひとつになっているようだ。グローブ、カメラ、自転車、スニーカー。こういうの主流になっていくのだろうか。

…無理僕は、あの世に行ってまでこんな風に自分の残骸が人目にさらされるなんて耐えられない。死ぬほど辛い。
いやもう死んでるんだけども。
しかも葬儀となると、間接的な知り合いとか、さして親しくもない人も参列するだろう。知られたくない。色々と。

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死を覚悟すると自由になれる

死を覚悟すると自由になれる

ナマケモノは天敵に遭遇すると真っ先に「死を覚悟する」そうだ。

美しい上に 正しい苦しんで死ぬ時は覚悟を決めて死ぬか、抗って体力を消耗して死ぬかの違い。 僕なら楽に逝きたい。

死はどんな生き物にも平等に訪れるものだから。

関東が大いに揺れた木曜日のあの時間、Barに居た。
何故だか、ここで死んだら本懐を遂げたも同然。そう思った。

遺言書もしたためられず、家も散らかり放題だが、酒瓶に埋もれて死

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憧れの こん平席

憧れの こん平席

僕はこん平師匠と呼んでいる。言語上は「師匠」で「こん平」部分は脳内で。師匠は社内の大きな宴の幹事を毎回担っていて、会場では司会から一番遠い席に座っている。だからこん平師匠。
師匠の芸は素晴らしい。会場選びから予約の段取りはもちろんカンペキ。当日のドタキャン数まで的中させる。そしてなにより得意な演目は「配置」。
若者の集う居酒屋とは桁違いに事情を抱えた大人たちが集うのだ。そりゃあ色々と未然に防がなく

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いつものやつください

いつものやつください

主に酒場などで発生する6文字のなぞなぞ「いつものやつ」
出てきたそれがマティーニとかビールだったら「普通に頼めよ文字数少ないじゃん」ってツッコめる。それまでに摂取したアルコール分を全身の毛穴から一瞬で離脱させる勢いで。
トワイスアップのミルクとか出てきたら、もう名刺交換したい友だちになりたい。

憧れのすごい常連っぷりだ。
「タワケもの!余の顔を見忘れたか!」
暴れん坊将軍に近いコンフィデンス。

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台風とワクワク

台風とワクワク

アドレナリンが分泌されるからなんだそうだ。
こんなに危機的な状況にありながらワクワクする。
人の脳の原始的な部分が、来たるべき敵にそなえているのだろう。
ビールとかっぱえびせん買って、あずきバーも買って、普段買いもしないカップラーメン買ったり、水は十分だったかな。
いつでも避難できるようにTシャツとジャージでベットに入り込んで、
ロウソク引っ張り出したり、懐中電灯チェックしたり。
おっと、最後の晩

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ちゃんと選ぶ

ちゃんと選ぶ

社会人になると友人選びも慎重になる。肩書というフィルターのために自分にとって害悪のある人を見抜くことが難しくなってくるから。

善良そうな顔をして「あなたのために」という笑顔の刃を向けてくる人もいる。「あなたにしか頼めないから」と、搾取するために近づいてくる人もいる。
無駄に過ごした時間も、無駄な経験にはならないし、想定外のある人生も楽しいから、若いうちは色んな人に出会ってもいいとは思うけど。

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反省会なんかたぶんみんな好きじゃない

反省会なんかたぶんみんな好きじゃない

改善したらいいところなんて、それぞれが気づくはずだ。
次回はこのようにって「ここ注意しとくとスムーズね」の付箋貼るだけで済むのに。そのつど出たエラーの源泉をたどっていけばいいだけで、問題の起こるシステムを理解していけばいいだけなのに。そんなに難しい顔しなくたっていいのに。

一日の終わりに予定帳に反省を書かせる先生とかいたけど、マジやめたほうがいい。オトナも病むぞ。

反省文で人格形成がなんとかな

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メリットとデメリットって誰視点なのだ

メリットとデメリットって誰視点なのだ

この世の森羅万象は陽と陰、表と裏、明と暗のカップリングで成り立っている。

美味いものにはオキシトシン量の増加効果があるが、体重の増加効果もある。財産があっても税金と相続に悩み、生涯のパートナーとして厳選したはずの配偶者も、年数が経てば死を願う。

人類は新しい発想と物を使って進化をとげてきた。科学、交通用具、インターネット。だがその便利なものの負の側面(デメリット)に怯える人は少なくない。
未知

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酒のみはライオンの夢を見る

酒のみはライオンの夢を見る

2021年、人類は終焉に向かおうとしていた。専門家会議の出した答えはそこにあった。

「この局面を変えられるのは、もはや『酒のみ』の排除でしかない。」

人類誕生以来最大の敵「酒のみ」。地球に巣くうこの種族たちは、合法という名のもとに傍若無人で思慮の浅い自堕落な生活を続け、所かまわず眠り、最終電車で醜態を晒し、妻の逆鱗に触れ、破壊の限りをつくしてきた。

僕は由緒正しい酒のみとしてこの世に生を受け

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