【人は求める。
　知りたいという欲求よっきゅうが人を動かす。
 
　それは時に、探究心たんきゅうしんとも呼ばれ…
　また、それを好奇心こうきしんとも呼ぶものもいる。
 
　二人の幼おさなき勇者は果たして…】
 
男の子二人。
 
「ここが噂うわさのダンジョンだ。
　地下２００階とも言われてる」
「僕たち…お宝見つけられる？
　ちょっと、暗くて怖いよ…」
 
「二人なら大丈夫！
　そして宝は必ず見つけ出す！
　一緒に行くぞ！」
「う、うん！」
 
二人は探索たんさくへ。
 
「兄ちゃん？」
「何だ？」
 
「その宝って、何なの？」
 
「それは…
　怪文書だ」
「かいぶんしょ？」
 
「父上の話では、
　【魅了の怪文書】って呼ばれていて、
　そこに記しるされた文章は、
　人を惑まどわす力があるらしい」
「そんなの見つけたら、
　僕たちも大変なことになるよ！」
 
「大丈夫だ。
　中さえ見なければ」
「ならいいけど…」
 
「それに契約けいやくでは、
　その文書を入手すれば、
　父上から素晴らしい褒美ほうびが、
　貰もらえることになっている」
「ほんとに？！
　僕には！？」
 
「もちろん、お前にもだ」
「やった！
　兄ちゃん、頑張って見つけようね！」
 
「ああ」
 
二人は更に深くまで潜もぐっていった。
 
キュルキュル…
 
「兄ちゃん、お腹すいた…」
 
「まだだ！
　我慢がまんするんだ！
 
　お昼までのこの時間しかないと、
　父上が言っていた。
 
　だから、あともう少し…
　頑張るんだ！」
「でも…もうお腹が…」
 
「踏ふん張ばれ！
　お腹を抑おさえるんだ！
　音を出しちゃダメだ！
　気付かれてしまう！」
 
「もう兄ちゃん…限界げんかいだよ…」
「諦あきらめるな！
　褒美ほうびが待ってるんだ！
 
　絶対にある！
　宝はここにあるはずなんだ！
 
　………
 
　あっ！
　これは！」
 
「なになに？」
「……見つけた！！
　これだ…これに、間違いない！！
　父上が言ってた怪文書！！
　ここにサイン●●●もある！！」
 
「これ…何て書いてあるの…
　佐藤…くん…へ？」
「そうさ！
　これこそが魅了の怪文書！」
 
グゥゥゥゥーーーー！！
 
「！！」
「ハッ！！
　ヤバい！！」
 
ガタッガタッ！！
 
「私の…
　宝を…
　荒あらす者は…誰だ～！！」
 
「兄ちゃん、出た～！！」
「ま、魔女だ！！
　大魔導使いだ～！！」
 
「誰が、大魔導使いですか。
 
　２人とも押し入れで何してるの？！
　ママの私物を勝手に触らないの！！
 
　それっ！！
　それはママが出しそびれたラブレター！！
 
　返しなさい！！」
 
「ええ～報酬ほうしゅうが～」
「ご褒美が～」
 
「あなたたち…
　誰に頼まれた？」
 
「………」
「………パパ」
 
「ちょっと！！
　あなた～！！」
 
「ヤバい！
　全員、逃げろ！
　退却たいきゃく！！
　退却たいきゃく～！！」
 
【人には…
　触れてはいけないものがある。
　勇者一行よ…
　よ～く、肝きもに銘めいじよ】