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8人の小人さん

ルームウェアで、
ベッドに倒れ込む女性。
 
「はあ~今日は、ほんと疲れた。
 でもまだSNSチェックしてないし…
 あっ、そういえばダウロードした本、
 まだ全然読んでないや…
 …週末にでも読めばいいか…
 あれ?ネトフリのドラマ…
 まだ1話しか…見てな……い…
 ……
 ……」
 
Zzzzzzz
 
深夜0時。
 
テーブルの上の化粧ポーチ。
 
カタカタと小刻みに震えだす。
 
誰も触れてないのに、
チャックがゆっくりゆっくり開いてく。
 
中から化粧品が滑り落ちる。
 
フェイスパウダーが開き、
中から粉にまみれた小人が現れる。
 
化粧水のキャップが外れて、
また中から小人が現れる。
 
下地…
リップ…
ハイライト…
アイシャドウ…
コンシーラー…
 
7人の小人は整列する。
 
粉まみれの小人が、
体を震わせると、
舞い上がった粉を、
他の小人が手で振り払う。
 
「号令!
 1」
「2」
「さ~~ん」
「4」
「5」
「6」
「ヒチ」
「ハチ」
 
「よし!
 全員そろったね。
 じゃあ今日も作業を始めよう。
 作業内容を2、説明して」
「はい。
 今日は総会の資料作成が大詰めで、
 残業時間を含めて10時間の座り仕事。
 いつも以上に体に疲労が蓄積ちくせきされてます。
 よって今日は肩・腕・指・腰を重点的に、
 りほぐしと血流改善を行います。
 隣同士ペアになって作業を行って下さい。
 以上です」
 
「じゃあ各自、
 作業開始!」
 
「お~!」 「お~!」 「お~!」
「お~!」 「お~!」 「お~!」
「お~!」
 
1の指差しで、
小人のペアはその体の部位へ移動する。
 
小人は指示された場所に到着すると、
女性の体に両手をかざすと左右に動かし、
ダメージのある場所を探る。
 
「ここだ!」
 
すると小人の両手がほんのりと光る。
 
右肩、左肩、
右腕、左腕、
右手親指、左手親指、
右腰、お尻。
 
「ちょっと!
 お尻はいいんだよ!
 降りといで!」
「そうなの?
 どうりで、よく弾むと思った」
 
7はお尻を滑り降りて、
8と一緒に腰の治癒にあたる。
 
「何でここまで頑張るんだろ?」
「複雑なんだよな~。
 仕事が楽しいという感情。
 められて嬉しい…
 やらなきゃという責任感…
 同僚への自己顕示欲じこけんじよく…。
 からみ合ってるから、
 気持ちが読めても、よくわかんない」
 
「人間って面倒だよね。
 もっと単純でいいのに」
「あんたがそれ言う?!
 あなたはもっと周りを気にして!」
 
合体合点承知の助しょうちのすけ!」
「ちょっと!どこいくの~!」
 
「もう腰は終わりでしょ。
 ちょっと顔まで行こう~!」
 
7と8は背中を駆け抜け、
肩を治癒する二人の間を通り過ぎ、
顔の前に。
 
女性は深い寝息を立て、
吐息といきたびに小人の服は揺れた。

「起こしちゃダメよ…」

7は顔全体を見渡し、
鼻に移動すると両手をかざす。

「化粧…落としきれてないよ…
 こんなに頑張って…
 それでも明日も頑張るんでしょ?
 …こんなことしかできないけど、
 いつも見守ってるからね」
「……」
 
翌朝。
 
「ふぁ~よく寝た。
 ……
 あれ?何か体軽い♪
 よし今日も頑張るか!」
 
テーブルの化粧ポーチが…
……
…わずかに揺れた。
 

このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。 

お疲れ様でした。