見出し画像

「浪人」は人生勉強だ!

これは 私が大学受験に失敗して
浪人した頃のお話(パート2)です

私は  初めて親元を離れ 一人暮らしを始めることに
なったのですが 浮き草みたいな 「浪人生」です
から 不安は募るばかりでした

私が見つけた  朝食と夕食の「まかない付き」下宿
私を含む浪人生10名が入居したのは まだ少し
 肌寒い3月のことでした

ただ  そのうちの1人はメンタルな病いをわずらってい
ることが分かり
 新年度が始まる4月を待たずに
すぐ退居してしまったので 実際には9名だけが
入居していました

その下宿は 1階が「下宿のおばさん」一家の
住まいで 2階が  浪人達の居住空間となっていて
夫々4畳半の個室が割り当てられていました

私の部屋は 階段近くの角部屋でしたが その
斜向かいには 牧さん(仮名) という女性の浪人生
が入居することになりました

ええ  そうです!

実は 男性6人  女性3人 が住むことになった
この下宿は  当時としては珍しい“シェアハウス
型の下宿だったのです

朝夕の食事は おばさんが丹精込めて作って
くれるので キッチンを使うことは出来なかった
ですが  テレビがあるリビング そしてトイレ浴室
共用になっていました
もちろん その浴室は  使用できる時間帯が男女で
区別されていたのです

しかし  シェアハウスとは言っても  決して
トレンディドラマに出てくる様な 恋バナ 
飛び出す お洒落は場所ではありません!

なにしろ 皆 来年の春の「合格!」を目指す
しがない浪人生です れたれたうつつ
抜かしている
場合ではありませんでした

がしかし  この浪人生達は とても気が合いました

ひと月に1回だけでしたが 夕食を済ませた後
2階の誰かの部屋に集合すると 車座になって
湿気ったポテトチップスの入った袋を回しながら
よく 取りとめも無い話をしました

そんな或る日 あの牧さんが こんな事を言ったのです

牧さん:
  私ね … 高校まで ず~ っと女子高だったから
  男の人と こ~んなに 近くでお話するのって
  ここに来て 初めてなの …

みんな:
  えーっ? それマジなの? 純粋培養か~!
    天然記念物だな! 正倉院の国宝かも!
      ハハハハ…

  えっ?  じゃ男の人と…お付き合い…とかは…

牧さん: それ … 聞く?

みんな: ですね! ハハハハ…

私は 男女共学で育ってきたせいか 今まで
そんなタイプの人に出会ったことが
無かったので かなりの驚きでした

そしてナチュラルに あぁ男子校じゃなくて
ホントに良かったなぁ~
と つくづく
思ったのです

 


ところが
6月の梅雨の時期が訪れると  この牧さんに
にわかな  異変が生じたのです

牧さんは予備校生であるにも関わらず 
喫茶店でバイトをしてみたい!と
言い出しました!

予備校からの帰りに  バイトなどすれば
下宿の夕食に 間に合わない日が出てきます

そのため  夕食をパスさせて欲しい と
おばさんに断ってきたのだそうです
しかし おばさんは 許しません

予備校生に バイトする時間など あるはずが
ない! 親御さんだって反対するに違いない
と  おばさんは  譲らなかったのですが…

牧さんの態度はかたくでした

7月に入ると その喫茶店に週3ペース
立ち寄ってバイトするようになり 案の定
20歳以上も年上の店長と  すぐ恋仲になって
半同棲を始めてしまいました

挙句の果て  9月には とうとう下宿に
帰らなくなってしまったのです!

下宿生達は「牧さんは  “純粋培養”  だから
雑菌に捕食されたんだろうなぁ… 」

囁き合いました

おばさんは この時まで 
牧さんの実家に幾度も電話を掛けて
牧さんから ようやく聞き出した
同棲先の住所を 両親に伝えました

その後 牧さんは下宿にフラッと現れて
荷造りを済ませると 何も言わずに
立ち去ってしまいました

12月になり 北風が吹き始めた頃
おばさんの元には 牧さんから
結婚式の招待状が届きました!

おばさんは その披露宴の招待状を
指で摘まむと ヒラヒラさせながら

みんなの前で こう言ったのです

おばさん:
    行ける訳ないわよね~

皆は 黙っていました …

おばさんの苛立ちが 頂点に達して
とても太刀打ちできそうに
無かったからです

私が浪人したこの年は 受験勉強だけ
でなく
 ほんの少しだけでしたが
お金じゃ買えない「人生勉強」をした様な
そんな  気持ちになりました


◆浪人した頃のお話(パート1)はこちらを
 ご覧ください ↓


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?