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【自工程完結編6:その作業って本当に必要っすか?】

本マガジンの過去の投稿は上記に入れています。

ご存じのようにこれまでトヨタは、トヨタ生産方式を展開し世界で確固たる地位を築いています。その生産方式自体が米国で研究され体系化されリーン生産方式としても有名になっています。

そんなトヨタがさらに仕事の質を改善するため、10年以上にわたって取り組んでいる「自工程完結」について対話形式で解説していきます。自工程完結とは、「良い仕事しかできない(やり直しがない)、良いものしか作れない(作り直しがない)という条件は何かということを徹底的に科学的に実現しようとする」考え方です。

さて、今回は過去のマガジンで心理的安全性を学んだ、製造課長の正輝‍が再登場します。

ある時、課内の工程主任であるの流星(若手)が現場への仕事指示の仕方、仕事の進め方で苦労しているところを目にします。そこで、下記の本を使って指導を開始します。

・・・・・・

👨‍;おはよう。

👱;おはようございます。前回は、いかに自工程完結浸透させていくかという部分について解説してもらいましたが、今回は、具体的な活用例、導入例の解説ですね。

👨‍;ああ、事例を使って話していく。

◆この仕事、必要ないんじゃない?でもやめられない・・・。

👨‍;今回はトヨタの国内部品部の取り組みを紹介する。メンテナンスや故障、事故などに対応するための補給用部品を共販店を通じて、販売店や修理業者へ提供する部署だ。2011年、この部署はある組織変更があって部員が半減したが、実際に業務はそれほど減っていないという状態だった。

👱;人が半分になっても業務が減らない。組織変更があったりするとそういうことが起きますよね。

👨‍:それまでベテランのノウハウに頼った業務改善はあったが、思い切った業務改廃には至っていなかったうようだ。そこで、まず始まったのが。「自工程完結」の考えをベースにした「業務仕分け」だったんだ。

👱;業務仕分け。これまで慣例として必要として仕事をもう一度見直して本当に必要かを議論するということですね。業務仕分け言えば、「2位じゃだめなんですか?」ですな。

👨‍:ははは。そうそう。具体的には、部長が、廃止・削減を前提に検討会を一度開催したんだ。「目的を失ったのではないか」「単なる慣例で意味のない仕事ではないか」を上げてもらって、部長・室長・グループマネージャーで審議する。そこで、20件もの仕事が改廃されることになった。例えば、「実績管理」と呼ばれていた業務、実績は月末で閉まれば出てきますが、その月末が閉まる前に月20日の時点で「見込みを」を作っていたのです。これがかなり、細かなやり方だったそうで、工数もかかっていた。

👱:でもそれって、所詮見込みですよね。

👨‍;そう。その通り。でも例えば車両営業部という部署では、同じように実績管理が行われているんだが、そこには20日時点の数字をもとに見込みを作り、残り10日でどのくらい成績を伸ばす必要があるか把握し、販売店にアクションを依頼したり配車調整をしたりする目的があった。

👱;なるほど。でもこの流れから行くと、国内部品部ではその見込みデータから何かアクションを打つということにはならなかった、つまり目的はなかったのですね。確かにメンテナンスや事故対応で使われる部品ですから、先ほどのように販売店に依頼云々というのができないですよね。

👨‍:その通り、要するに活用されていないでデータだったんだ。しかし、これに120時間も年間かけていたそうだ。それで撤廃したわけだ。

👱:120時間・・・。。毎月10時間・・・。それは大きいですね。

◆それがなくなったらすごく困るのか?という問い

👨‍;ほかにもこんなことがあった。同じ部署で、ある女性担当者が、地区担当員会議という月路の会議に参加しており、会議前に伝えたいことを集約して1枚シートにしていた。しかし、実際の会議ではこのシートを使うのではなく、多くの資料を使ってより細かい説明が行われていたそうだ。元々はそれを要約してプレゼンするというのが目標だったのだろうが、結局要約では伝わりきらないということがわかり細かい資料で説明するようになったそうだ。要約資料の作成に年間200時間使っていたそうだ。

👱;本当にまとめ資料が必要なのでしょうか?

👨‍:そこで、まとめシートが必要なのかという質問をしたら。「いります」という回答だったそうだ。そりゃ、いるか、いらないかという質問だった、「いる」っていうよな。

👱;そりゃそうです。ないよりはあったほうが「安心」ですからね。

👨‍;そう、安心なだけなんだよな。そこで、佐々木さんは質問を変えたそうだ。

👱;なんて変えたのですか?

👨‍;「これがなくなったすごく困りますか?」だ。

👱:なるほど。つまり、回答側が「責任」を持つ回答をしなければならなくなる質問ということですね。

👨‍;そう。「すごく必要、すごく困るか」かという風に聞くと、回答者が強い意思を持たなければいけないくなる。そうすると、自分の責任と活用のレベルを天秤にかける。そうした時に本当に必要なものにしか、責任は負わなくなるんだ。そうして本当に必要なものをあぶりだされる。

👱:なるほど。相手に責任が伴う意思決定をさせるための質問ということですね。作ったんだから、使うんですよね?を遠回しいっているみたいなものですね。

◆個人の取り組みから小集団への取り組み

👨‍:そうだな。あぶりだしという表現が合うと思う。さらに業務仕分けは、他にも次々と案が出てきて、部内で、年間600時間の工数を削減できたそうだ。

👱:600時間ってすごいですね。1日8時間、月に20日稼働として、約1人の人の3.5か月分くらいの業務がなくなったということですね。

👨‍:しかし、廃止ネタというの無尽蔵にあるわけでなく、ある時期を過ぎると提言が出てこなくなったというんだ。

👱;なるほど、ただ、単になくしていくだけでは限界があったということですね。

👨‍;ああ、そして改善へ舵を切っていく。さらに国内部品部では2014年に個人の活動から組織や集団で、「自工程完結」的な動きを模索するということで、小集団活動が開始されたそうだ。しかも、組織的な小集団ではなく、部門横断でチームを編成するという形をとったそうだ。6チームに分け、若手リーダーとベテランサポーターを組み合わせることでお互いに気づきあう集団を目指したという。そうして横ぐしのテーマが次々に上がってきたんだ。

👱;なるほど。

👨‍;例えば、決裁書の保管。本来はできていて当たり前のことなのかもしれないが、グループがいくつもあったり組織改編が何度もあったり、人の移動が頻繁にあるので過去の決裁書を見つけるのに難儀したという経験は多くの人にあると思う。原因は単純だが、グループによって保管方法や保管ルールがバラバラだったこと。そこで、誰にでもすぐに取り出せ今後誰もが決裁書の場所がわかるように補完するルールを部署で一つにしたんだ。そのほかにも「共有図書」、「部品用語集」「危険個所安全表示」「機密資料目隠しシート」など様々な共通ルールを作成し、成果を上げていった。

👱:なるほど。そうして、個人からの各種の廃止提案から商談での改善へと広がりを見せていったのだ。

◆後工程ニーズの見極めが仕事の向上につながる

👨‍:国内部品部で行われた「自工程完結」の大きな特徴は部門全体で、個人個人が声を上げ組織風土を変えて、業務改廃や改善、小集団活動に取り組んでいったことなんだ。しかも、改廃提案書など必要なく、口頭説明でも構わないと部長はいい、課長な事前調査はいらないからと、誰でも提案できることが重視されたんだ。

👱:まずやってみろという組織風土を作ったのですね。でも、上記の活動って自工程完結っていうんのですかね?

👨‍:確かにピンときにくいかもしれないが、まさに自工程完結そのものでなんだよ。情報の流れ、仕事の流れを考えると資料を無くしたという点だけをとっても、不要な情報を後工程に送らないようになった。その結果、後工程はムダな仕事をせず済むようになったんだ。これは自工程完結だ。

👱:なるほど、仕事の視点が変わりますね。やめても困らない資料を作っていたことで、部内も非効率になっていたけども、余計なものを造ることで、実は後工程の担当者や関係者も非効率にしているわけですもんね。ましてや資料を作っている人にとっては、ムダな作業をしている、仕事の質を落としていることに他ならないですね。後工程に役に立つという根本原理がそこに必要ですね。

👨‍;その通り、昔からやっているからというだけで惰性で行われている業務はないか、後工程のニーズを知らず続けている業務はないか。そうした意識に立って業務を見直してみることも「自工程完結」に他ならないんだよ。ちなみに、業務しわけで改廃が決まり無くしてしまった業務で後で困って復活した業務というのは一つもないそうだ。

👱:なるほど。わかりました。

👨‍:次回は具体例をもう一つ話そう。今話した視点に立って聞いてほしい。

・・・・・・・・

 今回は、自工程完結の概念をベースとした改善例を解説しました。目的・プロセスを見直すということですね。後工程(製造現場だけなくすべての業務に存在)に役立つ、後工程にムダをさせない自分もしないという概念が自工程完結ですね。次回は残りの改善例を解説していきます。ぜひ、自部署に活かせいそうなものがあれば参考にしてみてください。

下記の固定記事に、このnoteのコンセプト、これまでのマガジンについて説明しています。ご興味あればスキ・フォローいただければ嬉しいです。

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