思い出には生きない
「思い出はいつもきれいだけどそれだけじゃお腹がすくわ」
JUDY AND MARYのそばかす。このフレーズはとんでもない。
こういう何も言っていないようで、なのに全てを言ってしまうような一行を書ける人を尊敬する。
ジュディマリよりもYUKIソロ派だけれどもこの歌詞だけは知っている曲全部ひっくるめても素晴らしいと思う。
僕もライブ活動を続けて長くなるので「その時期のファン」がいる。
今も来てくれている人も、もう会わなくなってしまった人もいるけれど過ごした時間や好きでいてくれた事実に変わりはない。
振り返ればいい思い出がたくさんだ。
出会った頃の曲というのはやはり特別なもので、古い曲を歌うととても喜んでくれる人がいる。
新しい曲はよくないのかな…と寂しくなりそうになるけどそうではなくて、要は思い入れの深さなのだ。
例えば今昔の曲を再レコーディングして歌詞や演奏のフレーズを洗練させたとしても、
きっと当時好きになってくれた人は「あの頃の音、歌詞」に愛着があってクオリティーでははかれない何かに胸をつかまれるだろう。
マンガが実写映画化したときの「別物を見る感覚」に近いかもしれない。
それはそれ、これはこれと思えればいいけどそうじゃない人は嫌かもしれない。
だけどそう思えるのも変化したからだ。
昔が良かったと思いながらも僕らはずっと同じだと飽きる。
新しい曲が出るから昔の曲が好きだと再確認するし、方向性が変わるから前の路線が好みだったのだと気づくし、解散するから見に行っておけばよかったと思う。
昔が輝いて見えるのはちゃんと変わっている証拠だ。
そして思い出はいつもきれいだけどそれだけじゃお腹がすいてしまう。
あの頃も楽しかった。ライブハウスにいっぱい人が来てくれた時期もある。
でもそれよりも今が充実している方がいい。
「あの頃」を求められても自分の現在を大切にしていく。ワクワクすることを選んでいく。
すごくなくても、ささやかでも、満たされるものは今ここにしかないのだ。
思い出には生きないぞ。
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