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会社の成長を支えるナンバー2の育て方 vol.79 後継者の補佐役を育成する視点

【事業承継では後継者の補佐役についても検討が必要】


事業承継を検討する場合、後継者をいかに確保するか、どう教育するかに焦点が当たりますが、忘れてはならない課題に後継者の補佐役の確保、育成があります。

2代目や3代目が事業を潰すとも言われ、その原因は市場の変化、後継者の能力不足などが挙げられますが、その背景には補佐役の存在の有無も影響しているのではないかと思われます。この点に関しての分析はこれまであまりされてこなかったのが実状でしたが、ここ数年は中小企業白書等でもこの点についての指摘が増えてきたように感じます。

事業承継の課題

一般的に論じられる事業承継における課題は下記の表で示されているように、税務上の課題としての資産の承継と人的課題としての後継者の確保、育成がやはり2大課題で、後継者がなく、継続性の高い事業はM&Aを活用するというのが昨今の潮流です。

社団法人中小企業研究センター平成20年調査研究報告No.122より引用

私も前職は法律職であったので、事業承継について相応のインプットはしてきましたが、後継者の補佐役の確保、育成というテーマについてじっくり論じた書籍は皆無だと実感してます。(触れられていても数行、多くて1ページ程度です。)

八王子市 令和 2 年度 中小企業の事業承継に関する状況調査 調査結果報告書

事業承継の課題に関する八王子市の令和2年度調査では「後継者への引き継ぎ」という課題(68.4%)を上回る71.8%が「後継者を補佐する人材の確保」という結果が示されています。

業績を考えた時にスポットが当たるのはどうしても経営者の戦略や施策、キャラクターであるものの、補佐役という存在がどのように事業に影響するのかが真剣に議論されつつあるのだと見て取れます。

後継者と古参の幹部社員との関係性

経営者が勇退した後に後継者の補佐役として古参の幹部社員を引き続き据えても後継者と息が合わないということもあります。古参の幹部社員が先代経営者の経営方針に頑なで、現場の社員からの信頼が厚い場合、社員が古参社員の側につき、後継者に味方がいないという状況になると後継者も経営者としてやりにくいという悩みとなっている場合もあります。

そうした場合、後継者にとって重荷になる幹部社員には人事異動や場合によっては先代経営者とともに退職してもらうなどの対応も視野に入れる必要があり、そのためにも就業規則や退職金規程も見直しておくことが賢明です。

また、そもそもこのような状況にならないように先代経営者の勇退時にあらかじめ古参の幹部社員に、考え方の違いはあっても後継者による組織作りに協力してもらえるように話しておくことは言うまでもありませんし、必要に応じて古参の幹部社員の再教育も検討するのが良いと思います。

後継者に補佐役がいない場合のリスクとは

さて、後継者を補佐できそうな幹部社員が存在する前提でお話をしてきましたが、先代経営者時代を通じて補佐役に適した存在がいない場合ももちろんあるでしょう。

先代経営者のカリスマ性や突出した経営能力などでそれまで事業を継続できたとしても、後継者が同じように経営を行えるとは限りません。経営者としての経験不足を文字通り補う、補佐役の存在の必要性を感じる場面です。

では後継者に補佐役がいない場合、事業承継プロセスや企業の持続性、安定性においてどのような問題が発生する可能性があるでしょうか。その主なリスクと影響について続いて解説します。

①経営者の孤立感

後継者が補佐役なしで経営者の座に就くと、意思決定や問題解決において孤立感を感じる可能性があります。経験不足や特定の業務に対する知識不足からくる自信の喪失や迷いが生じても、意見を聞いたり、相談できる相手がいないと孤立を深めてしまいます。

②事業運営の混乱

後継者が経営者として未熟で、経営者としてのスキルやビジネス知識の不足が原因だとわかっていても、その穴を埋めてくれる存在がいないと誤った経営判断をし、事業運営の混乱が生じる可能性があります。

③従業員の不安と離職リスク

従業員は経営の変化に敏感であり、後継者が周囲から十分なサポートを得られていない場合、不安感が広がりやすくなるものです。従業員の不安が高まると、離職や生産性の低下に繋がってしまうことがあります。

④戦略の不備や失敗

後継者が補佐役なしに戦略的な決定を下す際、不十分な情報や分析で誤った判断をしてしまう可能性があり、これによって事業戦略や市場動向に対する誤った対応を引き起こす場合があります。

⑤顧客や取引先との信頼喪失

後継者に適切なサポートがない場合、ビジネスパートナーや顧客との信頼関係が損なわれる可能性があります。先代経営者が築いてきた長期的な取引関係やビジネスの安定性に悪影響を与えてしまうかもしれません。

⑥事業の持続性の脆弱性

後継者が補佐役なしで経営を引き継ぐと、事業の持続性が脆弱になります。経営者の責務は多岐にわたり、それに対処するための経験や知識が不足していると、やはり事業運営に大きな影響を及ぼしてしまうことがあります。

まとめ

総じて、後継者に補佐役がいない場合、事業承継の成功が脅かされるリスクが高まる可能性があります。とかく事業承継では後継者不足、育成に目が向きますが、案外見落とされがちなのが後継者の補佐役の確保、育成です。事業承継はある意味、第2の創業でもあるので、計画的で組織的なアプローチが求められ、後継者の育成のみならず後継者のサポート体制も重要であることを留意しておくべきだと思います。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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