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会社の成長を支えるナンバー2の育て方 vol.94 小さな違和感を感じとる察知力

事業をしている日常において、ふと小さな違和感を感じることはないでしょうか。もしそう感じることがあるとしたら経営者としてアンテナが立っている証拠です。

物事には予兆というものが必ずあり、日々の仕事の中にも些細な変化が大きな危機の前兆を示していることがあります。ただ、経営者は多忙を極め、現場の全てを把握することは物理的に難しいですから、理想を言えば自分の目となり、耳となってくれるナンバー2の存在が欠かせません。

今回はナンバー2に必ず身につけさせたい視点のひとつである危機管理における察知力についてお伝えしたいと思います。

アンテナの感度は正常か

人はコツコツと取組んできたことに関してはいつも気にしているので僅かな変化も見逃さないかもしれませんが、起きて欲しくないことは無意識に考えたくない心理も働き、アンテナの感度が鈍ってしまう場合があります。

ただ、ナンバー2として組織全体を統括する立場であるなら、些細な変化に気づけるかどうかは重要なことです。逆に、アンテナの感度が悪すぎると、問題発生した際には場当たり的な対応に終始し、いつまでも学習しない組織である状態となるのは必至です。

例えば、

・外出から帰ってきた部下の様子がどこかおかしい
・職場のPCの挙動が何かおかしい
・ゴミが落ちていても誰も拾おうとしない
・取引先の担当者の態度にどこか不自然さを感じる
・些細なミスが重なっている
etc

言われてみれば他愛のないことのように見えるこれらのことは危機の予兆かもしれません。

危機管理の鉄則、ハインリッヒの法則

危機管理といえば、事故発生についての経験則であるハインリッヒの法則というものがあります。

ご存じの方も多いと思いますが、念のために書くと、1件の重大事故の背後には、重大事故に至らなかった29件の軽微な事故が隠れており、さらにその背後には事故寸前だった300件のヒヤリハットが隠れているというもので、1:29:300の法則とも言われます。

ヒューマンエラー対策としては基本的にこの考え方が有効ですが、事故ではない危機もあります。具体的には相次ぐ離職や取引先との取引停止といった会社にとっての大きな損失などです。

私の実体験をお話すると、

部下の様子がいつもと微妙に違うので、「何かあった?」と聞いてみると、実はお客さんを怒らせてしまったとのこと。自分でどうにかしようと思っていたけれど大事になってしまったらどうしようかと悩んでいた。

取引先の担当者の態度がどこかよそよそしいので、それとなく質問をしてみると、「実は…。御社の対応について社内から不満が増えていて、委託先を変えようかという検討をしている」とのこと。

いずれも早期に対応することで大きなトラブル等になることは未然に防いでいましたが、ぼんやりしていたら危なかったと思われることばかりです。

・職場のPCの挙動が何かおかしい
 →サーバーやウイルス対策を疑う必要があります。データの破損、個人情報流出、全ての業務ストップといったリスクがある可能性があります。
・ゴミが落ちていても誰も拾おうとしない
 →職場に対する愛着心がない、会社で起こることに対する無関心、依存心が強いことの表れです。結束力がない職場にありがちな兆候です。
・些細なミスが重なっている
 →必ずいつか重大事故が起きます。

こうした事例など無限に書けますが、職場の風景を意識して見ていると気づけることは多いものです。

自分が感じた違和感は必ず確認する

ナンバー2といっても、会社によって役割は異なりますから、実務現場から離れた経営企画などを担当している場合もあるでしょうし、プレイングマネジャーとして第一線で実務も担当している場合もあるかもしれません。

いずれにせよ、毎日、忙しく仕事をしていると、部下から報告が上がって来ない、異変に全く気がつかない、気づいてもまあこれくらいと考えて流してしまう、気になってもそのまま忘れてしまい確認を怠る場合などがあります。

何事もなければ、取り越し苦労で済むのですが、残念なことにかなりの確率でそうならないのが現実でもあります。

日々の仕事の中で直感的に感じる小さな違和感は正しい場合が多いですから、先送ったり、放置しないことが賢明な対応です。

もし、「ある日突然、想定外のことが起きた」と感じることが多いのであれば、それは日頃からアンテナが立ってない証拠ですし、業務設計のリスク想定が甘いと言われても仕方がありません。

そして、事が起きた時に犯人捜しをして、直接的な当事者である部下を責め、始末書を書かせて、今後は気を付けろと言っているだけだとしたら同じことが繰り返される学習能力のない組織であり続けるでしょう。

もちろん問題が発生した際に大事なことは、原因の究明と再発防止で、さらにいえば想定の範囲を広げてその対策まで考え抜くことです。

多くの役職者はその場を何とかしのげればそれでいいと悪気もなく考えるものかもしれませんが、ナンバー2がその程度の見識であるなら改善を求める必要があります。

物事を軽く考える人は、「人間だからエラーをするのも仕方がない」と思い、そのエラーがどのような影響を及ぼすかまで想像できていないことがほとんどです。

こうした意見を述べると、厳しいなあと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、例えば、もし自社の事業が飲食や医療などで異物混入事故が発生し、他人の生命を脅かすような結果をもたらしたらその企業の再起不能まであります。長い時間と投資をして積み上げてきたものを一瞬で失うリスクがありますから、本来、危機管理というのは極めて重要な仕事です。

ナンバー2を本気で育てたいと思うのなら

ナンバー2のポジションというのは、経営者の職能の拡大に貢献すること、適切な判断の支援、経営実務を担う役割が期待されます。またその具体的中身は、経営幹部として売上作り、現場の管理監督、人材育成、制度・仕組み作り、そして危機管理と多岐に渡ります。

いずれの仕事においても、視点、視野、視座が高いレベルで求められるのがナンバー2です。

一人に多くの役割を負わせるには無理があると思うのであれば、複数の人間で役割分担すればいいのですが、統括という役目は一人が果たす方がよいと思います。

なぜなら各セクションに責任者を置くと経営者一人で情報を整理し、判断しなければならなくなり、判断が遅れたり、誤ったりすることが確実に増えるからです。経営者に近い目線で状況判断できる人材と連携できることが事故や判断ミスを減らすことに繋がります。

結局のところ、違和感を感じとる察知力というのは物事を客観的かつ多角的に捉える洞察力とも言い換えることができるでしょう。

この能力を養うには日頃から多くの失敗事例の見聞を深め、その対策、対処法を研究し、自社で具体的に取り組む構想力、実行力が必要です。経営者はナンバー2に多くの経験をさせ、多くのことを考えさせる機会を大量に作る必要があるでしょう。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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