りさ
子宮頸がんと診断されるまでの経過や治療についてのまとめです。
日頃(主にがんになってから)の思いを文章にしてみました。自分の頭の整理も兼ねて。自分の生きた証として文章を残したい。
悪い知らせはいつも、夫がいない日に限ってだった。 流産をしたとき夫は韓国にいたし、子宮外妊娠が発覚して緊急手術が必要と言われたときは九州にいた。 がんと告知され…
抗がん剤の3,4クール目が辛かった話を書いたが、5,6クール目あたりになると今度は再発の恐怖が襲った。 再発するかもしれない。 再発したら、また髪が抜ける。 再発した…
今期の朝ドラがおもしろい。 日本初の弁護士を描いた「虎に翼」は、伊藤沙莉が主演を務める。 素直で、思ったことはストレートに言う主人公の寅子のまっすぐな喜怒哀楽が気…
嬉しかった言葉は、周りの人が癌になってどう声をかけていいかわからない人の参考になるように、 嫌だった言葉は言わないように+私の浄化のために。 癌になってから言わ…
癌を告知されてから、音楽を聞かなくなった。 聞きたくないわけではない。 いつもなら音楽を聞いていたような場面でも、気がついたら無音だったというのが正確な表現だろ…
親のしつけの影響だろうか。 私は「ごめんね」と「ありがとう」をよく言うようにしている。 コミュニケーションを円滑にする、魔法の言葉だと思う。 癌による苦痛には、身…
癌になる前からよくしてくれていた先輩から、連絡がきた。 「ちょっと実験してみない?小さな論文を投稿しよう」 実は3年前から別のプロジェクトに誘ってもらっていて、育…
動悸がした。 運転中に、突然ワンセグの音声がはじまって、私は驚いた。 何も操作していないのに。 「津波が来ます。高台に避難してください」 津波?地震は来ていないけ…
「綺麗な髪の毛ね。 」 はじめて訪れた美容院でそう言われて、涙が止まらなかった。 抗がん剤の副作用で脱毛し始め、髪の毛が部屋中に落ちるようになった。 抗がん剤でも1…
復職を決めた。 治療直後は、「働きたくない」と後ろむきだった気持ちが、やっと前を向いた。 12月に治療が終わり、1月から復職しようと思っていたが、1月になっても2月に…
その日、私と彼女は名古屋駅で味噌煮込みうどんを食べていた。 つい30分前にはじめましての挨拶を交わしたばかりだった。 話ははずむのか、どんな人なのか。 楽しみな気持…
友達に癌のことを話すときはいつもドキドキする。 自分が傷つくかもしれない不安と、友人が一人減るかもしれない不安と。 癌はそれまでの人間関係を変える。 前よりも仲良…
前回の続きの話。 癌封じ寺に一緒に行ってくれた友人が、突然家を訪ねてきた。 少し照れくさそうに「ちょっと近くまで来たから、これ」と、紙袋を渡された。 中に入って…
2つのかわいそう もともとひねくれている性格の私は、癌になってからさらにひねくれた。 若いのに癌になって、自分は本当にアンラッキーだしかわいそうだなって思ってい…
8ヶ月ぶりに職場へ顔を出した。 その日は年に数回しかない特別な講演会の日で、よかったら、と声をかけてもらった。 通勤途中によく寄っていたファミリーマートは、潰れ…
通院日だった。 相変わらず血管は見えなくて、検査技師さんに駆血帯を強く締められる。 今日も2回コースか、と泣きたくなったが、なんとか1回目でとってくれた。 血液検…
2024年5月15日 22:57
悪い知らせはいつも、夫がいない日に限ってだった。流産をしたとき夫は韓国にいたし、子宮外妊娠が発覚して緊急手術が必要と言われたときは九州にいた。がんと告知された日は、仕事で北海道へ行かねばならず、悲しみと不安で押しつぶされそうな私を置いていった。遊んでいたわけではなく全て仕事だったのだから仕方のないことなんだけれど、「肝心な日にはいつもいない夫」として私の認識が定着しつつあった。まあ、肝
2024年4月21日 22:33
抗がん剤の3,4クール目が辛かった話を書いたが、5,6クール目あたりになると今度は再発の恐怖が襲った。再発するかもしれない。再発したら、また髪が抜ける。再発したら、また辛い治療が待っている。再発したら、きっと子どもが大人になるのを見ることは厳しい。再発のことを考えると憂鬱になる。できたら考えたくはない。でも、考えてしまう理由がある。覚悟しておきたいのだ。再発するかもしれない
2024年4月20日 23:21
今期の朝ドラがおもしろい。日本初の弁護士を描いた「虎に翼」は、伊藤沙莉が主演を務める。素直で、思ったことはストレートに言う主人公の寅子のまっすぐな喜怒哀楽が気持ちいい。同じ法科女学部に通うよねさんは、いつも冷たく周りとも距離を置いている。彼女は今でいうキャバクラのような場所でボーイをしているのだが、そのお店に寅子たちが行く機会があり、そのときにマスターから「聞く? 彼女が何で弁護士を目指
2024年4月17日 23:56
嬉しかった言葉は、周りの人が癌になってどう声をかけていいかわからない人の参考になるように、嫌だった言葉は言わないように+私の浄化のために。癌になってから言われて嬉しかった言葉と嫌だった言葉を列挙します!!!嬉しかった言葉・謝らないで癌になって、自分のせいじゃないのに家族にも職場にも謝ってばかりで辛かったときに職場の同僚に言われました。「申し訳ないと思うけれど、自分も一番の被害者。休
2024年4月11日 23:29
癌を告知されてから、音楽を聞かなくなった。聞きたくないわけではない。いつもなら音楽を聞いていたような場面でも、気がついたら無音だったというのが正確な表現だろうか。通勤中は車を運転しながら、最近流行しているJ-POPを聞くのが日々の習慣だった。けれど、癌を告知されて以降、運転中は無音だった。目的地近くになって、音楽を聴いていなかったことに気が付く。流行りの音楽もわからなくなっていた。
2024年4月4日 14:40
親のしつけの影響だろうか。私は「ごめんね」と「ありがとう」をよく言うようにしている。コミュニケーションを円滑にする、魔法の言葉だと思う。癌による苦痛には、身体的苦痛、精神的苦痛、社会的苦痛、そしてスピリチュアルペインがある。もちろん身体的にも精神的にもかなり辛かったが、私にとってはスピリチュアルペインが一番苦しかった。「家族や職場の人に迷惑をかけている」「自分は何もできなくて無価
2024年4月3日 14:58
癌になる前からよくしてくれていた先輩から、連絡がきた。「ちょっと実験してみない?小さな論文を投稿しよう」実は3年前から別のプロジェクトに誘ってもらっていて、育児が一段落した1年前にイエスの返事をした。癌が発覚したのはその直後だった。根気強く勧誘し続け、私のキャリアを気にかけてくれた彼の好意を、また無碍にしてしまった。仕方のないことなのだけれど、申し訳なさはいつまでも拭えなかった。仕事
2024年4月3日 14:43
動悸がした。運転中に、突然ワンセグの音声がはじまって、私は驚いた。何も操作していないのに。「津波が来ます。高台に避難してください」津波?地震は来ていないけれど…と聞き耳を立てていると、どうやら沖縄の話らしい。地震や津波警報が発表されると、自動でワンセグに切り替わるようになっているようだった。「津波!避難!」「つなみ!にげて!」「EVACUATE!」黒い背景に黄色の文字で危険を
2024年4月1日 00:06
「綺麗な髪の毛ね。 」はじめて訪れた美容院でそう言われて、涙が止まらなかった。抗がん剤の副作用で脱毛し始め、髪の毛が部屋中に落ちるようになった。抗がん剤でも1割の人は脱毛しないという。「もしかしたらその1割に入れるかもしれない」という私の淡い期待は、抜け落ちる髪の毛と一緒にこぼれ落ちていった。よく髪を褒められた。自慢のロングヘアだった。子どもが産まれてドライヤーで乾かす時間を面倒
2024年3月30日 23:34
復職を決めた。治療直後は、「働きたくない」と後ろむきだった気持ちが、やっと前を向いた。12月に治療が終わり、1月から復職しようと思っていたが、1月になっても2月になっても、心は重いままだった。「私のペースで」と、上司が私の意思と気持ちをなにより尊重してくれたことがありがたかった。プレッシャーをかけたくなるような状況だったかもしれないが、一度もそれを感じなかった。私は自分の意思で戻りたいと
2024年3月28日 23:12
その日、私と彼女は名古屋駅で味噌煮込みうどんを食べていた。つい30分前にはじめましての挨拶を交わしたばかりだった。話ははずむのか、どんな人なのか。楽しみな気持ちと、少しの不安な気持ちを抱えて銀時計の前で待っていた。彼女と知り合ったのはSNSでだった。癌種は違ったが、同じ時期に手術と抗がん剤治療を受けていたからなんとなく親近感を覚えた。彼女が頑張っていることが、支えだった。辛いのは自
2024年3月25日 13:36
友達に癌のことを話すときはいつもドキドキする。自分が傷つくかもしれない不安と、友人が一人減るかもしれない不安と。癌はそれまでの人間関係を変える。前よりも仲良くなる人もいれば、距離を置きたくなる人もいる。癌をカミングアウトするときは「友人選考試験」のようだと思う。昔からデリカシーのない人だった。あまりよく物事を考えずに、思ったことを口にしてしまうタイプ。時間にもルーズだったが、彼女
2024年3月14日 10:47
前回の続きの話。癌封じ寺に一緒に行ってくれた友人が、突然家を訪ねてきた。少し照れくさそうに「ちょっと近くまで来たから、これ」と、紙袋を渡された。中に入っていたのは、癌封じ寺のお札とお守りだった。彼女は「近くまで行く用事があったから」と言っていたが、きっと片道1時間かかるそのお寺まで、これをわざわざ買いに行ってくれたのだと思う。彼女の家から私の家は、反対方向に1時間。ざっと3時間以
2024年3月13日 12:00
2つのかわいそうもともとひねくれている性格の私は、癌になってからさらにひねくれた。若いのに癌になって、自分は本当にアンラッキーだしかわいそうだなって思っていたが、他人にはかわいそうと思われたくはなかった。癌になってから気がついたのだが、「かわいそう」という言葉は大きく分けて2つのタイプがある。ひとつは「かわいそうに(できることなら変わってあげたい)」という気持ち。これは心から慈しんで
2024年3月13日 00:00
8ヶ月ぶりに職場へ顔を出した。その日は年に数回しかない特別な講演会の日で、よかったら、と声をかけてもらった。通勤途中によく寄っていたファミリーマートは、潰れて平地になっていた。通勤路にいる、おばあちゃんと幼稚園バスを待っている4歳くらいの女の子はだいぶ大きくなっていた。自分のデスクにあるカレンダーは6月のまま。机の上は8ヶ月分の書類の山。デスクにためこんでいたお菓子は賞味期限がと
2024年3月8日 23:15
通院日だった。相変わらず血管は見えなくて、検査技師さんに駆血帯を強く締められる。今日も2回コースか、と泣きたくなったが、なんとか1回目でとってくれた。血液検査の結果が出るまで1時間。この待ち時間は心がざわざわ、そわそわする。診察室に入ったら、「最近体調はどう?」という話から始まるのだけれど、患者側からしたら早くこのドキドキから解放されたい。大丈夫だったのなら、開口一番「大丈夫だっ