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春海
2020年11月13日 00:28
「俊哉く―ん。まだー? トイレ、長くねー」 だらだらと潔くない。やっと終わって、おれは手を洗って、外で待っていてくれた翼と継介と合流する。「何でそんな長いの?」 そう言って、翼はおれに教科書とエプロンを渡す。次の授業は、家庭科室で調理実習だ。「知るかよ。最近、長くなってきた。不思議だなあ」 三人で並んで、家庭科室へと進んでいく。「老化の始まりじゃね?」 継介が思いついたように、言った
2020年11月12日 23:47
学校近くのファーストフード店に翼と継介を呼んだ。偽装「お泊まり」を手伝ってもらったから、お礼としておごるためだ。「マジでおごってくれんの?」 愛美と同じバスケ部の練習を終えたばかりの継介が尋ねる。汗で髪形が落ち着いている。「ああ、ジュースなら」「ジュースだけかよ!」 ウチはそんなに裕福じゃねえんだよ、という言葉は飲み込んだ。不景気な話してもしょうがない。「じゃあ、一番高いのにしようぜ
2020年11月11日 21:18
「なあ、炊飯器が五千円って安いの?」 日が暮れて、駅まで向かっている途中で、翼が不意に言った。彼の視線の先を見ると、電気屋の店先に「大安売り!」と冠された炊飯器が並べてあった。パソコンとか、デジカメが店先に並んでいる光景は、よくお目にかかるが、炊飯器はあまりない。だから翼も、興味を持ったのかもしれない。「さあ? ものによるんじゃね?」「おれは高いと思うけどな」継介は反対のことを言う。「だっ
2020年11月10日 01:07
雲のかかった月がきれいな夜だった。ラコステの靴音を自慢するように響かせながら、駅前をうろついた。特に用事もないけど、家に遅く帰るのが習慣みたいになっているから、なかなか帰る気にならない。稀に早く帰ると、親に怪訝な顔をされるし。口癖のように早く帰って来い、って言うくせに。 交番を通りかかるときに、俯きがちだった頭を上げた。夜中に出歩いていると、声をかけられるときもある。でも、堂々としてればどう