流行語 (1分小説)

【2018年 年末】

明日は、年に一度の流行語収集日。

ズボラな性格で、何年間も、古い言葉を捨てず、クローゼットの奥にしまいこんできた。

今年こそは整理しないと。結婚も、ひかえているし。

クローゼットを全開。半透明のビニール袋の中に、使わない言葉たちを、詰めこんでゆく。

ホコリだらけの『おっはー』。19年も前のやつ。

『リベンジ』『なんでだろう~なんでだろう~』『萌え』『倍返し』『

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オーパーツ (1分小説)

「お前のイタズラか?棺の中に、単3電池が入っていたぞ」

ホワイト教授は、ファラオの棺から、SOMYと印字された電池を4つ取り出した。

「いいえ」

「じゃ、どうして、何千年も前に作られた棺の中から、電池が出てくる?今、世界で初めて、オレたちが棺を発見し、オレたちが開けたのに」

教授が、派手なロレックスをつけた腕で、棺をコツコツと叩いた。

「まてよ。これは、もしかして、オーパーツ(その時代の

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ドーピング (1分小説)

「確実に、オリンピックで金メダルは取れるが、5年後に死ぬ薬があったら、あなたは服用しますか?」

という問いに、オリンピック選手の53%が「YES」と答えたそうである。 (2004年 調査)
                                

ここは、鏡張りの個室トイレ。係員が見つめる中、私は、自分の尿をカップに採取した。

「ハイ」
平静をよそおい、係員に手渡す。

コーチは

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118歳 (1分小説)

それは、予期せぬ出来事だった。

「あなたさまが、今年、118歳になられる石田芳吉さんですよね?」

市の職員が、いきなり石田家にやって来たのだ。

「……」

「住民票によると、芳吉さんは、1901年、明治34年に誕生。総理大臣だった、故・佐藤栄作さんと、同じ年に生まれたということですが」

「あ、そう」

職員から頂いたまんじゅうを食べると、庶民的で素朴な味がした。

「失礼ですが、ご本人様で

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夜道の目 (1分小説)

腕時計を見れば、午前0:00。

女は、暗い夜道で、自分を見つめる、いくつもの目を感じた。

小走りしながら、何度もふり返る。

「やっぱり、残業を断ればよかった」

親友に電話をする。

「誰かが、私をジーッと見ているような気がするの」

低い声が返ってきた。
「ストーカー?元カレかもよ」

女は、バッグを胸に抱えなおした。

「違うと思う。たぶん複数の人。さっきまで、何も感じなかったのに」

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嫁候補 (1分小説)

ひとり息子が、金髪の、ドス黒い肌をしたギャルを連れてきた。

はるか昔、渋谷でこんなコを見かけたことがある。

『マンバ』『ガングロ』、そんな呼び名だった。全滅したと思っていたが。

息子は、このコと我が家に住むのだと言う。

「そんなの嫌だわ」

若いコを、イジメようというのではない。

私も、姑にイジメられたクチだから、息子の彼女や嫁になる人とはうまくやっていきたいと、思っていた。

しかし、

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パパラッチの夢 (1分小説)

『俳優の江藤達也(27)と、アイドルのRIE(19)に不倫疑惑 』

職場のPCに寄せられた、匿名のメールを見て、私は、仕事の準備にとりかかった。

本音を言うと、20も30も年下の有名人の恋愛なんて、ぜんぜん興味はない。

だけど、この手の話題はカネにはなる。

今回は、人気俳優と清純派のアイドル。スクープになるに違いない。

黒の皮バッグに、小型カメラをしのばせると、2人が密会に使うという、シ

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ありがとうございます。
11

ベルマーク (1分小説)

院長が、「ベルマーク1000枚で、小学校のピアノが買える」と言ったから、みんなで必死になって作ったんだ。

でも、きょうの集会で、残念な報告があった。

「2枚足りず、鍵盤が1つ欠けたピアノしか、買えなかったそうです」

話によると、真ん中のファの音が足りなかったらしい。そんなの、ピアノでも何でもない。ただのガラクタだ。

後ろで、三角座りしていたサトルが、ボクをつついた。

「オレらを担当してい

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タコ足 (1分小説)

タコは、他の魚に、足を食べられた場合は再生できるが、ストレスで、自分の足を食べてしまった場合は、二度と元に戻らないという。

「西岡くん、また、ひとケタ間違ってるじゃないか!」
課長のどなり声が、経理課にひびく。

オレは、ダランと伸びきった自分の足を一本つかみ、口へ持っていった。

ムシャムシャムシャ。

極度のストレスを感じると、いつも自分の足を食べてしまうのだ。
「どふも、すひまへん」

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10

波乱の幕開け (1分小説)

「キミは、この母親のもとに生まれて、本当に幸せな人生を送れると思う?」

せまくて、暗い羊水に浸っている相方に聞いた。

一歩外へ出れば、ボクらを育ててくれるのは、未亡人のママ。苦労は目に見えている。

「うん。お腹の中で、こうして双子の兄弟にも出会えたわけだし。君は、どうして、この母親を選んだの?」

ボクは、多少クサいが正直に答えた。

「愛しているからだ」

【翌朝】

オギャー、オギャー!

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