2ミリ浮く人 (1分ショートショート)
車掌をしていると、毎日、色んな乗客に出会う。
今日は、ホームで電車を待っている人の中に、不思議な男性がいるのを見つけた。
2ミリほど、宙に浮いているのだ。
「ドラえもんみたいですね」
思いきって話しかけてみる。
「よく気が付きましたね」
その人いわく、強力なS極人間らしい。
「北極もS極だから、北半球にいると反発して、地上から少し浮いてしまうんです。
逆に、南半球では、足が地面に付いたまま動けなくなるから、一生行けない」
他にも、「足跡も付かないし、足音もしない」「ルームランナーで走るのは、至難の業」「地震を体感したことがない」など、「浮く人あるある」の話をしてくれた。
ホームに電車が入ってきた。
「では」
彼は、軽く会釈をして乗り込んだ。
私は、乗降の案内、信号確認、アナウンスなど日常の業務に戻り、ふと思った。
あの人、リニアモーターカーの中で、どうやって過ごしてるんだろう。
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