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三ツ星★★★子供食堂

2030年。

日本国内に子供食堂が乱立し、競争は激化。

大人たちは、クラウドファンディングで多額の寄付金を集め、貧困層の子供たちに、おいしくて豪華な料理を提供し、ネットで拡散してもらうことに必死だった。

昼夜休みなく働く、シングルマザーの元で育てられた小学一年生の俊介が、この街に越してきた時、彼は、おとなしくとても痩せていた。

しかし、子供食堂で振る舞われるご馳走を、同じ境遇の子供たちやスタッフと食べるうちに、明るく、健康的な男の子に変わっていった。

「ここの食堂はおいしいね。まずい学校給食や、ひとりで食べる、家の冷えたご飯とは違う」

【10年後】

17歳になった俊介が、久しぶりに子供食堂へやって来た。

「子供の頃、豪華でおいしい料理を、安く食べさせてくれてありがとうございました。お陰様で、来年、大学生になれそうです」

シェフは言った。

「毎日のように、この食堂に来てくれてたよね。こちらこそありがとう。
実は、ステーキは大豆ミート、フォアグラは豆腐、キャビアは着色したキヌアだったんだけど」

原価を抑えて、健康にいい食事を考えていたのだ。

「僕も、管理栄養士や調理師免許を取得して、同じような料理を学校給食で提供してみたいです」

俊介は目を輝かせて言った。


シェフは、心の中で思った。

父親のオレと、同じ道を歩むことになるなんて。


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