作品解説

作品解説「The Song From The Beyond 1,2」

「Beyond」というのは「あちら側」とか「向こう側」のことです。
生と死のはざまには、どうしても超えられない壁があります。
幽霊というのは、それでもその壁を越えたいという人間の気持ちの表れなのではないでしょうか。
亡くなった人には、もう会うことはできない。
しかし、だからといって故人のことをきれいさっぱり忘れられるかと言うと、そうもいかない人の方が圧倒的に多いのです。
人の死は遺されたものにとっ

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作品解説「中陰の恋文 壱・弐」

「中陰」は仏教用語で生と死のはざまにいる存在、またはその期間のことですが、私はこれを「幽霊」と結び付けて考えました。

ちなみに、日本では仏教と幽霊の繋がりは深く、お寺によっては幽霊画がたくさん収蔵されていたりします。谷中の全生庵さんですとか、有名ですね。

先ほどお話した「はざま」の存在としての幽霊を、ここでも表現しました。
生きておらず、死んでおらず、そういう状態に置かれたとき、私は何を思うだ

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作品解説「雨晒しのスクリプト」

皆さん、こんにちは。
お久しぶりです。

noteは今まで曜日ごとに定期更新して参りましたが、より自由な表現を求めて、これからは不定期更新とさせていただきます。

今回はスペシャル企画!
「午睡の夢のファントム」のオープニングパーティで行った作品解説のテキストを三日間連続で掲載します!

まずは「雨晒しのスクリプト」から。

人間が生きて死んでいくということに関しては、わかっていることもありますが

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5章 おわりに|ニューロマン都会編

修了作品の「ニューロマン」は、2章から4章で述べた都会の生活の中で感じてきた現代の問題点について自身のライフスタイルを用いて提案していく表現方法である。

「都会編」では営業時代に現代社会に疲れ、高度経済成長期に憧れるようになった私が、過去が良かった時代だとするならば今日より明日がもっと悪くなるばかりだということに気づき、高度経済成長期のまぼろしを売る屋台を作って街中に飛び出して仲間を見つける。誕

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†carp

撮影から完成まで9日間、僕の制作では最も短期間で完成した写真。 そんな短期間で仕上がったはもう長いこと主題として考えていた“デカダンス”の光景であったからである。ここでいう“デカダンス”とはユイスマンスやアルトーの描いたそれであることは明記しておきたい。日本の文化、風土におけるデカダンスの「庭」を描くことができないかと思案していた。豪奢な混沌、行き過ぎた成熟、人工の自然、活き活きとしたグロテスク.

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†deer

この覚満淵の風景を見たときにふと思い立って鹿をあしらってみた。吹雪いた湿地帯の墨絵のような光景、不鮮明な視界はおおいに思索の助けとなった。
それは大抵の場合、人間の視覚よりも多くのディテールが写っているという現代の撮影機材の秀逸さに引きずられるようになった解像力による“驚異の世界”へのアンチテーゼについての考察するに至った。
鹿は予兆の象徴として用いたが、そのことに根拠や由来の類があるわけではない

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†rhinoceros

ありえないことではあるけれど、日本のありふれた風景に犀がいる風景が頭の中に浮かんだ。それがずっと頭から離れず様々な土地へ行き、頭の中に浮かんだイメージと同じ風景を探した。動物園の犀、長瀞の河原、箱根の芒、日光の森をベースにイメージ通りの風景を制作した。一本の芒、岩の形、葉の一枚に至るまで完全にイメージ通りになるよう、数百枚の撮影した写真から注意深く必要な要素を切り抜き、形状を合わせて合成していく作

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Subterranean

僕の育った家の地下室は奥半分が父の書斎でした。本棚に仕切られた手前のスペースには小さなソファとテーブルが置かれ、三方の壁には本棚が並んでいました。蔵書のほとんどは翻訳家であった明治生まれの祖母のものと、映画製作を生業にしていた父の資料、仏文科を卒業した母の本でしたが、小学生の頃には本棚の1番下の段(こどもですから)に自分の本を置くことを許されていました。

地下室特有のひんやりとした空気は夏には過

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(5)コトバメシの作品解釈

(4)からとても日が空いてしまいました。卒業制作の「コトバメシ」の作品解説をして、このマガジンを終わりとしたいと思います。

作品の流れは、色々な具材を使って料理を作っているアニメーションです。メニューは「カレー」です。

カレーを選んだ理由は、日本の一般的な料理No1、また、大体の人が作り方を知っていると思っているからです。

この作品は、見た人がどのように感じ取ってもらっても
それが「正解」で

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「すべての孤独に花を」

「すべての孤独に花を」

こんにちは。
今日は、拙作「すべての孤独に花を」についてお話ししたいと思います。

これは昨年春の展覧会でとても好評を得た作品で、今はコレクター様の手に渡っています。

技法

「すべての孤独に花を」は、油彩画です。
キャンバスに絵の具を塗り、その生乾きの絵の具をパレットナイフで削り、また塗りつける作業を繰り返すという技法で描かれています。

この技法で描くことにより、雨

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