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【国試対策】 鼓索神経/鼓室神経/舌神経/大・小錐体神経...って何よ?

北海道・若手治療家コミュニティの
花田隼人@hokkaido_wakate)です。

・鼓索神経
・鼓室神経
・舌神経
・大錐体神経
・小錐体神経

これらについて、

どの脳神経に属し、
どのあたりを走行し、
何を支配するか?

パッと答えられる方は
意外と少ないものです。



このnoteでは、

これらの混同しやすい神経を
きちんと理解
してもらえるように解説します。


苦手な方は
ぜひ最後までお読みください。
 




 
 

なぜこれらの神経が苦手になるか?

「脳神経を全部言う」
という課題ならほとんどの人が
できるかと思います。

嗅神経・視神経・動眼神経・滑車神経・三叉神経・外転神経・顔面神経・内耳神経・舌咽神経・迷走神経・副神経・舌下神経

これらは順番通り全部言えるけれど、
その細かい区分になると分からなくなる。

そんな方が多いはずです。

しかも
「鼓室神経」「鼓索神経」
「大錐体神経」「小錐体神経」
「舌神経」「舌咽神経」「舌下神経」など

似たような名前の神経が
ごちゃごちゃと出てきます
から、

『語呂合わせ』で対応できない
より細かい理解は、

教科書を読んで書かないと
整理が出来ずに覚えられません。


つまりこれら神経は暗記ではなく、
理解するための勉強に
時間をかけるべき
単元です。






まず三叉神経を理解する

脳神経を理解する上で大切なのは、
どこまでが頭蓋内で
どこからが頭蓋外かを区別すること
です。


よってこれから示すイラストは
頭蓋内または比較的身体内部の神経を点線、
頭蓋外の神経を実線
としています。

また、
赤を運動枝
緑を感覚枝
青を副交感神経枝
としています。



三叉神経は橋から伸びる脳神経で、
脳神経の5番目にあたります。

橋を出たあとは
頭蓋の内部で三手に分かれ、
上眼窩裂、正円孔、卵円孔を通り
それぞれ顔面部に近づきます。

この分岐した時点から
眼神経、上顎神経、下顎神経
名前が変わります。

点線は頭蓋内部を走行、実線は頭蓋外を走行する
緑は感覚神経、赤は運動神経

この時点では
まだ頭蓋の内部を走行しますが、 

上眼窩裂を通過した眼神経は眼窩上孔から、
正円孔を通過した上顎神経は眼窩下孔から、
卵円孔を通過した下顎神経はオトガイ孔から
それぞれ体表に姿を現します。


下顎神経には
舌前2/3の感覚を支配する神経が含まれます

下顎神経のうち
咀嚼筋を支配する神経は
卵円孔を通過した後に
枝分かれして各筋へ向かいます。

中でも側頭筋を支配する線維だけは
頭蓋上方に向かって反転して伸びていきます。







顔面神経と鼓索神経を理解する


顔面神経は橋から伸びる神経で
脳神経7番目にあたります。

橋から頭蓋内部で内耳孔に入り
そこから顔面神経管を通り、
茎乳突孔から体表へ出ます。

顔面神経は、
表情筋を動かす運動神経
舌の味覚を感知する感覚神経
涙腺と唾液腺に伸びる副交感神経

以上3種に分かれます。

運動神経は
5方向に枝分かれして表情筋を支配します。

頚部に向かって伸びているのは
「広頚筋」を支配する神経です。
広頚筋は表情筋なのでお忘れなく。

茎乳突孔を出たあと下行してから
枝分かれしますが、

その際「耳下腺」を通過します。

通過するだけです。
耳下腺を支配はしません。

顔面神経のうち
感覚神経と副交感神経は

内耳孔から内耳道へ入るものの
茎乳突孔からは出ずに、
頭蓋内部を走行します。

涙腺を支配する副交感神経は
大錐体神経と名前を変えて、
翼口蓋神経節を作ったのち涙腺を支配します。

「翼口蓋」とは口蓋骨垂直部、
上顎洞後壁、蝶形骨で作られる空間のことで
翼口蓋神経節はここに存在するため
呼び名がつけられています。

顎下腺、舌下腺を支配する副交感神経は
顎下神経節を作ったのちに
上述した唾液腺を支配します。

感覚神経は顔面神経管のなかで
膝神経節を作った後
舌まで向かって伸び
舌前2/3味覚に関わります。

この顎下腺と舌下腺を支配する副交感神経と、
舌前2/3の味覚を伝える感覚神経が
合わさって伴走する部分を
「鼓索神経」と呼びます。



また顔面神経の通過孔についても
苦手だという声をよく聞きます。

顔面神経の通過孔として
・内耳孔
・内耳道
・顔面神経管
・茎乳突孔
の4つがありますが、

それぞれどの位置関係に
あるのかを把握しなければ、

この4つが
頭の中でごちゃごちゃになるだけです。


顔面神経は、橋から出たのち
内耳孔を通ります。

この内耳孔は
「内耳道の入り口部分」

を指す言葉です。

内耳孔から内耳道に入る
ということです。

内耳道を通過したのち、
涙腺を支配する神経は
別の道を進むことになります。

残った神経は
「顔面神経管(側頭骨)」を進みます。

顔面神経管を途中まで進むと、
鼓索神経が枝分かれして
舌に向かって別の道を
進むことになります。

そして最後に残った運動神経線維が
顔面神経管の出口である「茎乳突孔」から
頭蓋外へ出てくるように進みます。

つまり
それぞれの孔が通すのは、

内耳孔と内耳道
=すべての顔面神経

顔面神経管
=表情筋の神経と
 舌前2/3味覚と顎下腺・舌下線の神経

茎乳突孔
=表情筋の神経

ということになります。








舌神経について理解する


さて、

ここまでで三叉神経と
顔面神経について理解しました。

【三叉神経】
・眼神経  顔〔上〕の感覚
・上顎神経 顔〔中〕の感覚
・下顎神経 顔〔下〕の感覚
      舌前2/3 の感覚
      咀嚼筋

【顔面神経】
・大錐体神経 涙腺の支配
・〔運動神経〕表情筋
・鼓索神経(伴走部)
  →〔副〕顎下腺・舌下腺
  →〔感〕舌前2/3の味覚


このうち、
舌部に伸びていく神経を
太字にするとこうなります。↓


【三叉神経】
・眼神経  顔〔上〕の感覚
・上顎神経 顔〔中〕の感覚
下顎神経 顔〔下〕の感覚
      舌前2/3 の感覚
      咀嚼筋

【顔面神経】
・大錐体神経 涙腺の支配
・〔運動神経〕表情筋
鼓索神経〔副〕顎下腺・舌下腺
     〔感〕舌前2/3の味覚


この舌部に向かう
三叉神経〔舌前2/3の感覚〕
顔面神経〔顎下腺・舌下腺〕(鼓室神経)
顔面神経〔舌前2/3の味覚〕(鼓室神経)
 
の3つが伴走する部位を、

まとめて「舌神経」と呼びます。




鼓室神経と小錐体神経を理解する


さて残るは
「鼓索神経」「小錐体神経」です。

この2つがよく理解されないのは、
「鼓索神経」←→「鼓室神経」
「小錐体神経」←→「大錐体神経」
といったように、

似たような名前の神経と
混同してしまうからです。

鼓室神経と小錐体神経を理解するには
舌咽神経の理解で事足ります。

舌咽神経は延髄から伸びる
9番目の脳神経です。
延髄から伸びた神経は頚静脈孔から外へ出ます。

舌咽神経は
耳下腺を支配する副交感神経線維と

舌の後ろ1/3の味覚触覚
どちらも支配する感覚神経と


頚動脈洞・頚動脈小体を
管理する感覚神経
に分かれます。


舌咽神経は
脳神経の並びを踏まえると、
7:顔面神経(内耳孔)
8:内耳神経(内耳孔)
9:舌咽神経
と、内耳を通る神経の
並びにある
ことが分かると思います。

よって、
舌咽神経もざっくり
「耳」の近くを通ることとなり、

頚静脈孔を出た副交感神経は
中耳の「鼓室」を通ります


これが鼓室神経です。

中耳鼓室を通過したのち
耳下腺へと向かいますが、
ここで神経の呼び名が変わり
耳下腺へ向かう部分を
小錐体神経と呼びます。

小錐体神経は「耳神経節」を作り
耳下腺を支配します。


恐らく、

大錐体神経と小錐体神経は
標本解剖時に近接した位置に合った
2つの神経を見つけて、

それぞれのサイズ感から
「大」「小」と冠して
名前を決めたのではないかと思います。

そのために、
顔面神経と舌咽神経という
まったく機能的な由来は異なる両神経に
「大」と「小」というセットのような神経が
分かれて属してしまったのではないかと
私は考えます。



解剖学用語は割とこのような
「切って開いたらそうだったから
その通り名前を付けた」
といったような名前が意外と多いです。

舌神経も
「舌に向かって伸びているから」
という解剖時の状態で名前をつけたものの、

実際は複数の
脳神経の混合線維なわけですから
学生の誤答を誘発するように
なってしまっています。

※あくまで花田の推測です。







まとめ


鼓索神経
顔面神経のうち、舌前2/3の味覚を支配する感覚神経と、顎下腺・舌下線を支配する副交感神経が口腔方向に向かって伴走する部分のこと。

舌神経
三叉神経のうち、下顎神経に含まれる、舌前2/3の感覚を支配する感覚神経が鼓索神経に伴走する部分で、この3種を合わせたもの。

鼓室神経
舌咽神経のうち、耳下腺を支配する副交感神経が中耳の鼓室を通過するときの呼び名。

小錐体神経
舌咽神経のうち、耳下腺を支配する副交感神経が中耳の鼓室を超えてからの呼び名。鼓室神経に連続する。耳神経節を作り、耳下腺を支配する。

大錐体神経
顔面神経のうち、涙腺を支配する副交感神経が内耳道より出て眼部へ向かう際の呼び名。翼口蓋神経節を作り、涙腺を支配する。



以上です。

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