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Internet of Dogs の惑星へ:台湾の農村で犬の位置情報を考える

台湾の農村を歩くと、たくさんの犬に出会う。人間に対してフレンドリーな犬もいるが、敵対心の強い犬もいる。時には、十字路で四方を犬に取り囲まれることもある。まさしく四面楚歌である。さて、どうする? イヌの集会台湾の農村地帯を歩いていると、大勢の犬が集まって昼寝をしている姿を見かける。ある町では、まるでネコの集会を開くかのように、犬達が集まってのんびりとくつろいでいた。 集会の場所は、新しい橋が架けられたことで人通りが途絶えた、古い橋のたもとの広場であった。人が来ないので、犬広

    • 52赫兹我愛你 台湾85世代は今

      フォルモサ(麗しい島)の異名を持つ台湾には絶景の自然がひろがる。ゆえに台湾映画には山紫水明の風景と、昔ながらの暮らしが描かれてきた。だが、大都市の暮らしはどうだろう。対照的な2本の映画に、台湾の今と昔を見る。 奄美の声今をさかのぼる1999年ごろ、屋久島や甑島など九州の離島を訪ねて、滞在型エコツーリズムの研究をしているグループがあった。チームを率いるのは、ゴミ博士のあだ名を持つ環境経済学者であった。 ある日、ゴミ博士は奄美へ調査に出かけた。ふと立ち寄った店で、美しい唄声を

      • 延世大の野外劇場を吹き抜けるJeJuの風

        東アジア諸国の映像コンテンツを視聴していると小さな発見がある。ふと見かけた短い映像には、学園祭のステージでアーティストと観客が一つになる光景が映し出されていた。この一体感はどこからやってきたのかと興味が湧いて、映像の背景を探ってみることにした。 AKARAKA(アカラカ)その映像は、延世大学校の公式チャンネルにあった。 ヨンセイの5月の学園祭はAKARAKAという愛称で呼ばれ、野外劇場ではアーティストがコンサートを開く。 2017年のAKARAKAのゲストは、歌手のイ・

        • オルタナティブな「遠くの領主」

          木村尚三郎氏の著作をヒントに、国家とは何かを問う。 国家のバーチャル化仮想通貨の登場をきっかけに、近代以降の国民国家の概念が希薄化するのではないか。そんな論点が語られている。 遠くの領主、遠くの領主この論点を考えるためのヒントとなりそうなのが、冒頭で紹介した木村尚三郎氏の文章の一節である。 封建社会の終焉は、土地からの自由をもたらしたが、万物から自由になったわけではない。近くの領主から、遠くの領主へと、守り神を替えてみたに過ぎないというのだ。 こうした緩やかな変化とい

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          カール大帝の貨幣体系

          中世ヨーロッパ世界における貨幣の体系を定義づけたのは、フランク王国のカール大帝であった。イタリア語で「リラ」、フランス語は「リーヴル」である。 カール大帝中世ヨーロッパ世界において、貨幣制度の体系が具現化されたのは、フランク王国のカール大帝の時代であった。次のような貨幣体系が出来上がった。 リラ・リーヴル貨幣体系というのは聞き慣れない用語であるが、各国での呼称をみると、かつて慣れ親しんだ呼び名であることが思い出される。 各国における通貨の呼称は異なるが、西欧中世において

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          クリプト都市ツークの煙突—ブロックチェーン村を開拓する人々

          スイス中央地方の都市ツークはクリプトバレーを自称しており、ブロックチェーン関連のイベントが頻繁に行われている。そんなイベントに集う参加者たちの人間模様と、ツークの研究街区の営みを観察する。 ツーク駅の西口を出ると、駅の目の前には住宅街が広がる。生垣の間を抜けていくと、学園都市のような建物が姿を現す。 ガラスを多用した明るい曲面壁の前には、白いパラソルが並べられている。モノトーンの無機質な建物群に、移動店舗の看板が色を添える。 常連のお客さんが、ここは美味しいよと勧めてく

          クリプト都市ツークの煙突—ブロックチェーン村を開拓する人々

          クリプト都市ツークを歩く***

          謎の街ツークブロックチェーン産業が中央スイス地方の小都市ツークに集まるようになってから数年が経つ。スイスの数ある都市の中でなぜツークが選ばれるのか。最大の理由が低税率であることは知られているが、それ以外に特段の魅力はあるのだろうか。いったいツークとは、どのような街なのか。事前の知見を持たずに、街を歩きながら理由を探ってみた。 クリプト街おこしツークという小都市がブロックチェーン産業の中心となっていることは、関係者の間ではよく知られている。だが、なぜツークなのだろうか。低税率

          クリプト都市ツークを歩く***

          スイスのツークでテスラタクシーの経営を考える人の話

          クリプトバレースイスのツークという街はブロックチェーン企業が集まるクリプトバレーとして知られる。だが今日は、この街の主要産業ではなく、周辺産業のお話。 大阪に知り合いがいるという、あるドイツ人のドライバーから聞いたお話をご紹介しよう。 ツークへの道スイス国外からツークを目指すルートには、近隣国から国際列車を乗り継ぐ方法と、いずれかの国際空港から陸路で移動する方法等がある。ツークに至近の国際空港としてよく利用されるのはチューリッヒである。 チューリッヒは北部スイス地方の中

          スイスのツークでテスラタクシーの経営を考える人の話

          ウェイクアップ・ネッド......アイルランド映画

          ダブリンを訪れる機会があって、アイルランド映画を何本か見直した。 その一つ。1998年の作品。 Waking Ned (1998)邦題:ウェイクアップ・ネッド ストーリーには触れないが、設定はアイルランド南部を舞台とする。ある目的でダブリンの都会からやって来た人が、鄙びた漁村の住人に翻弄される。 この映画で描かれているのは、ダブリンの都会と地方の漁村との温度差のようなものである。アイルランドの大自然と、教会を中心とした村落コミュニティの姿が映し出される。 タリーモア作

          ウェイクアップ・ネッド......アイルランド映画

          アイルランド・ブロックチェーン・ウィーク(3)知識集積都市への転換

          ダブリンで開催されたブロックチェーン・ウィークをヒントに、アイルランドの国際競争力について考察するシリーズ。 航空機リース産業アイルランドは航空大国である。航空機リース産業の分野では、2017年時点で世界トップ5社のうち、実に3社がダブリンに本部を置いている。 租税条約の見直しこれらの優位性の中でも、アイルランドが世界72か国以上と二重課税協定を締結し、法人税12.5%という魅力的な投資環境を提供してきたことは際立って重要な要素であった。 こうした投資環境から、航空機リ

          アイルランド・ブロックチェーン・ウィーク(3)知識集積都市への転換

          アイルランド・ブロックチェーン・ウィーク(2)デジタル経済の「シティー」

          2019年5月にダブリンで開催された、アイルランド・ブロックチェーン・ウィークをヒントに、アイリッシュ・ベンチャーの可能性を考察する。 国際金融サービスセンターダブリン市内を流れるリフィー川の北岸には、かつて関税埠頭であった地区を再開発したカスタム・ハウス・キーの周辺に、ささやかな規模の金融街が広がっている。 アイルランド・ブロックチェーン・ウィークの開催中には、カスタム・ハウス・キーの中心にあるIFSCビルにおいても、ブロックチェーン関連のイベントが開かれていた。 ア

          アイルランド・ブロックチェーン・ウィーク(2)デジタル経済の「シティー」

          アイルランド・ブロックチェーン・ウィーク(1)ハブを巡る国際間の競争

          アイルランド共和国の首都ダブリンを舞台に、2019年5月、アイルランド・ブロックチェーン・ウィークが開催された。 ブロックチェーン週間ブロックチェーン・アイルランド・ウィークは、2019年5月24日から5月31日までの一週間余り開催された。イベントの主催団体は『ブロックチェーン・アイルランド』であった。 センター・オブ・エクセレンスを狙う主催団体の『ブロックチェーン・アイルランド』は、同国におけるブロックチェーンのエキスパート集団として、2016年に設立された。 『ブロ

          アイルランド・ブロックチェーン・ウィーク(1)ハブを巡る国際間の競争

          徳成按典當業展示館 --- マカオのカジノと質屋の関係性

          煌びやかなマカオの夜景を彩るのは、奇抜なデザインで威圧感を放つカジノ群である。その足元には、カジノを支える周辺産業がある。カジノを陽とするならば、質屋を意味する典當業は、マカオの発展を陰で支える縁の下の存在だった。 リスボアかつてマカオ半島がカジノ産業の中心地であったころ、リスボアはマカオを象徴する建物であった。現在は、埋立地のコタイにもカジノが林立し、マカオ半島とコタイに勢力が分散している。 マカオ南部のコタイ地区やタイパ島から、橋を渡ってマカオ半島へと向かうと、やがて

          徳成按典當業展示館 --- マカオのカジノと質屋の関係性

          マカオ地図の誤差を読む --- 海峡に浮かび上がる予測大橋

          マカオと珠海の間には海峡が横たわり、マカオ半島の内港埠頭から越境航路として海を渡ることができる。マカオのコタイ島と中国の珠海の間には一本の橋が架かる。だが地図を見ると、既に何本もの橋が架かっている。 珠海を臨むマカオは南北11キロメートルほどの特別行政区である。北側のマカオ半島は大陸と地続きであり、南側の島部(タイパ・コタイ・コロアナ)との間は、南北に架かる3本の橋で結ばれる。 南側の島部は、タイパ島・コタイ埋立地・コロアナ島の3地区から成る。コタイ地区の埋め立てによって

          マカオ地図の誤差を読む --- 海峡に浮かび上がる予測大橋

          西灣河電車廠---香港トラムは孤を描く

          香港島を走る二階建てのトラムは、二階建てのバスと並んで香港の風景を形作るのに欠かせない存在である。地下鉄やバスと競合する区間も多いが、どんな人たちが利用しているのか。山道から西湾河車庫まで乗車してみる。 山道トラムは香港島の北西から中環を通って北東へとつながる。一本線の往復なら分かりやすいのだが、路線図を見ると支線もあって、やや複雑である。行き先を確かめずに飛び乗ると、思わぬ場所に着いてしまう。 北西に位置する「山道」停車場から、東向きの「ハッピーバレー」行きに乗車する。

          西灣河電車廠---香港トラムは孤を描く

          収銀車が走る......香港から硬幣は消えるか?

          香港のコインは重く、厚く、かさばる。そんな香港コインを電子マネーに変える便利なサービスがある。それは、タンス預金を一掃し、キャッシュレスへの一歩を踏み出すための現実的なアイデアであった。収集車ならぬ収銀車が団地の広場にやってきて、かさばるコインの山を飲み込む。別名を神沙車とも言う。 硬幣の退蔵紙幣を使って買い物をすると、お釣りの小銭を受け取って、硬貨が貯まっていく。カードと携帯アプリで生活するようになると、小銭入れの出番は減るが、貯まった硬貨はいつまでも減らない。 キャッ

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