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【短編小説】眠らない男① 1,400文字

【短編小説】眠らない男① 1,400文字

ぐうぐう 轟々といびきをたてて眠る男の口は大きく開いて、小ぶりな優子の握り拳ぐらいなら入りそうだった。

男は白目をむいて瞼をぴくぴくとさせ、コメディアンのような古典的なポーズをとってベッドの上に転がって胸板を上下させている。
ホテル備え付けの浴衣がはだけて汗の浮いた胸板がはだけているのが見えた。
時折、ガッと窒息しそうに喉で呼吸をとめるのだが眠りから覚める気配はない。
未明まで激しく抱き合ってい

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短編小説 サンドイッチ 1753文字

短編小説 サンドイッチ 1753文字

恭一はきゅうりとハムとバターの挟まれたバゲットを一口齧ると空を仰いだ。
河の見える10階建てのマンションの自室のベランダで朝ごはんを食べているところだった。
バゲットはアルミホイルに包まれ、コンクリ製の床には缶コーヒーが置かれてある。
厚手の黒いベンチコートを羽織って三月の朝日と微風を浴びながら無心になる至福のひとときだ。

いつもと変わらない日々。
それでいい。
それがいい。

きっと。

筋雲

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desty5 BL R15長編小説 3487文字

desty5 BL R15長編小説 3487文字

desty5長襦袢

甘楽呉服の新社長、甘楽将鬼を路田旅館に迎える日がやってきた。

部屋の修繕工事を終えた業者に佑磨は頭を下げて見送る。
路田旅館 一階と二階の半露天風呂の大浴場にまだ修理が終わっていない箇所があったため、
そこを修理業者に依頼していたのだ。

一階と二階の半露天風呂は一つの長方体の形をしたユニットのような作りのようになっており、本館からは細い渡り廊下を渡って入口まで進むように作

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短編小説 プレーンリンス 2845文字

短編小説 プレーンリンス 2845文字

お湯で丁寧に頭皮を洗うだけで頭皮汚れの七割は取れます。
予洗が大切なのです。
そのあと二回に分けてシャンプー剤を用いて毛先から泡立てて本洗してゆきます
泡立ては二分くらいは必要でしょうか
ゆすぎは慎重にしましょう。後頭部をカッピングしながらお客様に痒いところはないか尋ねながら慎重に行います。

侘田は何度も洗った。講習で同僚や先輩を用いて相モデルで練習した。
時には街ゆく人をモデルとして捕まえてシ

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【短編小説】 愛と勇気と自閉症のテーマ 3871文字

【短編小説】 愛と勇気と自閉症のテーマ 3871文字

じーへいじょうーだーけれどもー いーきていくー
らーんららららー
いってきまーす
たたたた

瑠璃はゲルネイルのエッジにカラーコンタクトを一枚上向きに乗せた。
長さだし部分1cmはあろうネイルなので手加減を誤ったら眼球に突き刺さるだろう。
まあこちとら何年もギャルを伊達にやっていないのでそんな凡ミスはしないが。
自らの黒目部分にアッシュグレーのそれが溶け込んでゆくと、瑠璃は確信した。
「今日は最高

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【長編小説】desty4 BL R-15 8478文字

【長編小説】desty4 BL R-15 8478文字

※注意事項※
ここから先はなんでも許せる方向けです。
リバ、輪姦、近親相姦などその他の描写がでてきます。
苦手な方はご退出をお願いします。

〜人形、身八つ口II〜

夏樹は初夏の朝四時、旅館の客室で使用しているものと同じ二つくっつけた敷布団から上半身を起こした。

辺りは漆の格子で嵌めてある障子から東の光が差し、ほのかに白い。

藤色した縁取りの畳には脱ぎっぱなしの浴衣が踊るように飛んでいる。

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desty3 長編小説 BL R15 9511文字 

desty3 長編小説 BL R15 9511文字 

ー desty 人形、身八つ口ー

『父さん、もうすぐで回診の時間だよ』

佑磨はシワの深いネルシャツをベット柵に巻き付けるようにして、
父、佑吾の閉じた瞼に話しかけた。

電動ベッドのリモコンを探して、リクライニング機能ボタンを押す。

ナースステーションのモニターと連動した心電図が一際高い電子音を立てて目覚めを知らせる。

自由に触ることもままならない顔をぐしゃぐしゃに動かした後、
佑吾は佑磨

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desty2 長編小説 R15 BL 9431文字

desty2 長編小説 R15 BL 9431文字

destyー薄紅のきみIIー

海辺に近いと沖に向かうカモメが朝を知らせてくれる。

路田旅館の五階にある特等室、胡蝶蘭の窓はブラインドと厚手のカーテンを締め切ったままだ。

それでも何処からか初夏の朝日が隙間から入り込んで絨毯にボーダー柄を作る。

夏樹の肌とシーツは真昼の日差しを浴びるミルクで出来た真珠の様に俺の肌を一晩中溶かしこんでいた。

事後は口付けあっていつの間にか深く眠っていた様で、

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desty 長編小説 R15 BL 5290文字

desty 長編小説 R15 BL 5290文字

desty
ー薄紅のきみー

あらすじ

関東の温泉街のはずれにかつて九代に渡り栄えた老舗の温泉旅館があった。
しかし十代目当主に当たる若い男が先代を亡くし旅館を廃業させてしまった。
それから偶然の出会いを重ね見知らぬ男たち同士が集まり
起死回生を図り旅館を一流の男婦旅館として復活させるまでのストーリーをえがく。

登場人物紹介

路田佑磨 
路田旅館十代目当主。260年続いた旅館を自分の代で閉業

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短編小説 一歩一歩 1261文字

短編小説 一歩一歩 1261文字

ー自分で歩めなくなったらお前の所へ行く覚悟はできているからなー

そう慈夫は今朝も呪文のように自分に念押しして目覚める。
仏花の水を取り替え、仏壇に線香をあげる。数年前亡くなった妻のものだ。
それらが終わると、慈夫は身支度を始めた。

午前中、慈夫が到着したのは人通りの多い市道だった。
遠くに車通りの激しい通りもある。
慈夫の手元にあるのは安全性の基準を満たしたことを証明する緑のマーク。
それがつ

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掌編小説 いっぽいっぽ 318文字

掌編小説 いっぽいっぽ 318文字

 昔あるところに杖をついているおじいさんがいました。

おじいさんは歩くときにつえを使いますが、背筋がピンと伸びていました。

町をあるくと杖が カンカンカンと軽快な音をたてているのでおじいさんを振り返る町の人もいました。

おじいさんが一心不乱に歩くのにはある理由がありました。

数年前
天国へのぼったおばあさんとの約束でした。

「おじいさん、わたしがいなくなっても気落ちしないで足腰が弱らない

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短編小説ふれる 完全版完結8210文字

短編小説ふれる 完全版完結8210文字

ふれる

ふれられない。

駿二の手はとても良い手をしているが日々香は知っていた。
それは彼に触れられないから愛おしいのだということを。

アンティーク調のティーカップの細い持ち手に添えられた長い薬指。

上に綿棒でも乗りそうな一束ひと束が長いまつ毛。

少しマットなオークルベージュの脱色された髪。

日々香はそう思うとジンジャーティーをまた口に含み、目の前のブラック調のクッションシートに座る恋人

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短編小説 ふれる (2)     2514文字

短編小説 ふれる (2) 2514文字

日々香はあれからというものの桃を見るとそこから目を逸らした。
あのときの駿二を思い出すのだ。ここはスーパーマーケットの売り場の中だった。

その日は缶詰ではなく、青果売り場に売ってある本物の果実の桃が日々香の目の前に並べられていた。
カラフルなポップが貼ってある特売品だ。

それらは桃色の果実で全て形が同じだ。ずっしりと丸いフォルムで水気を含んだ重さが感じられる。
まだらの桃色の皮の表面には産毛が

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短編小説 ふれる 2531文字

短編小説 ふれる 2531文字

ふれる

ふれられない。

駿二の手はとても良い手をしているが日々香は知っていた。
それは彼に触れられないから愛おしいのだということを。

アンティーク調のティーカップの細い持ち手に添えられた長い薬指。

上に綿棒でも乗りそうな一束ひと束が長いまつ毛。

少しマットなオークルベージュの脱色された髪。

日々香はそう思うとジンジャーティーをまた口に含み、目の前のブラック調のクッションシートに座る恋人

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