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【毒親】『親という傷 幼少期の心の傷をとりのぞけばあなたの人生は好転する』◇まとめ その13【トラウマ】

本書のまとめの13本目。今回は「Chapter9 コミュニケーション」の後編です。

全部の目次は,こちらの記事に記載しています。


Part3 人との関わり方を変える

Chapter9 コミュニケーション(後編)

どのような関係性でも,考えるべき素晴らしい質問がある。『わたしはどんなふうにあなたと話して,わたしたちを守りたいのだろう?』という質問だ。」(p.306)

  • 3,自分自身と他者につながる(再びベロニカ(仮名)の事例)

 ベロニカはある日のセッションにて,彼と1週間口をきいていないと告げた。衝突をどのように乗り越えてみたか気になった著者には驚くべきことだった。
 詳しく聞いていくと,ベロニカのとるコミュニケーションスタイルは,「受動攻撃的(訳者の注によると,ふくれる,強情を張る,引き伸ばすなど,受け身の形をとる攻撃性)(p.302)」であることが分かった。
 今回の場合も,ベロニカは,自分の本当の気持ちを伝えるために,彼女の受動的な攻撃方法として,彼からの連絡を無視し続けるという「彼への罰」を行なっている,と著者は考えた。
 そして,なぜそのようなことをするのかと言えば,ベロニカの中の「自尊感情の傷」が,彼に受動的な攻撃を施し,彼がそれを受け入れることで,彼女が「自分は彼に言うことを聞いてもらえるだけの価値がある」と感じさせるように仕向けているからではないかと,著者は分析した。
 しかし,ベロニカはそれで気分を良くしているわけではなく,著者に「ひどい気分,自分にうんざりする(p.305)」と伝えている。そして,この「罰」が彼との関係を悪化させることも理解しているし,もうこんなコミュニケーションスタイルをとりたくないということも,著者に伝えた。

 さて,このようなときにはどのように対処すればよいのでしょうか。

 著者によれば,「傷ついたときは,落ち着いてから,本当に伝えたいことを考え(p.306)」るということが大切だということです。そのために,相手との関係性の中で,「どうしたら自分を守れるか」という見方から,「どうしたらこの関係性を守れるか」という見方に変えていくことが重要なのだそう。

 ベロニカは,このことを意識し,「傷つきながらも自尊感情の傷を探し,すぐに受動攻撃的なコミュニケーションをとりたがることに気づ(p.306)」,「話し方を変えようと取り組(同)」みました

破壊的なコミュニケーションから離れれば,自分にも相手にも,見て,聞いて,理解するチャンスが生まれる。(中略)これはつながりへと向かうすばらしい転換だ。(p.307)」

4,安定させる(再びミヤコとジン(いずれも仮名)の事例)

 ジンは「安心の傷」をもっているが,ミヤコには「優先の傷」があった。ある日,ジンはミヤコの自分に対するコミュニケーションに不満があり,著者のもとを訪れました。

 ジンが言うには,ミヤコは冷静に接するときもあれば,怒鳴りつけてくるときもあるし,無視をしてきたり,自分たちの将来を突き付けてきたりと,コミュニケーションが支離滅裂なのだそうです。

 著者は一度,ミヤコの過去を掘り下げるために彼女から話を聞きます。すると,ミヤコの両親は非常に多忙で仕事に多くの時間をついたしてきたのだそう。特に父親はギャンブルが好きで,勝った日にはミヤコにとても親切に,愛想よく,優しく接するが,負けた日には非常に機嫌が悪く,あっちへ行け,邪魔をするなと怒鳴られたこともあると言います。そんなミヤコは母親に慰めてもらおうとしますが,母親は仕事にかまけて相手にしてくれなかったそうです。

 著者はミヤコが,両親によって行なわれてきた「時と場合によって全く違う支離滅裂なコミュニケーションスタイル」を学び,それを「優先の傷」の疼きとしてジンに行ない,彼を試しているのではないかと分析しました。

優先の傷をもつひとのコミュニケーションに特定の方法はないが,自分を優先してもらいたい人が思いどおりの結果を得るため,何でも試そうとするのは理にかなっている。(p.309)」

 しかし,このようなミヤコのコミュニケーションスタイルは,ジンの「安心の傷」を活性化させてしまい,安心を求めてジンはさらに自分の殻に閉じこもるという結果をもたらしてしまいます。

 では,二人は今後,どのようにしていけばよいのでしょうか。

 著者は,ジンが彼女と一緒に歩んでいくための,様々な準備をしていました。それは,深い愛情と関係,安心に満ちた関係の中でプロポーズを行なうということでしたが,ミヤコにはそのジンの姿が,「自分への愛を示すのが遅い=自分を優先してくれていない」ように映ってしまっていたということを二人に伝えました。
 そこでミヤコは,自分のコミュニケーションスタイルに問題があったことに気づき,ジンに謝罪しました。ジンも,「ミヤコとこれから一緒に生きていきたいという気持ちに嘘はない」と伝えられました。

コミュニケーションをどのようにして安定させればいいかを考えてほしい。(中略)支離滅裂なコミュニケーションのスタイルを安定した無防備さと明快さに変え,同時に優しく,正直で,率直でいられたら,あなたが相手に伝えたい言葉と,返してほしい言葉はなんだろう?(p.313)」

言いたいことを明確にする――進むべき道

 さて,4つの事例を通して,コミュニケーションを妨げるものについて見てきました。ここで著者は,私たちに探してほしいことを2つ提示しています。

 この2つを通して,私たちも,自分の求める健全なコミュニケーションを他者に対してとるために,自分のコミュニケーションスタイルの現状と,そのスタイルをどうやって身につけたかを考えます。

① コミュニケーションがうまくいってないある一人の人との衝突が起こったときに,自分はどんなコミュニケーションスタイルをとるのか考え,特定する。

② 生まれ育った家庭の中に,どんなコミュニケーションスタイルがあったか考える。

 この2つが明確になってくると,コミュニケーションがうまくいかないときに,どの傷が活性化するかが分かります。そして,目標である「感情的な反応性から明快で優しく率直なコミュニケーションに変える(p.316)」ことができるようになります。

 では最後に,これほどまでにコミュニケーションスタイルを変えることを進めるのは,ひとえに,私たちが「自由」になるためだと,著者は述べています。

コミュニケーションのスタイルを変えるのは,そうすればもっと自分と他者を尊重できるからだ。自分の人生を支配してきた過去にもう操られないと決めたからこそ,もっと自由になれる。あなたしだいなのだ。そのことを忘れないでほしい。(p.318)」

―― ■ 以上が本書のまとめ。以下は私の感想文です ■ ――

 3部に分けてまとめました。「コミュニケーション」という言葉自体の意味合いが非常に広いものなので,時間がかかってしまいました。

 Chapter.8とChapter.9までを読み,今まで,他者との関わりで自分のコミュニケーションの方法に問題があるのかもしれないと思っても,その時々の調子や状態によって,良いときもあるし悪いときもあるから,一概に言えないような気がずっとしていたんです。

 でも,ここまでを読んで,「調子や状態」を左右するのが「心の根元にある傷」で(それは比較的ネガティブな方に向かいやすい),そこから目を離さず癒していくことが大切だと,私も初めて分かりました。

 思うと,私の幼少期に見てきた周囲の大人たちのコミュニケーションは,かなり「表面的」だったように思えます。話を深堀したり,込み入った話を聞いたことがないんです。

 祖父母も父母も,今後の家庭のことや,それぞれの悩みなどについて,深い話し合いを全くしていなかったんです。家族間でそのような深刻な話をしているシーンを,私は見たことがありませんでした(もしかしたら子どもの頃の私には「何も分からないだろうから」という理由で,あえて見せないようにしていたのかもしれませんが,それはそれで,信頼の傷が疼きますね)。

 あと,言ったら言ったで,その内容を言いっぱなしだったり,人がまだ話しているのに別の話をし始めたり,そういうシーンが結構あった気がします。

 だから,「心理学」という人の心を学びたいと感じたのかもしれませんね。もっとも,学んだからといって人の心の何たるかが明確になったわけでもなく,今でも「『こころ』って何だろう・・・」って,迷いっぱなしですけどね(笑)。


さて,長かったですが,Chapter.9もこれでおしまいです。

次回から「Chapter.10 心の境界線」に入っていきます。


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