栄養の「バランス」とは何か(1) 食事バランスガイド
「栄養をバランスよく摂取せよ」とは今やどこでも聞く言葉だが、では果たして「バランスの良い栄養」とは、どのようなものなのか。今回は、わが国日本で流通している「バランスの良い栄養」の考え方と、その根拠について書いてみたい。
国が策定した「食事バランスガイド」
「バランスの良い栄養」とは、どのようなものなのか。少し調べてみると、栄養士や看護師などが参照している「バランスの良い栄養」とは、国が策定した「食事バランスガイド」らしい。
「食事バランスガイド」は、厚労省と農水省によって平成17年6月にに策定された。厚労省ホームページには、「『食事バランスガイド』は、望ましい食生活についてのメッセージを示した『食生活指針』を具体的な行動に結びつけるものとして、1日に『何を』『どれだけ』食べたらよいのかの目安を分かりやすくイラストで示したものです。」と書いてある。
このホームページの文章通り、この「食事バランスガイド」は、コマのような形をしたイラストになっている。一番上から「主食」「副菜」「主菜」「牛乳・乳製品」「果物」という順番になっていて、「主食」(ごはん・パン・うどん等)が最も多い場所を占めている。
1日分の量として「主食」は「ごはん(中盛り)だったら4杯程度」とあるのだが、直感的に「これは多くないか?」「こんなに食べたら(少なくとも若者を除く多くの大人たちは)太ってしまうのではないか」と疑問を感じてしまう。
「食事バランスガイド」の根拠は?
問題は、この「食事バランスガイド」を策定する時に根拠となった情報だ。国はどのような情報を根拠にこれを「バランスの良い食事」と決めたのだろうか。その情報を求めて探しても、なかなか見つからない。
厚労省ホームページに書いてある「食生活指針」を読んでも、「食事を楽しみましょう」「適度な運動とバランスの良い食事で、適正体重の維持を」などといったスローガン的な記述のみで、根拠については何も書いていない。
医師の夏井睦氏は、著書の「炭水化物が人類を滅ぼす~糖質制限からみた生命の科学~」(光文社新書)でこう書いている。
これを読んだ時に、私は「え!?」となってしまった。もし夏井氏の書いていることが本当なら、「食事バランスガイド」の「バランス」の根拠は存在しないことになってしまうからだ。ここで言っている「バランス」とは、「こう食べるのが体に良い」ということではなく、「みんなこんな感じで食べてますよ~」ということになり、まさに夏井氏が述べているように「科学的根拠は皆無」ということになってしまう。
また同じく医師の宗田哲男氏は、著書「ケトン体が人類を救う~糖質制限でなぜ健康になるのか~」(光文社新書)でこう述べている。
これは先程の夏井氏の「『食事バランスガイド』は単なるアンケート結果の平均値説」の傍証となる証言だ。「日本人の食習慣こそがエビデンス(科学的根拠)」という発言の意味が、いくら考えても良く分からない。
「食事バランスガイド」の背景には「政治」がある?
さらにノンフィクションライターの窪田順生氏は「厚労省と農水省が、『炭水化物をススメている理由』(ITメディアビジネス)」という記事で、こう述べている。
続けて窪田氏は、科学的根拠がない「食事バランスガイド」が流布されている理由として、「農林水産省の思惑」を挙げている。すなわち、この「食事バランスガイド」には「稲作農家の方たちの生活」に対する配慮が紛れ込んでいる、というのである。
これはかなり踏み込んだ書き方で、多くの人が陰謀論だと思うかもしれない。しかし、仮にそれが正しいとすると、この「食事バランスガイド」がなぜ「厚労省と農水省の共同策定」なのかについてスンナリ合点がいく。「食事バランスガイド」の背景にある「政治」を考えれば、「さもありなん」という感じである。
なぜなら「食事バランスガイド」のようなガイドラインは、食品の消費者の購買、そして食品の生産者の売り上げにも大きな影響を与えるからだ。このようなガイドラインの決定前には各方面からのロビイング(企業や団体からの働きかけ)があることは想像に難くない。もちろんこれはあくまで「想像」上の話であって、私が何か大した真実を知っているという訳ではない。
いずれにせよ、もし、この「食事バランスガイドの科学的根拠を知っている」という方がいらしたら、是非教えて欲しいと思う。
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