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痛み治療の科学的根拠

痛みの治療は様々あります。

病院では薬がメインとなりますが、整(接)骨院、鍼灸院、整体院では様々な手技療法や物理療法(電気や温熱)、または鍼での施術になります。

病院と違うところは、簡単にいうと刺激を与えて体内の様々な生体反応を利用し、痛みの抑制を目指すというところです。

つまり、自然治癒能力を高めるということになります。

今回は、よくある痛み治療の科学的根拠について慢性疼痛診療ガイドラインに基づきながら解説させて頂きます。

急性痛ではなく、ほとんど慢性痛の解説になります。


1.非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は慢性痛に有用か❓


非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、一般的に炎症がある痛みに対して病院で処方される痛み止めの薬(消炎鎮痛薬)になります。

有名な薬名は、ロキソニン、ボルタレン、セレコックスです。

炎症がある急性痛に対して、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は効果が高いと医学的に報告されていますが、慢性痛に対してはあまり効果がないとされています。

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を服用する場合、胃薬も処方されることがあります。

危険なのは、慢性痛で服用を続けてしまい、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の種類にもよりますが、胃薬があったとしても消化管が障害される副作用を起こすことがありますので(そういう患者様をみたことがあります)、ご注意ください。

また、当院に急性痛でご来院される方は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が効かないという人も多くいます。

一般的に理論上、炎症がない急性痛の場合、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が効果が低いということが考えられます。

一番やってはいけないことは、慢性痛で痛みが取れないからといって、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を繰り返し服用していることです!!

とくに、月10回以上の服用はご注意ください。

逆に痛みの感受性が高まって痛みが取れず(薬物乱用性の痛み)、根本的な痛みの解決にはなりませんので、痛み止めの薬の飲み方には十分に気をつけてください。


2.アセトアミノフェンは慢性痛に有用か❓


アセトアミノフェンの鎮痛のメカニズムは、医学的にはっきりとはわかっていません。

一般的には、炎症が少ない痛みに対して病院で処方される痛み止めの薬で、副作用が少ないのが特徴です。

有名な薬名は、カロナールです。

アセトアミノフェンの痛みに対する有用性は、医学的データに乏しく明確な効果ははっきりしないというのが答えです。

副作用が少ないからといって繰り返しの服用している場合は、肝機能障害を起こす可能性があるので、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)同様に飲み方には十分に気をつけてください。


3.プレガバリンは慢性痛に有用か❓


プレガバリンは、神経痛(神経障害性疼痛)の際に病院で処方される薬です。

有名な薬名は、リリカです。

帯状疱疹後神経痛、有痛性糖尿病性神経障害、線維筋痛症に対して効果が有用とされていますが、その他の神経痛には明確な科学的根拠はありません。

副作用には注意が必要で、主に眠気、めまい、ふらつき、むくみ、体重増加になります。


4.マッサージは慢性痛に有用か❓


マッサージは慢性痛に対して、有用という確実視されたデータはありません。

ですので、痛みに効果があるのかは個人差があるといっていいでしょう。

マッサージといっても様々なやり方があったり、技量的な要素もあるので、痛みに対して医学的に証明することは困難といえます。


5.鍼灸治療は慢性痛に有用か❓


鍼灸治療は、慢性痛に対して有用と考えられています。

ですが、医学的データでは鍼灸師による慢性痛の概念がまちまちでデータが複雑になっているため、これといった有効性が示せられていないのが現状です。

技量の問題、患者様の鍼灸刺激の好き嫌い、経済的問題などがあるため、慢性痛に有用かというと何ともいえません。

ただ経験上、何回か鍼治療を繰り返し行い改善したケースもあり、慢性痛に効果があったことも事実です。


6.物理療法は慢性痛に有用か❓


物理療法は、電気療法、温熱療法など様々ありますが、短期的な痛みの改善には効果が認められているとされています。

しかしながら、結果は科学的根拠の質は低いです。

どのくらい痛みに効果があるのかは、現在のところ不明です。


7.手技療法(徒手療法)は慢性痛に有用か❓


手技療法は、痛みや機能障害の改善効果は認められるが、運動療法と比べると効果に差はないとされています。

手技療法の技量などの問題もあって、現在は明確な科学的根拠はありません。


8.運動療法は慢性痛に有用か❓


慢性痛の改善には、一般的な運動療法は有用とされています。

運動療法の方法に関しては大差はあまりなく、他の治療と併用することで効果があるとされています。

詳しくは、下記の「運動」をご覧頂ければと思います⇩


以上で、よくある痛みの治療の科学的根拠について解説させて頂きました。

急性痛に関しては治療効果が高いものが多いですが、慢性痛に関しては治療効果の科学的根拠が乏しいものが多くあります。

様々な治療の併用で、慢性痛に効果があることが示されていることもあり、ただ、この治療法が慢性痛に良いというものは存在しません。

現在は、慢性痛には運動療法を推奨する声が多くありますが、患者様の心理面での影響もあるため、心理的アプローチも必要不可欠になります。

また、慢性痛はすぐに治療効果が出るものは少なく、数ヶ月要するものもあれば、最悪は良くならないものもあります。

したがって、できれば急性痛のうちに痛みを対処することが重要といえます。

参考にして頂ければと思います。


まとめとポイント

  • 痛み止めの薬の飲み過ぎには注意

  • 慢性痛には、様々な治療を併用しながら運動療法が良いとされている

  • 急性痛のうちに痛みを対処できるかがポイント



参考文献

  • 慢性疼痛診療ガイドライン(新興交易(株)医書出版部)



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