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Christmas evening
去年のクリスマスも一人だった。一昨年も、その前も。
「雪の降らないクリスマスを見てみたい」
昨年、大学から駅へ向かう道で、ちょうど同じ時間に講義が終わった先輩と歩いていた僕は、そう言った記憶がある。
「そう? クリスマスはやっぱり白い方が好きだな」
氷点下の風に吹かれて、肌の白さと頰に呈した珠色は、顔の輪郭よりもはっきりと思い出せる。雪の降る街で生まれ育った彼女は、今頃、白くないクリス
the sound of silence
木から落ちた紅葉の方がきれいに見える人生だ。秋雨は夏の残り香を洗い流すようなものではなく、むしろ冬を溶かしたような冷たい雨だった。カラフルに染まった紅葉を散らしながら地面に模様をつけていく。水たまりの波紋が弱まっていく様子を見ているうちに一限の講義が始まる時間になっていた。安物のビニール傘をたたみ、手近な木に引っ掛けた。縁があればまた会えるだろう。
講義棟へと向かっていた足を、駅の方へと向け