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それが合理的なら、さっさと覚悟を決める(ほぼ日刊イトイ新聞・編『岩田さん〜岩田聡はこんなことを話していた。〜』を読んで)

年末年始に目を覆うようなニュースが続き、暗澹たる気持ちになっていた。前向きな視点を取り戻したいと思っていたら、任天堂の元社長・岩田聡さんの言葉を集めた『岩田さん』と再会した。

岩田さんはクリエイターとして「星のカービィ」「MOTHER2」「スマブラシリーズ」を手掛け、また経営者としてニンテンドーDS、Wiiなどのゲーム機器をプロデュースした。

2015年、55歳の若さで亡くなられたが、彼の仕事(ゲーム)は世界中の人に喜びを与えた。

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今回、『岩田さん』を再読して印象的だったのは「それが合理的なら、さっさと覚悟を決める」という言葉だ。

新しいなにかにぶつかって、いままでのやり方が通用しないようなところに進まざるをえなかったとき、わたしはまず、ほかにいい選択肢がないかを考えます。自分がそうするよりも、もっといい選択肢はないのか。自分じゃない誰かがそれをやるとどうなるか。
そして、好きか嫌いかではなく、「これは、自分でやるのがいちばん合理的だ」と思えたら、覚悟はすぐに決まります。

(ほぼ日刊イトイ新聞・編(2019)『岩田さん〜岩田聡はこんなことを話していた。〜』
、ほぼ日ブックス、P86より引用、太字は私)

岩田さんは、任天堂の社長に就任してから、英語でスピーチする機会が増えた。どちらかと言えば英語が苦手だった岩田さんはこんなことを考えたという。

・「任天堂とはこういう考えでやってるんだ」と世界に発信できるのは経営層に限られる
・宮本茂さんに任せるのもアリだけど、スピーチとプレゼンの練習をしてもらわないといけない
・宮本さんにはおもしろいゲームを作ってもらうべき

結果的に、岩田さんがプレゼンテーションを務めることになった。それが一番合理的だと判断できたからだ。た。

合理的だと思えたら、どんなに嫌なことでも、さっさとやり始めた方が得策という考えだ。単純なことだが、誰でもそう割り切れることではない。

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一般的に「合理的」という言葉は、少し冷たい印象を与えるものだ。

だが岩田さんが使う「合理的」という言葉はフラットだ。「だってそっちの方が良いじゃん?」くらいのカジュアルな響きさえある。

とは言え、なぜ岩田さんは合理的な判断ができたのだろうか?

それは15億円の借金を背負うHAL研究所の社長に就任したときのエピソードも参考になりそうだ。(ちなみにここでも、社長担った理由は他に誰にも適任がいなく自分がやるのが一番合理的だった、というエピソードが語られている)

やはり場数というか、どれだけキツイ状況を経験したかによって、合理的な意思決定ができる「能力」が身についていくのではないだろうか。

それに加えて、宮本茂さん始め、任天堂という、たくさんの優秀なクリエイターが集結していることも大きいはずだ。本書でも「たくさん議論を交わして」ということが多く書かれている。

ひとりでは学習できない。組織学習する集団こそが任天堂であり、そのリーダーが人の話を聴くことのできる岩田聡さんだったのだ。

とても分かりやすい本の中に、岩田さんの哲学が凝縮されている。

僕には岩田さんのような専門性も人格もない。だがせめて、今いる持ち場で、覚悟を持って仕事に臨んでいきたい。

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*おまけ*

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