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現実逃避のうた

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#ピアノ

ピアノ教師の現実逃避

もしも願い事を叶えてくれるのなら、
あの生徒のような手がほしい

あのなんともすなおで、
そして不器用な指たち
それをみるたんびに、
わたしの手の、
心をなくした機械のように動くみにくい姿を
見せて教へる自分の愚かさに
気づかされる

手を・・・変えてくれ。
手を・・返してくれ!

鍵盤の奴隷のように
意味もなく奏でるのはもういやだ

楽譜の下僕となって
言われるがままのメロディを
うちつけるのは

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孤独なロンリネスの現実逃避

とわに続くのではないかと
思われるほどに、
せつなく 
そして烈しい豪雨のなか
ひとりわたしは鉄橋をわたる

みみっちいパンのかけらを
何回わたしは食べた?
五回?十回?それとも十戒?
ひどい寒気と
おそろしいわたくしのかお

かがみの前をとおるたんびに熱が二度上がる
ふとんにはいるととたんに泪があふれだす
米を食べるとすぐにむねやけがする
ピアノをひくとたちまち烈しい
怒りの感情がこみあげ

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トメロの現実逃避

ピアノをひこう。鍵盤がなくたって、
黒鍵の部分をひくふりしよう。

おどりだす。心がふわりと風にのり、
からだはぷかぷか海をただよう。
安心しよう。いつだって、空気はあるさ。
土はあるさ。水はあるさ。
あらゆる万物はみな、ぼくの味方さ!

そうしてできたメロディは、僕の海に
こぼれおち、一粒のこらずしずんでいく。
これからだってそうさ。
ぼくの心に穏やかな海があるかぎり。