マガジンのカバー画像

読書感想文(日比野翔)

28
自分の読んだ本の感想文です。
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事

公共性のある小説とは

読書会のメンバーからの紹介で、李清俊の「虫の話」を読む。(頭木弘樹編「絶望図書館」所収。…

日比野 翔
10か月前
5

「姫ヶ生水」を読んで

主人公松の姉、美伊子が昭和6年(1931年)に37歳で亡くなり、その時松は32歳でしたから、松の…

日比野 翔
2か月前
3

読書会体験

読書会の仲間と文学書を読むことは、もう立派な遊びになっている。読書は一人の孤独な営みだけ…

日比野 翔
7か月前
13

I'll be a person encourage.

長編小説を根気よく読んできたから、持久力や諦めない心は鍛えられてきたかも知れない。歳をと…

日比野 翔
6か月前
6

「ハムレット」読書感想文

わが町の公民館読書会があり、今回ぼくが当番で課題本を選んでその感想を話し合う司会役となる…

日比野 翔
3か月前
3

怖い人だと思って受け止める

何を書いても自由というということだったら、あなたは何をブログに書くだろうか?小説というフ…

日比野 翔
8か月前
4

哲学を文学にすると

まともに哲学書を読み通したことがないのに、哲学をなぜ自分のそばに置いているかといえば、学生時代ぼくの周りで、といっても左翼小児病にかかった小さなサークルではということだが、ぼくだけが埴谷雄高を理解していると思われたからだ。みんな一様に難しいというのに、ぼくには何か既視感のような感触が確かにあった。「死霊」の最初のページからどこかに馴染みの雰囲気があった。中学校の理科の実験室の暗がりのような場所とか、街外れの古い病院の木製の手すりのある回り階段とか、鬱蒼とした森に続く小道で斃れ

アメリカ東部の「毒」

どういうことが書けるか分からないが、今のぼくのこころの微かな衝動のままに書き出してみる。…

日比野 翔
9か月前
5

あの「トランス・クリティーク」を読み始める

まだ読書三昧の境地には至っていないが、いま日がな一日本を読んで過ごしたいと思わせる本は、…

日比野 翔
9か月前
4

柄谷行人「トランス・クリティーク」から

現在のぼくの状態はとても良好だ。健康を実感している。働いておらず、外から強制されるものが…

日比野 翔
9か月前
4

同郷の小説家の本を読んでみる

金沢市出身の現役の小説家に、唯川恵さんがいる。ぼくより二つ年下の68歳になる。金沢女子短期…

日比野 翔
8か月前
5

徳田秋聲礼賛

今年3月3日にノーベル文学賞受賞作家大江健三郎氏が亡くなられた。享年88歳。私は大江文学の熱…

日比野 翔
6か月前
4

原田マハの芸術感覚に深みを感じない

原田マハという人気作家の「中断された展覧会の記憶」という短編小説がある。2011年の3.11に材…

日比野 翔
3か月前
4

黒い雨を追体験する

広島に人類最初の原爆が投下されました。これは私だけに起こった特殊なことでほとんど無価値なことだろうと思いながらも、誰かが読んでくれることを前提に書いてみます。日本人の誰もが被爆の悲惨さから、戦争はもうこりごりと感じていると私は思っています。しかし長く平和が続くと戦争のリアルさは感じられなくなります。もう自分には関係がなく、暗くて重い現実には触れないようにしたいと思ってる人もいると思います。我が家でもほとんど話題には上がりませんでした。しかし私の親世代は戦争を経験しているのです