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短編集

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はてなブログに掲載した過去の文章です。
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山の斜面で恋をした

山の斜面で恋をした

どこに行ってたの

女の子が多いところ

キャバクラ?

まあ、でもお前よりいい女がいないことを確認してきただけだよ。付き合いで行っただけだし。

ふーん

不満げだねえ

嘘は悪いことじゃなくて、寂しいことなんだよ。

俺を寂しいやつだっていいたいの?

人を信用しないことはいけないことだけど、だいたいはそれで上手くいく。

何がいいたいの

この世で一番美味しいごはんは一人じゃ食べられないって

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ぜってえ丸の内勤務OLになってケイトスペードの長サイフ小脇に抱えてお尻振りつつ長い髪なびかせて急ぎ気味にヒール鳴らしてオフィス街ランチバトル、勝ち抜いてやるからな

ぜってえ丸の内勤務OLになってケイトスペードの長サイフ小脇に抱えてお尻振りつつ長い髪なびかせて急ぎ気味にヒール鳴らしてオフィス街ランチバトル、勝ち抜いてやるからな

おかあさんへ

仕送り届いたよ。ありがとう。さっそく冷蔵庫に送ってくれたお野菜とかお漬け物とかいろいろ詰めたよ。いつもじゃ信じられへんくらい冷蔵庫、賑やかになりました。あ、別にご飯食べてないとかじゃないから、心配しないでね。買ったり作ったりはまちまちだけど、ちゃんと毎日食べてるよ。最近は朝に納豆と白米とおみおつけを食べるのにハマってるよ。最初はレトルトのやつだったんだけど、なんか物足りなくて作り出

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嘘の緑

嘘の緑

「ごめんね」
あ、
「僕、佐久間さんのこと女として一度も見たことない」

数えたって虚しいだけ。数えないけど、何回目かな。勇気を出した告白、帰り道。たばこの煙と人間をかき分けて乗った電車の、窓の奥はキラキラ、街灯の街。人間の街。なんでもある新宿。
JR山手線。新宿を出ると窓の奥は暗くなった。それとほぼ同時に映り込む自分の情けない、情けない、情けない顔。なんにもない私。泣けてもこない。ぽかんとして

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蓄光の星

蓄光の星

「お邪魔します。」

今日、初めて上京してから自分の部屋に男の人を呼んだ。お母さん、わたしを不良娘って叱ってください。お付き合いしてない異性を自室に招いたの。どきどきしてる。だって、彼は片想いの相手だから。学生時代、異性に想いを寄せたことはあったけど、どれも成就せずに思い出のひとつとなってわたしの中で今もくすぶってる。だから、同じ会社、違う部署、でも同じフロアにいる、女性に人気者の彼の事は見ている

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缶のコンポタ、あるいはパフェの底

缶のコンポタ、あるいはパフェの底

喫茶店、注文したのはアールグレイのホット。かならず、ミルクで。
紅茶にミルクを落とす時、やわらかな渦を描く様子はなんと形容したらよいのだろう。とにかく、わたしはそれを見るのが好き。うすい緋色の液体にミルクの混じり気のないホワイトは、とても、とても美しい。
たまにだけど、珈琲を頼むときも勿論ある。珈琲の場合には、カップが持ちづらければ持ちづらいほどよい。スプーンで反時計回りに回せばまろやかになり、時

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Kill me while I’m still young and pretty.

Kill me while I’m still young and pretty.

おにいちゃんは今日、大学のサークルで知り合った女の子とデートなのだそうだ。
早朝、世界一音が大きいと銘打った(うるさいからわたしも起きちゃう)目覚まし時計のアラーム音が家中に鳴り響いて起床。シャワーをひと浴びして、全裸(見たくない)で自室まで移動する。ボクサーパンツだけを身につけ、おもむろに窓を開けるとベランダに出て日光を一身に浴び、太陽に向かってなぜかダハハ!と笑う。その場でブルガリの香水を豪快

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