夏の毛布

16℃設定のクーラーが窓に結露ができるほど部屋を冷やしている。
その中で毛布を頭から爪先まですっぽり被って寝ていた。

つい4年くらい前まで。

毎晩本棚を扉の前に置いて、外から開けられても簡単に入れないようにしていた。
横向きで眠るのは 布団越しに両親が喧嘩していないか確認するため。
枕の周りに置いたぬいぐるみは 部屋に入ってこられた時にすぐ反撃するためのハサミを隠すため。
毛布で全身を隠すのは ぬいぐるみと同化する為、万が一オバケに見つかっても食べられない為。
私は毎晩 寝てる時 両親に殺されると思っていた。

それはあながち 子供の妄想だとか 冗談とかじゃない。 私は間違いなく両親に包丁を向けられて、首を絞められて、車に乗せられて 対向車に突っ込んで心中させられそうになったことがある。
だから 親に殺されると思うのは 当然といえば当然だった。

だから1番無防備な眠る時に ハサミを握って眠っていた。

両親と離縁して最初に迎えた夏。
16℃に冷えた部屋で 顔を出して寝た。
もう誰も殺しにこないと思ったから。
でも オバケに足を引っ張られたりするのはこわくて足は完璧にガードした。

2年後の夏。
16℃の部屋で毛布を被るのをやめた。
枕の横のぬいぐるみは 1つだけになっていた。

3年後の夏。
26℃の部屋で犬と眠った。
ハサミは引き出しの奥で眠っている。

そして今、タオルケットを足で遠くに蹴っ飛ばしてこれを書いてる。
もう夜 何も心配いらない。私は自由。
おやすみ。

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