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あめちゃんいるか? - やさしされんさ -

1番堪えたのは、家の前で24時間おこなわれている工事の音。仕事、育児、看護、介護で慌しい生活を送るなか、昼はもちろん、夜も騒音で寝られない日々に、ストレス域が限界に達し、発作を起こすようになってしまった。
こういった、神経や精神からくるものは治りが悪く、繰り返しやすい。色んなことにドクターストップがかかった。私の場合、静かに生活ができれば問題はないのだが、子どもたちの保育園の(保活)問題があり、簡単に引越しができないため、職場や家族に迷惑をかけている。

コテコテの大阪のおばちゃんといえば、豹柄の服。いつも飴を持ち歩いていて、子どもや、元気がない人、ちょっと仲良くなった人に、
「あめちゃんいるか?」
と配るイメージ。大阪で暮らした人なら、一度は声をかけられたことがあるだろう。私も、小さい頃から、知らないおばちゃんに飴をもらっては、これは食べてもいいのか、という気持ちと葛藤していた。
でも最近、大阪のおばちゃんは偉大なのだと思った。

一時的な難聴と不安発作を発症して2ヶ月。工事などの大きな音を聞くと、胸から首あたりがグッと締め付けられるような感覚になり、呼吸困難に陥る。
「お姉ちゃん大丈夫?あめちゃんいるか?」
つらそうにベンチに座っていた私に声をかけてくれた女性は、豹柄の服は着ていなかった。おばちゃん、と呼ぶには若々しい。
糖分をとるだけで、症状が緩和される病気がある。低血糖、パニック障害、私の不安発作もそうだ。あめちゃんは、人を少しだけ元気にできるアイテム。
「遠慮せんでええ、ええ。あめちゃん食べたら元気でるで」
もらった飴を口に含み、少し落ち着きを取り戻しながら、発作がおさまるのを待つ。甘さに気持ちが救われていく。その様子を見た女性は、なにがあったかも聞かず、ほなねー、と行ってしまった。不安が和らいだ心に、その後ろ姿がかっこよく沁みた。

治るには、最低でも1年かかるそうだ。その間、どれだけの人に迷惑をかけるのだろう。
人に優しくしてもらった分だけ、人にも優しくなれる。いま、たくさんの優しさをもらって、いつか、たくさんの優しさを返していく。
今回の発症を機に、自分のための飴、そして誰かのための飴を余分に持ち歩くようになった私は、大阪のおばちゃんに近づいている気がする。

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