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【読書感想】犬がいた季節 伊吹有喜 等身大の青春が、切なくて、優しくて、愛おしい。★★★★★最高傑作だ。

2021年の本屋大賞3位の作品。
audibleにて読了。

最初は小粒な作品かと思った。
「犬がいた季節」って、タイトルも地味だし。
カバー絵も素敵だけど、やはり地味だし。

でも本屋大賞3位だしなあ、と読み進めるうちに驚いた。
小粒どころではない、これは大作、最高傑作だ。

1988年〜2000年の12年間、三重県の進学校に通う高校生達の5つのストーリー。
一話ずつ独立した話しではあるが、やがてきれいに繋がっていく。
短編が繋がっての大団円、というのは、伊坂幸太郎さん、青山美智子さんの作品にもある、私の大好物だ。

世代が、ぴったりだったというのもある。
昭和と平成の間に高3って。
はい、私、同級生です。
共通一次、受けました。

鈴木大地のバサロ。
アルジャーノンに花束を。
トワイライトエクスプレスの牧瀬里穂。
時代を象徴する出来事、名曲、カルチャーがそこかしこに散りばめられていて、それらが全て実感として分かる。体感として分かる。
F1のセナ、神戸震災、地下鉄サリン事件。
光GENJI、ミスチル、ブルーハーツの「TRAIN TRAIN」、スピッツの「スカーレット」。
みゆき、北斗の拳、ドラゴンボール、ワンピース。
「愛していると言ってくれ」の「LOVE LOVE LOVE」。
「First Love」、「夜空ノムコウ」。
ルーズソックス、たまごっち、写ルンです、ノストラダムス。

そこに高校時代ならではの出来事、エネルギー、感性が絡む。

受験。受験勉強。
親や祖父母、大人とのやりとり。
金銭問題。
病気、命。病院。
東京と地元。
将来への不安。
卒業。
そして、恋。

高校時代ならではの感受性。不器用さ。
「HOWEVER」を、「永遠にする方法」と解釈する、瑞々しい感性。
コーシロー(犬)にしか話さない、自分の気持ち。
コーシロー(犬)にしか分からない、恋の匂い。

等身大の青春が切なくて切なくて、目頭が熱くなる。

最初は地味だと思っていたタイトルが、読み終わる頃には、とてもとても暖かく、愛おしく思えてくる。
「犬がいた季節」。
素敵なタイトルだ。
最初は地味だと思ったカバー絵も、優しくて暖かく思えてくる。

2度読みすると、見落としていたことがいくつもあることに気付く。

そして、この本、紙の本ならではの素敵な仕掛けがある。

私は最初にaudibleで聴いたのだけど、聴くだけでは知り得ない、その仕掛けみたさに、結局書籍も買ってしまった。

そして本当、買ってよかった。
物語を補完し、完結させる、紙の本ならではの、とても素敵なプレゼントだった。

この本、最高傑作だ。

伊吹有喜さん、ありがとうございました。
この本に出会えてよかった。
他の本も読んでみます。

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