働きすぎて壊れかけのオレは、本がとても好きだったことに気づくのであった
久々に午前休をとった。
半期で有給3日以上の取得が義務づけられ、一週間後の期末締日までにあと一日休まないといけない。半休+半休で一日扱いの裏技を使い、来週あと一回半休を取ればミッションクリアだ。
休むことをミッション扱いすること自体、なんかもう壊れかけているのだけれど…
にしても、この二ヶ月は働きすぎだった。
先月はギリギリ残業80時間越えず、今月も前半はヤバかった。
新型コロナの影響で仕事も色々と延期となり、やっと少し心に余裕が出てきたけれど、すでにかなり壊れかけのオレ。
半休といっても、心からのんびりするわけではなく、家の片付けをして、久々に軽く筋トレをして、いつもよりゆっくり家を出る程度。
そんなタイミングでnote に「スキ」のメッセージが届いた。4ヶ月ほど前に投稿した長編小説。まだまだ完成にはほど遠いのだけど、今読んで、面白い、「スキ」って思ってくれる人がいる。
ああ、そういえばしばらくnoteも書いてない。読んでもいない。
会ったこともない方からの「スキ」をきっかけに、自分の書いた文章、note に投稿した文章を読み直す。
面白い。
我ながら、すごくいい文章。
ああ、もう会社に行かず、今日はこのまま続きを書こうか、と思いつつ、真面目なオレは会社に向かう。
午前11時。会社のある市ヶ谷駅の本屋に入る。エクセルシオールカフェとつながっている比較的大きな本屋。
本屋には行きたかったんだ。
もし休みがとれたら、サウナか本屋に行きたかった。
そうは言っても午前休でサウナはちょっとね・・・出社前から水風呂ってのもなんだし、コロナが流行るこのご時世ではさすがに自粛。
本屋はいいだろってことで、久しぶりに、気軽に、何の気なしに入ったら、思いがけず泣きそうになってしまった。
入口から少し入ったところに、桜、春をテーマにした文庫本コーナーがあった。
君の膵臓をたべたい
葉桜の季節に君を想うということ
秒速5センチメートル
春や春
サクラ咲く
淡いピンクの表紙のイラスト。見たことのあるカバージャケット。
思いがけず、無防備に、大好きなタイトルたちが飛び込んできた。
本を読んで、こんなにも号泣することがあるのか、と自分でも驚いた一冊。
思いもよらない結末に完全にだまされ、叙述トリックという言葉、本を読むことの楽しさを改めて教えてくれた一冊。
淡い青春。
「コトノハ」と表現したくなる、美しい言葉たち。
どれもこれも大好きな本だ。
ああ、オレ、もうしばらく本を読んでいない。
最後に読んだ本は何だろう、「蜜蜂と遠雷」かな。
この本も読みたい。あの本も読みたい。
ああ、オレ、本大好きなのに。
経済学部をやめて文学部に入りなおすくらい本が大好きだったのに。
本屋になりたいって思ったくらい本が大好きだったのに。
なのに、この数か月何にも読んでいない。
そして、また、愕然と気づく。
オレ、今年、桜を見ていない。
そうだった。今は4月で、入学や新生活や、そして、桜の季節だ。
桜は咲いている。
桜の咲く道を歩いている。
だけど、頭の中が仕事でいっぱいで、心に余裕がなくて、桜にさえ気づかなかった。
やば。
壊れかけっていうか、オレ、壊れてるじゃん…
うつむいて歩いていたのかな。
上を向く心の余裕もなかったのかな。
有給取得義務のための半強制的な午前休。
大好きな小説を買うこともなく、会社のメールを気にしながら、会社のある駅の、本屋とつながったカフェでコーヒーを飲む。
あー、やだやだ、仕事のことが頭から離れない。
それでもそのわずかな時間で、ほんの少し、自分を取り戻す。
そのわずかな時間で、久々に書いたのが、この文章だ。
文章を書くのが好きだ。
久しぶりにnoteに投稿しよう。
こういうことを繰り返しながら、自分を取り戻していく。
短い午前休を終え、午後からの仕事への道すがら、市ヶ谷の桜を愛でた。
中央線。
菜の花。
桜。
ああ、いい季節じゃないか。
桜は咲いている。
桜の咲く道を歩いている。
本屋で思いがけず涙がでそうになったこと。
本がとても好きだったことに気づいたこと。
コーヒーを飲みながら久しぶりに文章を書いたこと。
菜の花と桜と中央線の写真を撮ったこと。
何事もなかったかのように、さあ、また、午後はバリバリ働くよ。
ほんの少しでも笑顔になっていただけたら幸いです。