見出し画像

50.滞在ビザがなくてもアパート契約できるのか?

B&Bを出て不動産会社へと向かう途中、目の前に大きな古いお城が目に飛び込んできました。
ブラッチャーノに中世のお城が残っていることをこのとき初めて知ったのです。
それほどに私はブラッチャーノについて全く何も知りませんでした。


一目ぼれで決めたアパート

金曜の朝、B&Bで目覚め朝食を取り、いよいよ不動産会社へ向かいます。
太陽が出ていたものの、11月初旬に感じたローマの気候と比べると12月初旬のブラッチャーノは冬そのものといった感じでした。

その日は3つのアパートを見せてもらうことになっていました。
しかし、最初に内覧したアパートに私は一目ぼれしてしまいます。

東京でマンション購入したときもそうでしたが、私にとって不動産は恋愛のようなものらしいです。
条件よりも、パッと見た感じの印象で決めてしまいがち。
そのとき私が恋に落ちたのは、そのアパートのテラスから見た景色でした。

テラスから見えた景色。お城と湖を一望

部屋自体はワンルームで狭かったし、建物の最上階で天井も低かったのですが、そんなことはどうでも良くなってしまうほど、窓からの眺めを気に入ってしまったのです。

このあと同じ不動産会社から2つの部屋を見せてもらい、翌日の土曜は朝から別の不動産会社で1軒だけ内覧させてもらいます。
でも、どうしてもあの景色が頭から離れず、最後の部屋を見たその足で最初の不動産会社へ行き、1軒目の部屋に決めたことを伝えました。

すると、この不動産会社の動きがとても速くてその日のうちに大家さんとの顔合わせの機会を設けてくれたのです。
私がすぐにでも入居したいことを知っていたので、月曜を待たず物事を先に進めてくれたのでした。

身分証明に役立った意外なもの

ブラッチャーノに来て3日目、こうして私は物件を決めました。
ただ、この時点で私自身の身分を証明するものは日本国籍のパスポートしかありません。

本当は東京で私にブラッチャーノを推したシチリア女子の兄弟に内覧に一緒に行ってもらうつもりでした。
しかし、その兄弟とまったく連絡が取れません。
シチリア女子もコンタクトを試みましたが、そのとき彼はブラッチャーノにいなかったのです。
やむを得ない事情がありブラッチャーノの自分の家に帰ることができず、ローマの友人宅に身を寄せているということでした。

そして結局、最終的な賃貸証明書を取得するまでこの兄弟の助けを得られるどころか、初顔合わせはそこから数年経ってからのこととなります。

そんなわけで大家さんとの面接ももちろんひとりで挑むことになりました。
ご夫婦で来ていたのですが、奥さんのほうがパスポートしか持っていない外国人に家を貸すことを躊躇しています。
そこで、私は自分の身分を証明する何かがないものかと考えますが、共通の話題にスローフードが出たのでその線で行くしかないと2つのものを提示しました。

スローフードの会員証

私が持っていたスローフード協会の会員証は、イタリアの国際本部から発行されたものです。
そのため名前もローマ字で表記してあります。
実はブラッチャーノにもスローフード協会があり、大家さんの親戚が当時その会員だったのです。

英字新聞の記事

スローフードのイベントをやったとき「ジャパンタイムズ」の記者が取材に来ました。
日本で行われた初めてのスローフードイベントだったし、外国からの参加者もいたしで記事になったのだと思います。
そのときの取材インタビューに対応したのが私だったので、そこに名前も記されていたのです。
英字新聞なのでもちろんローマ字表記ですし、記事自体を読むことができるので英語の分かる大家さんだったのが功を奏しました。

こうして大家さんの許可も出て、前家賃を払い、契約書を交わし、その日のうちにアパートの鍵を手にすることができました。

旅行ビザでは賃貸契約できない

一般的なイタリアの不動産賃貸契約書には「コーディチェフィスカーレ」と呼ばれる、日本のマイナンバーのような個人識別番号を記載する必要があります。
この番号は、名前、苗字、生年月日、生まれた場所などを含むアルファベットと数字の組み合わせで生成されますが、ということは、正式な発行を待たずともそうした情報さえ分かっていれば予想して勝手に作ることができるのです。

そして、情報を入力すると個人番号を生成してくれるインターネットサイトもありました。
私がお世話になった不動産会社では、まだ個人識別番号を持っていなかった私のためにそのサイトを利用して、仮ナンバーを入れることで大家さんとの賃貸契約書を作成してくれたのです。

ただし、私には留学ビザ取得のための居住証明書の代わりとなる、しかるべき手続きを踏んだ正式な不動産賃貸契約書が必要です。
個人番号も正しく正式に発行されたものでなくてはなりません。

そこで、不動産会社の人がチヴィタヴェッキアにある税務署のようなところへ私を連れていってくれました。

窓口へ行き事情を説明すると、外国人がパスポートだけで個人番号を取得することはできない、正式な滞在ビザが必要だと言うのです。
それを取得するために、こうして賃貸契約を結び居住証明しようとしているというのに。
卵が先かニワトリが先か問題です。

不動産会社の人も一緒に説明し助けてくれますが一向に話が先に進みません。
押し問答だけが続き、もうダメかもしれないと諦めかけたとき、隣の窓口から救いの手が差し伸べられました。

この記事が参加している募集

新生活をたのしく

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?