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#短歌
Unlucky(抄・30首)
ある賞に応募して落選した50首連作より、抄出して再構成したものです。完全版はまたどこかで形にする予定です。
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Unlucky 丸田洋渡
遠雷がもっと遠くへ逃げていく嘘つきがいる新生児室
捻挫した子どもを囲む子どもたち柏葉あじさいの陰の奥に
行かないでその木陰には平成のバスガイドが三人もいるから
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夏の雲は自動的に流れて行ったすみれ色の果物籠の上
野薊が揺れる 未
落選作より48首+思い出
お世話になっております。丸田洋渡です。過去に短歌の新人賞に応募して、落選した作品のうち、まだ公開していなかったものの中から、それぞれ数首ずつ抄出しております。
連作の流れが分からないままになるので読みづらいかもしれませんが、一首単体でも面白がれるようなもののみ引いております(全て載せられたらいいんですが、今改めて見ると表現の甘い部分が多くて全て公開するにはやや難がありました)。
本記事後
Fair Enough (20首)
短歌20首連作です。
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Fair Enough 丸田洋渡
刺したあと貫くためのひと押しで爪楊枝の先端は曲がった
声が磁石になって四月の教室に仲良しグループのできあがり
先生の言うとおりに列に並んだ モルモットに二回出てくるモ
これもまた何かの暗示 新しい歩道橋が積乱雲の下
振った手のその手のひらが見えたなら占い師は占ってしまうよ
夏の雲
Float/Fluorite(50首)
短歌50首連作
Float/Fluorite 丸田洋渡
三十円多く払ったのはメロンソーダにアイスがフロートするから
天秤がうすくらやみに傾いてあなたの半覚醒の寝返り
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恋のふりして洗脳はよくないな雨雲が雨落とさず通る
心は遥か上に浮かんでコンビニの監視カメラに当たって砕ける
わくわく眠りどろどろ覚める 妖怪は町中にいるような気がする
花札が踊って話しかけてくる
Raspberry Waltz (30首)
短歌連作です。
Raspberry Waltz 丸田洋渡
ボトルシップの船引きあげる銀色のピンセットは鋭利でありがたい
わたしはよく動揺する。よく想像する。海に浮かんで暮らす自分を。
コンソメスープが喉を滑って落ちていく体の中と体の外に
白菜に包丁と手と水がいる 私が必要になってくる
照明の足が布団を噛んでいる そういうのそういうの 親心
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生活を急変させるのはいつもおも
Overhaul(25首)
Overhaul 丸田洋渡
無数のバトンを落としたことに気がついて目を覚ませば助産師の歌声
唇を中心とした存在になって戻ってなって戻った
小学校が自分のピーク 生まれたら生まれっぱなしのメダカだけの池
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行ってきます、の右腕を掴んだ母が 気をつけて、と言って手を離す
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覚えないように眠って聞いていた心理学概論の要点
雨天欠講 花の味するガムがまだ味するうちは口は花
Topple/Taupe (50首)
Topple/Taupe 丸田洋渡
雲が明るいと初めて見えてくる笹の一角 全能の夜
分からないようにしてある本心がおまえに、分かるはず、ないだろ
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限界を自覚できないところまで来ている ゼニス・ブルーの岬
渦巻いて湯気が天井まで昇り、少し濡れ、少しして乾いた
木曜に木が来る木が来る気が狂う木が来る直ぐに植える時が来る
噴水をつくるホースの裂け目にはホースと同じ色
ビフォア・ダーク(44首)
短歌の連作です。
ビフォア・ダーク 丸田洋渡
冷たい のは 初めてのときだけだった 悪は一万年滅ばない
Sheer Bliss トランペットの指遣いばかり見ていた中二階から
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きれいな山の写真のあとに遭難のニュース きれいな遭難のニュース
空中のビニール傘を掴んだら大学生が近くで拍手した
席替えのような易しいギャンブルが高校卒業後足りてない
へび色の紐を忘
連作から落とした歌④(1×13首)
短歌連作を組むにあたって、諸々の理由からやむなく落とした歌について、当時のエピソードに触れながら書いていきます。ぜひ気軽にご覧下さい。(①〜③もよろしくお願いします。)
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宇宙はキャベツ めくるとキャベツ座があって同名の劇場を擁する
2022.7「Lie/Lilac」の頃。
宇宙をキャベツに見立てたとき、まずそこにはキャベツ座なる星座があるだろうなと思って、(そこでイタリアの「スカ
短歌を食べる(10首)
短歌を食べる 丸田洋渡
初めましての二十分後に煮卵と海老天がそれぞれに届いた
推されたい 怖 立ち食いのざる蕎麦は自分のせいだけど不味かった
ひとりにつき名歌はせいぜい七くらい ねぎトロ丼にねぎは不可欠
食べるシーンが遅くて長い もし映画館で観たなら発狂は確実
友だちCが謝りながら舐めている酢醤油に辣油の紅い海
この数に対して人が一人では満足しないだろうゾンビも
詠むことは世界を