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【作家】松本清張は文豪と呼びたいけど、呼べるのか問題

1960年代は、全集が様々な企画で
出版された珍しい時代。

最近読んだ本で一番、
愉快だったのは、
三島由紀夫と松本清張の話でした。
『作家論』三島由紀夫。中公文庫。

昔、中央公論社から
ある文学全集が出ることになりました。
日本の文学作品という企画でした。

そんな時、要になるのは、
その全集に、誰を選び、
またどの作品を掲載するか?
決める編集委員の意向です。

その編集委員は、
川端康成、井上靖、大岡昇平、
高見順、そして、三島由紀夫でした。

そういえば、三島には、
大嫌いな作家がいますね。
太宰治です(笑)。

ただ、この全集の編集委員として
この人だけは、
「日本文学」に入れたくない!
と三島が譲らなかったのは、
太宰ではなく、松本清張でした。

松本清張は、当時、
ミステリーの世界で
ヒットを何冊も飛ばしていた、
流行作家でした。

庶民的な松本清張。
純文学から遠い松本清張。
デビューしたてで真価が
まだ定まらない松本清張…。
純文学では考えられない部数が
売れる松本清張。
何より、推理小説は果たして文学か?

何度、作家たちが
編集委員会を開いても、
三島由紀夫は
松本清張だけは
認めようとしなかった。
松本清張が加われば、
その全集の売れ行きも
大いにあがったでしょうけど。
 
結局、民俗学・柳田国男の一冊が
選定されたそうですが、
三島が清張を認めなかったのは、
単なる否定というより、
嫉妬もあったような…。
羨ましさもあったような。

三島由紀夫は
この時ばかりは、
だだっ子のようですね。

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