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思春期という泥沼もいずれ終わる【しろいろの街の、その骨の体温の:村田沙耶香】

スクールカーストがとてもリアルに描かれてる長編小説。読みながらその居心地の悪さを思い出していた。
小学生がふとしたきっかけで仲良くなる様子。自分すら理解できないまま次々やってくる身体の変化や他の子との格差、じんわりと感じる違和感。中学生になると、持ってるもの(顔立ちやスタイル、家族構成や金銭面などのすべて)によって分けられるグループと差別。

小さないじめや他の子と格差を感じたことはあったけど、私は楽しく学校生活を終えた。思春期は気付いたら終わっていた。でも村田沙耶香さんの細かい描写や心情の書き方はすごくて。今まで思い出すことなく消化させてた所から細々としたマイナスの感情だけがどろどろと流れてきて気分が悪くなった。
誰に言われたわけじゃないのに、もう絶対にあの時期には戻りたくないと強く思った。こんな風に仲の良い男の子なんて居なかったしあんな陰湿な扱いをされたわけでもないのに。あの思春期の空気感を作っていたのはクラスの子?先生やそれ以外の大人?もしかして自分?そんな事はもう考える必要もないはずなのに。

この本は読み終わりの感情がみんな露骨に違うものになる。それぞれの思春期の思い出の、特にきれいじゃない部分をかき乱して思い起こしてくるから。そして読んだ人と感想を言い合ったりはしたくない。読んだ後すぐは自分の感情を鎮め落ち着かせる時間に使いたい。

でも、結局何度か読んでしまった。そのマイナスの感情たちは言葉にする気にはなれないけど。時間をかけて見つめ直す事で少し可愛く思える、気がするから。

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