ショートショート「文豪」
文豪は数々の名作を物してきた。難解であり、かつ読み物としての完成度も高いものを書くと定評がある。街に文豪の作品を読んだことの無いものはいないと言って過言ではない。教科書にもちゃんと載っている。
そんな文豪は、その執筆している姿を誰か他人に見せることを極度に嫌う。嫌うどころではない。文豪は人がいるところでは物を書こうとしない。それがどんなに親しい人間、例えば家族の者であろうとも。もちろん、それは集中を乱すからなのかもしれないものの、その神経質さはやはり尋常ではない。
「もし