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For Beautiful Human Life

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つたない創作ですが、よろしければどうぞ。
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記事一覧

ショートショート「波」

彼は波であった。波である。粒子ではなく、純然たる波。波が彼であるのではなく、彼が波なのだ…

5

ショートショート「運命」

彼はなぜその人物との面会に臨まなければならないかわからなかった。しかし、面会の日取りは知…

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ショートショート「予告状」

予告状が届きました。『あなたの一番大切なものをいただきます』とあります。盗みの予告です。…

8

ショートショート「まさか!」

このタイトルが「まさか」であるからには、「まさか!」という話になるのだろう。そんなに驚く…

9

ショートショート「朝食の時間」

「これは夜食なんです」と紳士はぼくに話した。 ある蒸し暑い日、ぼくは昼食をとりにカフェに…

3

ショートショート「王子と玉子」

玉子かと思ったら王子だった。器のふちにぶつけたら痛いと叫び声を上げたものだから気が付いた…

1

ショートショート「文豪」

文豪は数々の名作を物してきた。難解であり、かつ読み物としての完成度も高いものを書くと定評がある。街に文豪の作品を読んだことの無いものはいないと言って過言ではない。教科書にもちゃんと載っている。 そんな文豪は、その執筆している姿を誰か他人に見せることを極度に嫌う。嫌うどころではない。文豪は人がいるところでは物を書こうとしない。それがどんなに親しい人間、例えば家族の者であろうとも。もちろん、それは集中を乱すからなのかもしれないものの、その神経質さはやはり尋常ではない。 「もし

ショートショート「一角獣」

一角獣には角が一本ある。一角獣は角が一本しかないことを恥じていた。 「二角獣のやつには角…

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ショートショート「他人の空似」

妻に浮気現場を目撃され、あわやというところで逃げおおせ、その後は知らぬ存ぜぬ、人違いだ、…

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ショートショート「産まれる前のこと」

彼女は目覚めると、まず自分の傍らでしゃがみこみ、顔を覗き込む女の子の存在に気付いた。次に…

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ショートショート「朝飯前」

彼は勤勉だったし、また献身的だったので、組織の中での信頼も篤く、当然彼のボスも彼を高く評…

1

ショートショート「一瞬」

彼の右頬を彼女が平手打ちした、その一瞬。 彼がなぜ平手打ちを受けなければならなかったのか…

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ショートショート「いいか、坊主?」

「いいか、坊主?」と言ってぼくの顔を覗き込んだ親分の声と顔が、ぼくの人生の記憶の、一番最…

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ショートショート「不良品」

青年は思った。 「この世界は矛盾と理不尽に満ちている。こんな世界はおかしい」 ということで、こんな不良品の世界をそのまま放置している責任者に抗議をしにいくことにした。さて、責任者といったところで、誰がこの世界全体を管理しているのかが青年にはわからない。とりあえず、役所に行ってみた。 「そんなこと言われましても」 役所が管理しているのはこの世界のほんの一部、それも些細な一部でしかないという。対応した役所の職員は返答に難儀したが、そこはお役所、たらい回しは十八番なわけで、