見出し画像

奇縁堂だより 31【本の紹介 : 星野富弘】

 4月28日,画家であり,詩人であり,エッセイストでもあった星野富弘さんが78歳の生涯を閉じました。

 星野さんは,大学を卒業し体育教師として赴任した中学校で,2か月後に部活の指導中に誤って墜落し,頸髄を損傷しました。治療のため9年間に及ぶ病院生活を送りますが,手足の運動機能は回復しません。

 星野さんは,動かない手の代わりに口に絵筆を咥え,絵を描き始めました。水彩で四季の草花を描き,これに詩を添えた作品は多くの方から好評を得,画家・詩人としての人生がスタートしました。

 星野さんの描く草花は,儚げでありながらも,とても優しい姿を見せています。また,絵に添えられた詩には,悲しみと希望が背中合わせに表現され,読む者の心に小さな波紋を描きます。

 星野富弘さんのご冥福をお祈りいたします。折があれば,星野さんの作品を是非ご覧になってください。書肆奇縁堂には2冊の在庫がございますで、ここで紹介させていただきます。

○『四季抄 風の旅』 立風書房 ¥330
 「口の筆を通して遠い地へ旅立てることを,うれしく思っています。今,私前には冬の山が連なっています。木の葉が落ちた山が… 昭和45年,勤務先の学校の体育館での一瞬の出来事でした。宙返りに失敗して,倒れている私を,生徒たちは,いつものようにふざけているのだと思ったそうです。」(“はじめに”より抜粋引用)
 
 個人的に,本書に収録されている「らん(1978)」の作品が印象に残っており,絵の上手さだけでなく,花と人の顔を比較した表現力に驚かされました。
 
 本書は草花を題材とした詩画だけでなく,随筆も収録されています。この随筆には怪我をしてからの星野さんの生活や心の裡が書かれており,彼の創作の源泉に触れることができる内容になっています。
 星野さんの著作を読む1冊目の本としておすすめです!


○『鈴の鳴る道 : 花の詩画集』 偕成社 ¥330 
 「…書いていると限りがないが,こんな口うるさい男と結婚したら,お嫁んさんは何日,辛抱できるだろう。実は,この口うるさい男というのは,私なのである。誰もが黙々とおこなっている生活の一つ一つに,私が言葉を使わなければならなくなったのは少し理由がある。私は十六年ほど前に首の怪我がもとで,手と足が動かなくなってしまった。以来,自分の手や足ですることを全部,妻や母や弟夫婦に助けてもらいながら,一日のほとんどをベッドの上で過ごしている。」(“序にかえて”より抜粋引用)

 本書は,1981年から1986年までの詩画51点と随筆11編が収録されています。収録されている品はどれも心温まるものばかりです。星野さんにとって花はどのような存在だったのか,彼が見ていた世界を覗いてみませんか。


今も回「奇縁堂だより」をお読みいただきありがとうございました。
以下から書肆奇縁堂のサイトにアクセスできます。


もしくはプロフィールの「ストアボタン」または「ストアを見る」からもアクセスできます。

※書名のところには,商品ページにアクセスできるようにリンクを埋め込んであります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?