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奇縁堂だより12【本の紹介:江戸川乱歩賞②】

 前回の「奇縁堂だより」に続き,今回も江戸川乱歩賞の受賞作品を紹介します。今回は41回~60回の受賞作のうち在庫がある13作品を取り上げます。

●ピックアップ

・『テロリストのパラソル』(藤原伊織:著) 文庫,¥ 250(税込)
 第41回受賞
 歌舞伎町のバーで働くアル中の島村は,学生運動の過去を隠して20年以上もひっそりと暮らしてきた。島村は,土曜日には昼前からひとりウイスキーを抱えて新宿中央公園のベンチで過ごすのを常としていた。そしてある土曜日,新宿中央公園で爆弾テロがあり,多くの人が亡くなった。その中には昔の恋人と友人がいた。
 島村が公園に残してきたウイスキーのボトルには指紋が…。容疑者となった島村は,過去と向き合いながら事件の新相に迫って行く…。
 ミステリーかつハードボイルドなこの作品は,第114回直木賞も受賞しています。

・『破線のマリス』(野沢尚:著) 文庫,¥ 250(税込)
 第43回受賞
 テレビ報道局で映像編集を担当する瑤子は,報道被害スレスレの映像モンタージュを制作し,ニュース番組の視聴率を上げるという仕事を繰り返していた。ある日,瑤子はある郵政官僚から “弁護士転落事故は郵政省内の汚職が絡んだ殺人である” という内部告発のビデオテープを受け取り,これを編集して放送した。
 しかし,内容は虚偽であると主張する官僚・麻生が現れた。しかも告発した官僚は実在しないことがわかった…。瑤子は謝罪を求める麻生を突き飛ばし,転落して死亡させて…。

・『Twelve Y.O.』(福井晴敏:著) 文庫,¥ 150(税込)
 第44回受賞
 自衛隊でヘリのパイロットしていた平貫太郎は,事故によるトラウマで操縦ができなくなり,自衛官募集員の仕事に転向し鬱屈した日々を送っていた。ある日,平はかつての命の恩人である東馬修一に出会う。
 そして,その出会いがきっかけになり,電子テロリスト12(Twelve)の計画に巻き込まれていく。12は,最強のコンピュータウィルスと謎の兵器ウルマを用い,日本政府と自衛隊,そして米国防総省を脅迫し,沖縄から米海兵隊を撤退させた。12の正体は?12の真の目的は?

・『果つる底なき』(池井戸潤:著) 文庫,¥ 250(税込)
 第44回受賞
 都市銀行の渋谷支店に勤務する伊木。同じ銀行で債権回収を担当している親友の坂本が,「これは貸しだからな」という謎の言葉を残してアシナガバチによるアレルギー性ショックで亡くなった。死亡した翌日には,坂本が顧客の口座から自分の口座に送金していたことが判明した。坂本の妻・曜子は,かつて伊木の恋人だった。
 伊木は坂本の無実を信じ,曜子のため,そして自分のために坂本が何をしようとしていたのか調べ始める。その過程で,かつて伊木が融資を担当した企業の倒産の原因に何かあると気づき…

・『八月のマルクス』(新野剛志:著) 文庫,¥ 110(税込)
 第45回受賞
 レイプ・スキャンダルで引退したお笑い芸人の笠原雄二。彼の元に5年ぶりに元相方の立川誠が訪ねてきた。しかし,直後に立川は失踪する。そして,かつて笠原のスキャンダルを書き立てた記者が殺され,その容疑容疑者として笠原が浮上する。笠原は,立川を探すため,そしていわれなき殺人容疑を晴らすため自分の過去に立ち向かう。

・『脳男』(首藤瓜於:著) 文庫,¥ 150(税込)
 第46回受賞
 ある都市で連続爆破事件が起こった。警察は犯人の隠れ家を見つけ突入する。そこには犯人と目される人物と,これと格闘している鈴木一郎の二人がいた。鈴木は逮捕され,他に爆弾が仕掛けられていることを供述して共犯とみなされる。
 鈴木は感情が欠落した人間で,精神鑑定には鷲谷真梨子があたった。鷲谷は,彼の本性を探ろうとするが…。そして,鈴木が入院する病院に爆弾が仕掛けられた。捜査に当たった刑事は,鷲谷とともに事件の核心にたどりつくが…。映画化作品。

・『13階段』(高野和明:著) 文庫,¥ 250(税込)
 第47回受賞
 傷害致死事件で服役し仮釈放中の青年・三上と,犯罪者の矯正に絶望した定年間近の刑務官・南郷の二人に,弁護士から,犯行時の記憶を失った死刑囚の冤罪を晴らす仕事がもちかけられた。成功すれば多額の報酬が得られる。しかし,処刑までに残された時間は後わずか。手掛かりは,死刑囚の脳裏に甦った“階段”の記憶だけ。果たして,冤罪は晴らされるのか?

・『天使のナイフ』(薬丸岳:著) 文庫,¥ 350(税込)
 第51回受賞
 桧山の妻は,生後5か月の娘の前で殺された。犯人は13歳の少年三人。少年犯罪であるため,彼らが罪に問われることはなかった。
 4年後,保育園児の娘と暮らす桧山の元へ警察が訪れる。妻を殺害した犯人の1人が殺され,桧山が容疑者として疑われたのだ。桧山は,犯人を殺してやりほど憎んでいたが殺してはいない。どうしてこのようなことに? 桧山は,犯人達が妻殺害後にどのように過ごしていたのかを調べる。そこには予想だにできない事が…。

・『沈底魚』(曽根圭介:著) 文庫,¥ 200(税込)
 第53回受賞
 “現職国会議員に中国のスパイがいる”という亡命中国外交官の衝撃情報により,警視庁外事課に捜査本部が設置された。警察庁から指揮官として女性キャリア理事官が送り込まれるが,老練な捜査員たちは各々が独自に捜査を進める。
 捜査線上に浮かび上がったのは,なんと次期総理の呼び声も高い大物議員の芥川だった…。キャリア理事官は?捜査員たちは?

・『誘拐児』(翔田寛:著) 文庫,¥ 250(税込)
 第54回受賞
 終戦翌年(昭和21年)の夏。東京・成城の自宅前から5歳になる実業家の息子が誘拐された。そして,犯人から「使い古しの新円で百万円を用意しろ。場所は有樂町カストリ横丁」という脅迫状が届く。刑事たちが戦後の混乱から抜け出せずにごった返す闇市を張り込むが,誘拐犯はその目の前で身代金を奪ったうえ,子どもを連れて逃走した…。
 15年後,手がかりは何もなく誘拐事件は迷宮入りしたかに見えた。しかし,一人の女性の殺人事件を契機に,児童誘拐事件が再び動き出す…。

・『再会』(横関大:著) 文庫,¥ 250(税込)
 第56回受賞
 小学校卒業の直前,四人の幼馴染は悲しい記憶とともに拳銃をタイムカプセルに封じ込め,校庭の片隅に埋めた。四人の人生は複雑に絡み合い,23年後ある殺人事件をきっかけに再会する。一人はこの銃で射殺され,一人は殺人の疑いがかかることを恐れ逃走する…。タイムカプセルを掘り起こしたのは誰?そして犯人は誰?

・『カラマーゾフの妹』(高野史緒:著) 四六判,¥ 770(税込)
 第58回受賞
 ドストエフスキーの最高傑作の一つ呼ばれる『カラマーゾフの兄弟』には,書かれていない第二部がある。父殺し事件の真犯人が別にいることは,第一部を詳細に読めば明らかなのだ。事件から十三年後,カラマーゾフ家の次男イワンが特別捜査官として町に戻った。イワンは兄ドミートリーの無罪を証明し,事件の真相を突き止めるため再捜査を開始する。しかし,イワンの前に新たな事件が起こる…。

・『闇に香る嘘』(下村敦史:著) 文庫,¥ 300(税込)
 第60回受賞
 満蒙開拓団の両親の子どもとして生まれた村上和久は,戦中・戦後の劣悪な栄養状態におかれたことで,不幸にも41歳の時に失明した…。
 古希を目前にした和久は,腎臓病を病む孫娘に腎臓を移植しようとするが,検査で適さないことが分かる。和久は満州で生き別れ,その後中国残留孤児として帰国した3歳年上の兄に腎臓の提供を頼むが,検査さえも拒否される。兄が永住帰国をした際,失明していた和久は兄の顔を確認できていない。では,兄だと信じていた男は誰なのか? 全盲の和久が兄の正体に迫る…。


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