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好きな一冊:残酷な少年は弓を射る

わたしの本棚から、好きな一冊をじっくり紹介する“好きな一冊”シリーズ第一弾!
一冊と言いながら上・下巻なのですが。
大好きでお気に入りな一冊、少しでも共感して下さる方がいたら嬉しいです。

簡単な本紹介とあらすじ


「残酷な少年は弓を射る」上・下巻
ライオネル・シュライヴァー著
日本発売日/2012年
ライオネル・シュライヴァーはアメリカ人の、作家兼ジャーナリストです。

《あらすじ》
離れて過ごしている夫に「息子のことで話し合う必要がある」と手紙で語りかける所から物語は始まります。
内容は近況報告から過去の“あの日”の事について言及していき、手紙を書いている妻の現在の日常と同時並行で、過去の“あの日”へと手紙は進んで行きます。

▪️ 最初、翻訳に違和感がありますが、お話の世界に入り始めると気にならなくなりました。

▪️ 買った時の本のカバーが、私見ではあまりにも耽美でどきまぎするため、外しています。

この本を好きな理由

きちんと打ちのめしてくれた事。

共感する部分


・恋人から夫婦へと関係性が変わることでの意識の相違
・家族になりこどもを作る事への不安(自分を失う事への)
・愛情の独占

わたし自身、こどもを持つことを折々に考えはするけれど、ニュースで見た全ての事柄を、他人事ではなく全て可能性として考慮してしまうため、怖過ぎてつくらない選択をしてきた。
わたし自身の結論としては、産まない事は最大の過保護だと思っている。
その可能性の中で考えもしなかった最悪のケースを、この本は示してくれた。
過去の“あの日”に近ずき、当日を迎えた瞬間に、思いっきりわたしを打ちのめしたのだ。
味わったことの無い感覚に感動した(表現の手法についてである)。
こんな事って…あるかよ…!という、絶望感。
まだ未熟で暴走が加速して行く幼い魂と、成長してから気付くその虚しさ。
ただ、単純な“好きだよ”や、“こっちを見て”を素直に言えない事の大きな代償。
この物語は、お伽噺であり示唆なのだ。
俯瞰してみる事でいろいろ見えて来る。
恐れて拒絶するよりも、受け入れて愛せたらどれだけ良いだろう。
そう思わせてくれた作品。

わたしの最大の過保護について
わたしが大きく共感するものの中に「セブン」という映画がある。そのワンシーンで老刑事が同僚の奥さん(お腹に赤ちゃんがいる)にこんな話をする。内容はうろ覚えなのだけど要はこんな事。
“若い頃、恋人にこどもが出来たとき、1週間かけて堕ろすように説得をした。私たちの美しい大切なこどもがこんな醜い世界に生きるなんて耐えられなかった。”
わたしも耐えられない、自分の手が及ばない所で自分の大切なこどもが傷つく事を、確実に守るなんて無理だ。最初から作らなければ、わたしのこどもは傷つく事はない。
映画を観て、わたしはそう胸に刻んでしまった。

少しネタバレ有りの感想

現在の主人公は、遠くにいる夫に宛てる手紙に思い出を綴っていく。
夫との出会いから、結婚に至るまで。
最愛の人のこどもを持つ事や、自分の生活を変える事に、違和感を持ちつつも受け入れていく過程。
だんだん長男のケヴィンが成長していく思い出話から、ケヴィンが事件を起こし、主人公の日常が奪われ、崩れ去る瞬間まで。丁寧に描写していく。

ケヴィンは母親を独占し、愛を独り占めしたかったのだと思う。母を嫌悪し、嘲笑する様に見えた姿は、誰よりも優しい眼差しを、抱擁を求めたくても、受け入れられないかもしれない恐怖が先立って、先に諦めてしまった結果なのだろうと思った。母に嫌われるより先に傷つけたのだ。そして、心をも独占したのだ。

読んでくださりありがとうございます!


とても好きな本なのですが、どう話して良いか分からない内容でもあります。
わたしの場合、登場人物ももちろんですが、それよりも全体の話の構成に感動したり、表現が好き!となる事が多いです。
今回、大好きな本を文字にしてまとめてみました。
ここまで読んでくださりありがとうございます!

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