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JW460 白い石

【崇神経綸編】エピソード35 白い石


第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。

紀元前33年、皇紀628年(崇神天皇65)のある日・・・。

ここは、海の向こう、朝鮮半島南部。

地図(朝鮮半島南部)

ここに、一人の男がいた。

意富加羅国(おおから・のくに)の王(こきし)の子、蘇那曷叱知(そなかしち)(以下、ソナカ)である。

「ソナカ」は、黄牛(あめうし)に農具を負わせて、歩いていた。

ソナカ「黄牛とは、立派な牛という意味ニダ。黄色い飴(あめ)のような牛は、立派だと考えられていたみたいハセヨ。なんでかって? そんなこと『ウリ(私)』に聞いては駄目ニダ。」

しかし、ある田舎(いなか)に辿り着いた時、黄牛が、いなくなってしまった。

ソナカ「困ったハセヨ。よし! こうなったら、牛の足跡を追うしかないニダ!」

牛の足跡を追ったところ、ある郡家(むら)の中で途絶えていた。

ソナカ「ど・・・どういうことハセヨ! 牛が消えたということニカ? 意味が分からないニダ。ど・・・どうすれば良いニカ? ん? あ・・・あそこの老人に聞いてみるニダ。」

老人「アニョハセヨ(こんにちは)。ウォ(あなた)は、この郡家の者じゃないね?」

ソナカ「その通りニダ。黄牛を追って、ここまで来たニダ。ウォは、何か知ってるニカ?」

老人「あの牛なら、この郡家に入ったハセヨ。だが、郡公(むらつかさ)らは、牛が背負っている農具から推察して、間違いなく、殺して食べるために用意したモノだと考えたハセヨ。」

ソナカ「えっ? それって食べたってことニカ?」

老人「もし、所有者が探しに来たら、物を代償にやれば良いと言ってな・・・。」

ソナカ「そ・・・そんな・・・。あんまりハセヨ・・・(´;ω;`)ウッ…。」

老人「旅の御方。もし、牛の代償として、何が欲しいかと問われたら、宝物などではなく、郡内で祀(まつ)っている神が欲しいと言いなさい。分かったニカ?」

ソナカ「わ・・・分かったニダ。そうするハセヨ。」

郡公「・・・ということで、紙面の都合で、出て来てやったニダ。感謝するハセヨ!」

ソナカ「では、牛の代償として、神様をもらうニダ。」

郡公「良かろう。ウリたちの郡家の神様は、この白い石ニダ。持って帰れば良いニダ。」

こうして「ソナカ」は、白い石を持ち帰り、寝室に置くと、石は、美しい乙女となった。

ソナカ「か・・・可愛いニダ! さっそく、交(まじ)わることにするハセヨ!」

そんなとき「ソナカ」の妻の声が響いた。

ソナカの妻「あんた! ちょっと、用事が有るから、出かけて欲しいハセヨ!」

ソナカ「はぁぁぁ? 今、良いところニダ。どうして邪魔するニカ?!」

ソナカの妻「仕方ないでしょ! あんたが交わる前に、なぜか出かけたと書かれてるんだから・・・。いわゆる、辻褄(つじつま)合わせニダ。とにかく、行ってきなさい!」

仕方なく「ソナカ」は「日本書紀(にほんしょき)」の記述に従って出かけると、さっさと用事を済ませ、館に戻った。

ところが・・・。

ソナカ「乙女がいないハセヨ。おい! 妻よ! 乙女は、何処(どこ)に行ったニカ?」

ソナカの妻「東の方に向かっていったハセヨ。倭(わ)ってところね。」

意富加羅国の王子は、こうして、海を渡ったのであった。 

つづく

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