【伊勢遷宮編】エピソード27　宴のあと

第十一代天皇、垂仁すいにん天皇てんのうの御世みよ。

紀元前4年、皇紀こうき657年（垂仁天皇26）。

天照大神あまてらすおおみかみの御杖代みつえしろ、倭姫やまとひめ（以下、ワッコ）一行と、忌部和謌富奴いんべ・の・わかとみぬたちは、伊勢いせ神宮じんぐうの建造を開始した。

物部八十友諸もののべの・やそとものおと呼ばれる職人たちが作業をする中、遷座せんざに向け、着々と準備が進められる。

そんなある日、一行は宴楽とよのあかり、すなわち、宴うたげを催もよおした。

夜通しの宴がおこなわれたのである。

そして、翌日の朝、皆みなが酔よいつぶれ、眠りこける中・・・。　

カーケ「ワッコ！　おい！　ワッコ！」　

ワッコ「う～ん。も・・・もう食べれませぬ。」　

カーケ「何なにを寝ね惚ぼけているのかね？」　

ワッコ「えっ？　あれ？　如何いかがなされました？　大おお伯父上おじうえ？」　

カーケ「此度こたびの夢のこと、大王おおきみにも伝えておいた方が良いのではないかね？」　

ワッコ「そ・・・そうなりまするか？」　

カーケ「きっと喜ばれるはずなんだぜ。」　

ワッコ「そ・・・そうですね。では『オーカ』様と『ワクワクさん』に、言こと挙あげしていただきましょう。」　

カーケ「おい！　オーカ！」　

オーカ「飲めぬと言うておりますのに、なにゆえ、そのようなこと・・・。」　

ワッコ「寝ね惚ぼけておられますな・・・(;^_^A」　

カーケ「おい！　ワクワクさん！」　

ワクワク「もう、お腹なかいっぱいなんだよぉ。」　

ワッコ「こっちもか・・・(;^_^A」　

カーケ「二人とも、よく聞くんだぜ。国中くんなか（奈良盆地）に戻り、夢のことを言こと挙あげするんだぜ。」　

オーカ・ワクワク「かしこ、かしこまりまして、かしこ！」×２　

こうして、二人は旅立っていった。

それと入れ替わるようにして、大田命おおた・のみことがやって来た。　

大田おおた「皇女ひめみこ様、御尊顔ごそんがんを拝はいし奉たてまつり、すごく嬉うれしいです。」　

ワッコ「汝いましは、いつも、宴うたげのあとに来くるのう？」　

大田おおた「作者の陰謀ってヤツですね。しかし、みなさん、いい寝顔ねがおですね。」　

カーケ「ところで、何なにしに来きたのかね？」　

大田おおた「あっ！　そうでした。お二人とも、エピソード563を覚えておいでですか？」　

ワッコ「汝いましが初登場した回ではないか？」　

大田おおた「その通りです。あのとき、詳くわしい解説が出来なかったんですよ。」　

カーケ「ん？　解説をしていたはずなんだぜ。猿田彦大神さるたひこ・のおおかみの末裔まつえいで、子孫は、宇治土公うじのつち・の・きみと語かたっていたんだぜ。」　

大田おおた「その通りです。」　

ワッコ「では、あらかた語かたり尽つくしておるではないか？　詳つまびらかな解説とは、如何いかなることじゃ？」　

大田おおた「あのとき、子孫は、代々、猿田彦さるたひこ神社じんじゃの宮司ぐうじをやる予定だと語りましたよね？」　

カーケ「よく覚えているんだぜ。」　

大田おおた「その社やしろが、何処どこに有るのか・・・それについては、何なにも語っていないんですよ。」　

ワッコ「なにゆえ、あのときに語らなかったのじゃ？」　

カーケ「ワッコの言う通りなんだぜ。」　

大田おおた「紙面しめんの都合つごうと申もうしますか、聖地せいちに向かうことを優先したので・・・。」　

ワッコ「そうであったか・・・。大田おおたなりの忠義ちゅうぎの現あらわれであったと申すのじゃな？」　

大田おおた「そ・・・そう言われると、なんか照てれちゃいますね。」　

カーケ「して、猿田彦さるたひこ神社じんじゃは、何処いずこに鎮座ちんざしているのかね？」　

大田おおた「三重県みえけん伊勢市いせしの宇治うじ浦田うらたに鎮座ちんざしています。伊勢いせ神宮じんぐうに御参拝ごさんぱいの折おりは、当社とうしゃにも、お参まいりしていただけると嬉うれしいです。」　

ワッコ「しっかり宣伝せんでんするのじゃな・・・(;^_^A」　

大田おおた「ところで、今回の宴うたげで、けっこうな食べ物が消費されてるみたいなんですけど・・・。」　

カーケ「夜通しだったので、仕方ないんだぜ。」　

大田おおた「『倭姫命世記やまとひめのみこと・せいき』には、何なにも書かれてませんけど、どう考えても、みなさんの食事の用意をしているのは、私なんですよ？　嗚呼！　これで、計算が狂くるってしまった・・・(´；ω；`)ｳｯ…」　

ワッコ「す・・・すまぬ・・・(;^_^A」　

なにはともあれ、解説に成功したのであった。　

つづく