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ボーディ・ガーボル『アメリカン・ポストカード』南北戦争に測量士として参加したハンガリー人兵士の物語

1970年代、徐々にニューウェーブが下火になっていく中で、ハンガリー人監督たちはドキュメンタリー映画に活路を見出し、こぞってそちらを研鑽し始めたわけだが、そんな中で特異な立ち位置にあったのがボーディ・ガーボルである。彼を中心としたバラージュ・ベーラ・スタジオの一派は"ドキュメンタリー映画と実験映画のみが物語映画を一新できる"として、映画に実験的な手法を取り入れることで物語の境界を無くそうとしたのだ。本作品はそんなボーディの記念すべき長編一作目である。アンブローズ・ビアスの小説『ジョージ・サーストン=ある男の生涯の三つの事件』、カール・マルクスの記事、ウォルト・ウィトマン、チョーリ・シャーンドルの詩などを基に、1848年のハンガリー革命に参加したハンガリー人退役軍人たちがアメリカ南北戦争に参加した際の物語を構築している。主人公は南軍に測量士として参加した男であり、円形の視界に十字線というスコープを覗き込んだような映像がふんだんに使われている。途中からはスコープ(真ん中の十字線ごと円を移動)映像が面倒になったのか、普通の映像に十字線を動かすのも加わる。また、1800年代後半の傷んだサイレント映画のように見せるため、光量が安定していないかのような加工を施したらしい。だが、全然加工してない部分と加工しすぎな部分があからさますぎるし、見事にスベってるとしか思えない。終盤になってようやく、謎の楽隊が画面に出たり入ったり、画面が撃たれた地図みたいなエフェクトかかったり、巨大ブランコに乗ったり、映像そのものもエフェクトも興味深く変化していくが、全体的には一本調子で退屈。というか、実験と称してエフェクト付けただけで90分乗り切ろうってのは無理があるでしょ。ラストは笑っちゃったけども。

・作品データ

原題:Amerikai anzix
上映時間:95分
監督:Bódy Gábor
製作:1975年(ハンガリー)

・評価:60点

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