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奥谷洸平
2024年3月28日 00:50
言いたいことなど何もなかった伝えたいことなど何もなかったただうちに沸々と湧いてくるその何かをひとりごととして吐き出して吐き出し続けたら途端不安になってもはや掬い上げるものがなくなったでも掻き出しているうちに胃は薄くなって破れていた果たして痛みに耐えたのか、動転して気づかなかったのかさえ定かではないそこから溢れて溜まった血液をまた大事に集めて平気なふりをして文字を書いた
2024年3月13日 10:47
その倉庫にはいくせんもの材料たちがぐるぐるまわるいつかまた持ち出される時までは絡み合い、共鳴しながらその均衡を保っているいくつか形を作られたものも別段本質は変わっておらずその元素のままなのであるが偶発的に生まれた意思が時に行く道を誤らせるしかしその道もまた生きて帰りし道でありどんなに逃げたつもりでも私たちの体は釈迦の手の上そっと掴まれてまた元の軌道に乗せられる行くあ
2023年11月20日 18:20
くやしさがまた体を巡る時それは張り巡らされた赤い環状線の渋滞の隙間を潜り抜けて爪の裏側に行き着くまた同時に頭にも到達したことに気づくより早く口へとはこばれる"かゆみ"それを解消するために噛み締めた歯がぷつっと皮膚に小さい穴を開けてどっと流れ出る赤い血は精製されたばかりの金属の味溶けるほどの熱を持っているかと思えば冬の日のドアノブのようにひんやりもしてとらえどころがな
2023年6月8日 03:56
追い詰められて、逃げ場がなくなったその刹那隅に見つかる小さな穴から形を変えて抜け出すダクトに吸い込まれる紫炎あるいは渦になって流れ出る無形の川の水のように自身の形を崩し、全てを放棄してようやく逃げ出すことの出来たその先に歩むべき新たな路地があるその路地はまた異国の物品やその人生を想像できない人々で埋め尽くされ一角を抜ける頃には価値観が揺り動かされ一寸世界を知った気になっている
2022年9月14日 19:51
一歩進んだら落ちてしまったほんの一瞬のことでこれまでのことも全て失うような感覚と共にどういう風にものを考えていたのかすっかり分からなくなる同じところをぐるぐる回り生産性から切り離された心と身体で何も守るものはないと分かっていてもそれでも底抜けに深いそして暗く光がない闇に沈んでいく夢を見て恐怖と混乱と絶望のために汗だくで目醒めて助けを求めて縋ろうと思っても隣には
2022年7月5日 18:08
何かに優れた人間では無い世の中に何が出来る訳でも人に何かを出来る人間ではない己の理由などあるわけもないここで綺麗さっぱり消えてしまうことが出来ればそれが全てを解決するのだが世の中の構造がそれを邪魔し愚者が愚者の手と足を絡み合わせてこの地獄に縛り付けているしかし世界に期待などなくましてや恨むことなどなくただこの息の出来ないほどの重圧の中で消えてしまう方が楽だと思うその気持
2022年7月2日 23:44
歓声満つ話し声がかき消される中で確かに伝わりまた確かめ合うこのつながりにかつてしがみついていたものが今は少し離れ、宙に浮きこの酔いが覚める頃にはこの時を懐かしむより先に日常の繁忙に飲み込まれていくのであるがそれでも飲み、また飲み込まれ夜の渦に足を踏み入れまだ長い、夜明けまでの電灯がわりにまた新たな杯を空けてゆく
2022年6月17日 18:22
梅雨の狭間に季節外れの肌寒さしかし木々や花々は後戻りができずちぐはぐな印象を与えながらも時間によって変化したその体を震えながら晒す形だけをただ形だけをくださいそれでほとんどの場合問題なく自分を保ち、人を騙して心はそこになくても私は私で成立するのだからどうせ皆中身など見ていないあるいはわかりやすく与えられたその一部それを己の、あるいは他者の全てと錯覚し二次元世界の窮屈
2022年6月13日 14:33
何者になりたかったわけでもないかつて希望は求めずともあっただが知らぬ間に血眼になって、這いつくばって探さねばならぬものになったそうして荒野の中で、砂金の一粒を探し求めるような心境で、生きる糧を探すのだこの先で落ちることがわかっている吊り橋の上を生きた心地もせずに歩かねばならぬそうするともう死んでいるのも生きているのもわからぬ終わりが見えている道を永遠などないものを必死
2022年6月12日 17:28
からからからからからからからからか扇風機がまわるからからからからかただその空気が滞ることだけが唯一の空間の証明となるような部屋がもつ温度を混ぜ返し窓から入った木の葉が舞い上がるいやそれはただの埃であるいはその風を認識出来るのだと誇示したい己の虚栄心から生まれた幻覚で吹かれていることに気がつかずにある時はおもてに足を踏み出してあぁ、やはり外の空気は美味いなとこの
2022年6月7日 23:04
そう、そうしていればいいのだ考えなくてもいい必要とされることさえしていればそこそこの見返りは与えてやる押し付けられた罪悪感と何ものにもなれない無力感と今見えるのは、現実味のない虚構につくられた夢か底なしの絶望か僕に連なってきたこの血が決して高貴であったことはないこの血がそれでもそれを拒むのだ幼い頃、林の中で会話をした精霊たちが今僕に「進め」と何度も語りかける土
2022年6月7日 00:33
明滅する光ただ真っ直ぐに遠くから地球の表層をなぞって入り込む隙間をみつけだし拡散して降り注ぐ色とりどりのその光は時にばらけてはまた混ざり溶けて透き通ったかと思えば自らの熱で少しずつまた焦げてゆく僕を呼ぶ声がするそれずっと遠くからあったようだけれども多くまぶしすぎる光がそれを追い越して僕の視力を奪ってしまったものだからそれに気を取られて大騒ぎしていてその声に気づかなか
2022年2月27日 15:24
昼下がりに詩を書くなんてねいったいどうしちゃったの?あんなに嫌っていた時間帯なのにわからないけど、あまり変なルールを増やさないようにしないとって思ってそうしてる間に気づけば息もできなくなってるからさ制限の中にこそ芸術が、なんて偉そうに言ってたのにねそういうところ可愛いと思うよすぐに意見を変えるということもまた僕のモットーにしてるからさレースのカーテンを通っていくぶ
2022年2月24日 23:51
別にポーズで構わないでしょと君はいうそんなことは分かってるけどと僕は不満げに答える誰よりもまるで自分のことを分かっていないのにこの世の事は自分だけが知っているかのように人が右と言えば左、黒と言えば白、ほつれたサビキ釣りの糸のような精神でああだこうだと偉そうに語ってきたやわらかくて弱々しい心は強い外殻をもとめる言論と思想と、少しばかり人より斜めからものを見られる唯一の特技でも