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富士山と都心のレストラン

 「お日さまと 青空、気持ちいいなぁ」
二人のこざる達が、青空の下をテクテク歩いています。
近所に買い物へ出かけた帰り道です。

 冬は空気が澄んでいて、空の青い色もくっきり、
透明度が高い感じです。
こざるちゃんは、遠くまで見渡せる 家までの一本道を歩きながら、
昔のことを思い出していました。

「昔、今ぐらいの時期に、みんなで東京のレストランに行ったよね。」
「うん、富士山がよく見えて、それで行ったんだよね。」

 そうです。数年前、こざる達は用事があって 東京駅まで出かけました。
たくさんの人で混んでいるランチタイムが終わった昼下がり、
こざる達は、ドキドキしながら 東京駅の真ん前にある
きれいな高層ビルに入って、お昼を食べたのです。

 高い階にあった そのレストランの窓から、
遠くにきれいな富士山が見えました。
こざる達は、早く帰らなくちゃと思いながら、ずーっと見ていました。

「りこちゃんにも見せてあげたいね。」
「うん。お食事も、とっても美味しかったよね。」
こざる達は、ずっと富士山が見える 都心のレストランの話をしながら、
帰りました。

 その時、りこちゃんは、おばあさんでしたが、
それでも今よりも少し若かったので、まだ都心まで外出することも、
負担に思わずにできました。
こざる達は、ラッシュアワーにぶつからないように計画を立てて、
数日後に、りこちゃんを連れて、みんなで また出かけたのです。

 それはとてもとても楽しくて嬉しくて素晴らしい時間でした。
みんなで、美味しいねーとお昼ごはんを食べて、
食後にデザートとコーヒーを頼んで、窓から 富士山を 眺めました。

 平日のランチタイムが終わっている時間でしたが、
レストランの人たちは、みんなニコニコして、
とてもやさしくて、ゆっくりしていってくださいと言ってくれました。

 りこちゃんも嬉しそうに、ずーっと富士山を眺めていました。
こざる達は、富士山と りこちゃんを眺めていました。

 帰り道も、帰ってからも、りこちゃんは何度も何度も
「とってもよかったねー、どうもありがとう。」と言っていました。

「また行こうねって言ったのに、結局、あの時から行ってないね。」
「そうだね、りこちゃんのお友達も連れて、
みんなで行こうって言ってたのにね。」

 そうなのです。
また行けばいい、いつか、そのうち。
本当にそう思っていても、どんどん季節が過ぎていって、
その機会を逃してしまうことは 珍しくありません。
思い立ったが吉日なのです。

 こざる達は、今、りこちゃんを連れて行くのは、
りこちゃん自身の負担が大きいということが わかっています。
「でもね、あの時、すぐに皆で行って、本当によかったね。」

喋っているうちに、こざるカフェに帰って来ました。

「ただいまー。」
ラジオから バイオリンが奏でる懐かしいメロディが聴こえてきます。
葉加瀬太郎の MY HOMETOWNです。
こざる達は にっこりします。
「あとで、あの日の写真を みんなで見ようよ。」
「うん。りこちゃん、喜ぶよ。」

読んで下さって、どうもありがとうございます。
今の時期は遠くまで見渡せて、
意外なところからも富士山が見えるようです。
よい毎日でありますように (^_^)


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